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プロローグ


白い部屋。黒いドア。続く道は黒と白のグラデーション。先に進めば進むほど視界は光で眩んでいく。終着点。何もない。何もない。振り返る。何もない。道はない。前に虎はいないし、後ろに狼もいないが門もない。混ざる。痛みは無く、血もない。白く、溶けて、光って、混ざって、混ざって、混ざって、混ざって、止まる。中途半端。多量の塩は水に混ざりきらない。

意識もまた混ざりきらない。引き延ばされた意識は瞬を悠久に捉える。二度世界を溶かして、混ぜた。沈殿物は上に。上澄みは下に。混ぜて、かためて、もとどおり。供物は電気。悠久の意識を電気として世界をかき回す。供物で溶かして、供物で混ぜて、供物で焼く。ほら、もとどおり。

供物は聞く。悠久の中で。


世界から忘れられた供物は、静かな詩に意識を馳せない。騒々しい無音に反抗する。


帰る場所がある。供物は考える。


しなければならないことがある。供物は話す。


守りたいものがある。供物が動く。


浮上。水底から水面へ。引き延ばされた意識は圧縮される。太く、短く。


鼓動を始めた意識はこの闇一筋、光一筋も差さない部屋から脱するべく思考と行動を開始した。


手始めに手を伸ばした。穴はあいた。

指を伸ばして穴を広げる。

箸を使うより容易い行動だった。


自らが通れるほどの穴を作り出して供物は外へ抜けた。眩しい光が祝福して…化物を外に解き放った。


人々が恐れ慄く中、化物はただ自分に従って探し続けた。自分が失った何かを。


しかし、化物には許されない。


帰る場所などない。化物は思い出に拒否された。


しなければならないことなどない。化物は義務から拒否された。


守りたい人などいない。化物は時間に拒否された。


拒否。拒否。拒否。全てに拒否されて化物は怨嗟に包まれた。


世界は一人に壊された。


咆哮一つで一万人。地ならし一つで百万人。慟哭一つで一億人。嘆きの声で世界は滅びた。









ごく一部を除いて。

生き残った彼らは喪った者に咽び泣いた。

この正常じゃない世界を憎んだ。

自決。失踪。進展なきいずれ死にゆく未来。


しかし、福音がもたらされた。

御伽噺のようなありえない話が。


ちっぽけな、あるかどうかもわからない希望。

だが、彼らはその藁にすがった。


ぜんまいを巻き直すために彼らは歩み始めた。狂った世界をあの愛しくて、正常な世界へと戻すために。

この日、生き残りは自分たちに新たな名前を付け直した。

彼らは自分達を、機構士団と呼んだ。

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