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王子様? お姫様?



遅くなりました〜!

飲み会でした……(こんな時に)




一定の距離を取りながら、河原町駅まで戻る。

早姫姉は、また鬼教師のお面を貼り付けていた。俺を従えて歩く様は、まさに説教中という様子だったのだろう。

途中、何人か同級生とすれ違ったが、誰もが俺に哀れみの目を送った。

『よりにもよって雪女とかよ』、と。なんならほぼ話したこともないのに、肩を叩いて深く同情してくれた奴もいたくらいだ。

早姫姉の態度は、電車に乗っても変わらなかった。ずっと、話しかけるのも憚られるくらい顔を顰めている。

ようやくその額に寄ったしわが解けたのは、阪急電車から地下鉄へ乗り継いで、計十分ほど。京都駅に着いた時だった。


「ここまできたら誰もこないよ♪」


一変して、早姫姉は、るんと語尾を踊らせる。

クラスメイトが見たら、人が変わったと思うくらい、恐ろしい豹変ぶりだろう。

それといえば、京都の街もだった。


「……こんなにビル立ってるんだな」


改札を抜け、地上へ出て見れば、広がるのは都会の風景だ。

高層ビルこそないとはいえ、オフィスビルが立ち並んでいる。河原町の歴史ある観光地といった雰囲気とは、一線を画していた。


「まぁね。でもここも、少し歩けば、お寺と神社が増えるよ」

「そうなんだ」


早姫姉は下調べをしていたのか、清水寺やら本願寺やら聞いたことのある名前を挙げる。

英語の先生になぜか歴史の講義を受けながら、俺たちがまず入ったのは駅近くにある大型モールだ。

地元のものとは比にならないほど、大きな規模をしている。


「いい? 今日は大学生のカップルって設定でいくよ」

「……わかってるよ。新歓で仲良くなって、うっかり結ばれた歳の差カップルな。就活中で四回生の彼女と、ちょっと童顔な一回生の男……だろ?」

「よくできました! 今日の格好なら、大学生に見えるよ」

「そりゃどうも」


俺は内心、茜に感謝を捧げる。今度また学食をご馳走しようと決めた。ジャケットなぞ、自分のセンスだけではまず買わなかっただろう。


「それで、私の呼び方はどうするんだっけ?」

「えっと、……早姫でいいんだよな」

「うん、そう。完璧! こうは、偉いね」


くん、が付かないだけで、男として意識してもらえた気がして、俺の心臓はどきっと鳴る。

昨夜、大学生カップルの設定について話を聞かされた時は、茶番だと思ったが、いざ演じてみれば鼻で笑える話ではない。

本当のデートのようで、緊張してしまっていた。

俺が手汗を新品のズボンに擦り付けていると、


「じゃあ、はい」


早姫姉がこちらへ手を伸ばす。

条件反射的に握手をして、数回縦に軽く振った。……え、なにこれ? 首脳会談?


「ち、違うよっ。おね……私が求めてるのは、……その、手を繋ぎたいなぁって」


早姫姉は、もじもじと腰を揺らす。


「だって彼女だもん。設定だけど、彼女だもん。手くらい預けてもいいかなぁ〜と…………」


最後、声が裏返った。

顔を見てみれば、血がのぼって額まで真っ赤だ。今に髪まで赤くなりそうだ。


「あー…………なるほど、な。じゃあその、これでいいか」


俺は差し出された手をそっと壊れ物に触るように、優しく握る。それから、二人の間にゆっくりと落とした。

行こうか、と冷静ぶって歩き出す。柔らかい、とか小さいとか、ぬくい、とか、頭を埋め尽くさんとする感情は一旦近くのゴミ箱に捨てることにする。

だが、捨てても捨てても息をするたび生まれてくる。二酸化炭素かよ。


「ちょ、早い。こうってば。彼女のペースに合わせなさい」

「……あ、ごめん」

「あと、顔真っ赤。まるで、ゆでだこさん♪」

「早姫姉が言うなっつの」

「……だめでしょ、早姫だよ」


早姫姉は、めっと呟いて、握った手に力を込める。


「全然痛くない」

「可愛くないなぁ。そんな、こうには罰ゲームだ!」


お次は、腕を抱きしめるように絡みついてきた。右腕がぐいっと引っ張られて、少しよろめく。

二の腕に、はっきり胸の感触があった。これのどこが罰ゲームなんだろうか。


「えっへへ、もう最高の気分だ! こうは?」

「う、うん、そうだな、あー俺もだ、うん。とりあえず買い物しよっか。服見繕うって話だったよな」

「うんっ! お願いね。頼りにしてる」


むしろご褒美でしかないな、と思った。


服選びは、滞りなく進んだ。

それなりに情報は揃えてきていたのだ。茜のアドバイス通り、色味を意識していれば、大きくは迷わなかった。

それになにより、素材つまりは着る人が一級品なのが大きかった。


「どうかな! 白のワンピースなんて初めてなんだけど…………」


まず定番、白のオールインワンピース。あまりの清楚感に脳天を撃ち抜かれて、俺は絶句する。


「ち、ちょっと派手かな?」


かと思えば、フリル多めの小悪魔コーデもよく似合った。俺はろくな感想も言わずに、親指をぐっと立てる。


ほとんど似合わない服がなかった。どんな趣向にしてみても抜群の出来だ。

となれば、いっそ買うものを選ぶのが迷わしいはずなのだが、無趣味・実家暮らしの社会人は財力が違った。


「これ、全部ください。あと、宅配便速達でお願いします」


いわゆる大人買い。

いやいや、そう聞いて思い浮かぶ範囲を、はるかに凌駕する大盤振る舞いだった。俺が少しでも「いいな」と言えば、値札も見ずにカゴに入れる。


「きっとこんな時のために貯めてたんだよ、私」


早姫姉が揚々として言うに、使うところがなかったから、貯金は学生時代から含め、三桁万円を大きく超えているのだとか。

喜ばしいんだか、虚しいんだか。


そんなセレブリティな買い物をし終えたのは、ちょうど正午頃だった。

家にはマヨコーンしかなく、朝は抜いてきていた。腹の空き具合はちょうどよかったのだが、店の混雑ぶりは全く都合がよくない。

平日だというのに、ランチタイムを謳う店には、人が溢れかえっていた。そのメイン層は、主に外国人だ。大きな身体というだけにとどまらず、あまつさえ大きなキャリーバックをいくつも引いていて、道を通るのも厄介だ。

だが、早姫姉は俺の手を引いて、ずんずんその高い人壁を割っていく。


「予約したもの勝ちってこと!」


長蛇の列ができていた蕎麦屋に、ノータイムで入ることができた。

うっかり俺の中の乙女が騒いでしまった。

やだ、なにそれ格好いい。

もはやお姫様というより王子様に見える。


「あっ先生たちにカモフラージュのラインしとかないと……」

「大丈夫? 不審がられてないの」

「うん。普段の私見てたら誰も私がズルするなんて思わないでしょ」

「たしかにそうだけど」


ずる賢い王子様だこと。


「そういえば俺が親戚だって、先生たちは知ってるの」

「知らないよ。苗字が違うから、疑われなかったのかな。これからも二人だけの秘密ねっ」

「フラグっぽいこと言うなよ」

「大丈夫。普通にしてたらバレないよ♡」


……やっぱりお姫様かもしれない。今度は、やたら可愛い。関西弁で言うなら、めっちゃ萌える。

格好いいし、可愛いし、よく分からなくなる。

いずれにしても言えるのは、たいそう魅力的だということだ。こんなデートをすれば、男の大半は一回で落ちるだろう。

ただ問題は、俺以外の人を相手にした時だ。今と同じように振る舞えるのなら苦労していない。

少し想像をしてみた。早姫姉が誰か素敵な男とデートをしている姿を、だ。


……まるで絵が浮かばなかった。


全く成り立つ気がしない。

それは、もしかしたら俺がそんな未来を避けたいからなのだろうか。

頭の中でごちゃごちゃと考えていたら、蕎麦が届いた。俺の頭と同じように、麺が絡まりあっている。


「美味しそうだね♪ ね、こう。写真撮っていいかな。食べてるところでいいよ」

「好きにしたら」


整理をするように、俺は麺を丁寧にすくった。






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