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私の妄想を叶える日までの日記  作者: 新鮮いちご
1/1

001

「お…おは…」


無理、やっぱ無理。挨拶だけなのに、『おはよう』だけなのに、言えない。

妄想では、完璧なのに…


︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵︵


「おはよう!」


「おはよ!シヅ、今日も元気だねっ」


「うんっ!そういえばさ、昨日の…」


︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶︶


「はぁ…」


「どうしたの?」


「はひっ?!わひゃひ…にゃに…んんん」


私は横に首を振る。どうして言えないのかな?せっかく話しかけてくれたのに…。


「あ、ユキー。あのさー」


「ん?ぁ、ごめんね!じゃ」


あぁ、行っちゃった。岡山さん…そう、さっき話しかけてくれた子…ユキと呼ばれていた少女は、岡山優希…うちのクラス、2-Aの学級委員(前期:女子)なんだ。

派手なグループ…いわゆる、ギャルみたいな子がいっぱい居るグループにも、私みたいな孤独で地味な子にも話しかけてて、憧れる。


(私もあんなふうになれたらいいのに…)


〔キーン コーン カーン コーン ・・・〕


「あれ、1時間目って…理科?どうしよう、教科書…」


今綱(いまづな)さん、教科書忘れたの?貸してあげよっか?」


今綱…それは、私、紫月(しづき)の苗字だ。


「ぃえ…だぃ…じょ…ぅ…」


やっぱり無理だ。

私に訪れた2度目のチャンス。

また、逃してしまった…。




〔ポトッ〕


『放課後、校舎裏に来てください』


大人っぽい字で書かれた、短い文章。

左斜め後ろから飛んできた。


(誰かは分からないけど、これは、もしや、ラブレターという奴なのでは…?)


(怖いけど、これを機会に、手紙をくれた人と仲良くなれるかも。行ってみよう!)





そして待ちに待った放課後。

いつもよりこの時間が待ち遠しくて。

なんだか、時の流れが遅いように感じた。


〔タタタッ〕


(あっ、来たかな…?って、あれ?あれ、野本さんじゃ…?)


野本さんは、クラスでいちばん明るい、ギャルの女の子。

スカートもパンツが見えそうなぐらいギリギリまで短くしてあって、髪も金髪、パーマをかけてある。

校則違反だけど、無視してやっているらしい。


「あんたさぁ」


「いっつもいっつもちっさい声で話しててムカつくんだよねぇ」


「あ、期待してた?告白かなって?ごめんごめん。てか、あんたの事好きになる奴居ないっしょ。地味で陰キャなのにね。顔は整ってんのにもったいなーい」


「その勿体ない顔、アンタには合わないから、汚してあげる!」


そこから私の、地獄の学園生活…ううん。

地獄だった学園生活が、大地獄になった。




最初のうちはマシで、殴られたり、カッターで顔を切られたりするだけだった。

それでも、何もされない人からしたら、「酷い」のかもしれない。

けど私にはもう、何が酷くて、何が酷くないのか。

そんなもの、とっくに分からなくなっていた。

しばらくしたら、泥水をかけられるようになったり。

ビックリ箱方式で、中に汚いものを詰め込んで、飛び出る様にしていたり。

苦痛で苦痛で仕方なくて。

でも両親は…お母さんは、女優で、お父さんは、映画監督。

普段から忙しいふたりに、これ以上迷惑かけられなくて。

相談することさえ出来なかった。

ううん、間違えた。

相談できても、しなかった。

そしたら、殺されてしまうもの…。



いつか、いつか、これが収まりますように…。

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