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二人きりの特訓

「おーい!ライネス!!待てってばー!!」


 不機嫌なライネスを、後ろからルルルンが速足で追いかける。

 

 すぐにライネスに追いつくと、ルルルンはまるで浮気の言い訳をするかの如く状況説明をはじめる。


「シアのあれは、天然っていうか、悪気ないっていうか、いつもあんな感じだから」

「そんな事は知っている」

「だったらなんで怒ってるの?」

「お前も手を回して抱きしめていただろ?」

「あれは、癒しというかなんというか」

「下心ではないか!」

「違うってば、ぜんぜんそんなんじゃないって!」


 ライネスは自分がなんで怒っているのか、自分でもわかっていないので、ただモヤモヤしているだけで、スッキリすることはなかった。


「……別に怒っているわけではない!」


 明らかに不機嫌にライネスはそう言うと、歩く速度を速める。


「ライネスが怒る理由がわかんないんだけど……」

「ただ、なんだか、楽しそうに抱き合っているのを見たら、なぜか分からないが殺気が勝手に出て」

「殺気って勝手に出るものなの?」

「分からないと言っているだろ!!」


 あぁもう!と、ライネスは頭を少しグシャグシャして、そっぽを向く。


「よい、そんなことはどうでも!」

「どうでもいいなら、機嫌直して」

「直っているが?」

「めっちゃ直ってない言い方だよね」


 などと問答を繰り返しながら、二人は街はずれの高原に到着した。


「それで?ケイスケが男だと知っている者は、どれだけいるのだ?」

「なにそれ」

「食堂の店長や、その、シアは……お前の正体を知っているのか?」

「そんなの、言うわけないじゃん、魔法が使えるなんてバレたら働けないだろ?」

「カインは?」

「言わないよ、絶対めんどくさいし」


 あっけらかんとした態度でルルルンが言う。


「そうなのか?」

「言う必要がないし、言ってもメリット無いし、ルルルンとして存在する方がこの世界で起業するには都合がいいから」

「じゃあ、私だけか?」

「知ってるのは、ライネスだけだよ」

「そうか、私だけか……」

「まあ、言っても魔法を見せないと信じてもらえないだろうし、それに」

「なぜ信じてもらえない!」


 食い気味でライネスが話を遮る


「え?ライネスだって最初信じなかったでしょ?」

「それはそうだが、今は違うぞ!」

「ありがと、それに……この世界に、この姿で生まれ変わった事の意味をさ、考えるんだよ、魔法との付き合い方とか。今は正直魔女とかよりも、会社を作るの方が自分には重要だし、この世界で誰かのためになる仕事をしたいんだ、どんな小さな事でも、それがその人の幸せにつながるような、そう言う事ができる会社を」

「そうか」


 ほんの少し寂しそうにライネスは目線を下にそらした。


「本当は魔女の事、ライネスの手伝いをしたいなぁとも、思うんだよ」

「そうなのか?」

「うん、でもまあ、ライネス強いし大丈夫かなって」

「過大評価だな」

「逆に言うけど、それは過小評価だよ」


 ライネスの強さついてはルルルンは自信をもって断言できる、おそらくこの世界で彼女以上の剣士はいない。


「だから魔女の事はライネスが頑張る、俺は普通に暮らして会社を作る、そんな感じでいきたいと思ってます」


 ライネスの強さを知った上でのやり取り、正直彼女の強さがあれば魔女と呼ばれる存在なんか問題なく倒せるんじゃないか?とルルルンは本気で思っていた。

 しかしそれ以上に思う事【自分は異世界の人間だという事実】


「この世界の異物である自分が、この世界の戦いに首を突っ込むのは違うと思うんだ、この世界の事はこの世界の住人で解決すればいい、無責任かもしれないけど、干渉することが正しいとは思えないんだ」

「私は構わないんだが、お前の力はそんな悠長な事を言っていられる物でもない、この世界を根底から覆す力だ、干渉する事は避けられないだろう」

「そうかなぁ……無理かなぁ……」


 ライネスは真面目な表情でルルルンの理想論を否定する。否定した上でライネスは言葉を続ける。


「だが、私は、ケイスケの夢を応援したいと思う」

「ライネス」

「お前に頼らずとも、魔女は私たちが必ず倒す、そうする事が、お前の夢を応援する事に繋がるのだろ?」


 たとえ過ぎた力だとしても、本人がそれを望まないなら、使わなくていい状況にすればいい。単純な話だ、ルルルンの出る幕がないよう、ライネスが魔女を討伐すればいいのだから。


「……」

「どうかしたか?」


 ライネスの頼りになる言葉を聞いて、ルルルンは少し悩んだ様子を見せる。


「いやぁね、それはそうなんだけど、もし、もしもだよ、ライネスが魔女にひどい目にあわされりしたら、多分俺、関わっちゃうだろうなぁって」

「さっきと言っている事が違うではないか」

「だってそんな事になったら、絶対普通でいられないだろうし」


 想像する、ライネスが魔女に傷つけられ、どうしようもない状況になったとしたら、そうなったらおそらく、ルルルンは怒りのあまり確実に魔女になにかしら制裁を加えに動いてしまうだろうと、ルルルンにとってライネスはそう感じるほどに大事な存在なのだ。普通ではいられないと聞いたライネスは少し嬉しそうな表情を浮かべる。


「お前をムカつかせたら2日で世界が滅ぶんだろ?」

「それはどうかな、滅ぶか?うーん滅ぶかも」

「あっははは、冗談だ、私は負けない、約束しよう」

「そうだ!ライネスが負けないための、ライネス最強計画だからな」


 この世界ですでに最強レベルのライネスの更なるレベルアップ、高原に来た目的は、ライネスに継承した魔法の訓練をするため。

 人目につかないよう、広い場所での訓練が必要だからだ。


「よろしく頼む」


 ライネスが頭を下げ、特訓が始まる。


「よし、じゃあ、まず刻印を」

「刻印」

「頭の中で、刻印を手の甲に浮かべるんだ」

「浮かべる」


 ライネスが、刻印をイメージすると手の甲にライネスの魔法刻印が浮かびあがる。 


「いいかい?ライネスに継承した魔法は絶界の魔法『ラザリオン』」

「ラザリオ…」

「あああああ!!」


 ルルルンが慌ててライネスの口を塞ぐ。


「もががが(何をする)」

「ライネスはまだ魔法の発動を制御できない、だから口にした瞬間、魔法が発動する」

「もがが(そうなのか?)」

「だから、まだちょっと待って、説明させて」


 そう言われてライネスはコクコクと素直に頷く。

 ヨコイケイスケ式魔法の発動条件は簡単に言うと「発動すると意志を持って、魔法名を唱える」それだけである。

 発動する意志の部分を理解していないライネスは、おそらく魔法名を呟いただけで魔法が発動する。発動すれば、ライネスではおそらくまだ制御できない、ルルルンの制御補助が必要なのだ。


「最初は俺が補助する、慣れてきたら、補助なしで制御できるようになる、それまでは絶対に自分の意志で使わない事!いい?」

「わかった!」

「じゃあ、魔法の特訓を始めよう!」

数ある作品の中から、この作品を選び読んでいただきありがとうございます。


面白い!続きが読んでみたいと思っていただけたなら幸せでございます。




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