地味子とのデート
今日は外での部活動だ、つまりデート。相手はキョコ。待ち合わせ時間の一五分前に待ち合わせ場所に行く。すでにキョコは待ち合わせ場所のモニュメント前に立っていた。枯れ葉色でまとめた服装は地味だが清楚で美しい。僕はあわてて全速力で駆け寄る。
「すまん、待たせちゃったな」
全速力のダッシュで息を切らしながら、僕は謝る。
「いえっ、待ち合わせ時間前ですのでっ」
息を切らすオレを見て、ちょっと驚いた様子でキョコが答える。赤い眼鏡が揺れた。
「それでも待たせたことに変わりないだろ、悪かった」
オレは息を整え言う。
「いえ、お気になさらないでください」
キョコはいつものように真摯に答える。キョコの口元はわずかに弧を描いてる。
「そうか、ありがとう。うん、このお詫びはデートで必ず返す、行くぞ」
オレはキョコの手を握り、前に立って歩き出す。当然歩幅はキョコに合わせている。
「ひゃぅ」
慌てながらもキョコは手をふりほどこうとはしない。キョコの手から熱を、汗を、緊張を感じる。オレはさらにぎゅっとキョコに手を握りしめる。
「えっと、どこに行くんですか?」
わずかに緊張で震えた声で、キョコが尋ねてくる
。
「っま、何も言わず着いてこい。ヘンなところには行かねぇから」
「え、あ、はい」
「――それとも、ヘンなところに行きたいか? かわいがってやるぜ?」
オレは声のトーンを落としそう言う。
「え、いや、あのっ、え、遠慮しておきますっ」
キョコは慌てて答える、きっと振り向けば頬を染めた姿が見えるのだろう。キョコの手は汗ばんでおり緊張が伝わってくる。
「――かわいいな」
口から一言漏れる。
「え?」
キョコは軽い疑問の声を上げた。
――とか、喋りながら目的地に到着。そこは若者向けのジュエリーショップ。
「目的地って、アクセサリーショップですか?」
「こないだ見つけたんだよ。これはキョコに似合うっ!てやつ」
そう告げると、オレは店内に入り目的のアクセサリーを取ってくる。それは透明に煌めく水晶やインカローズ、それと儚く鮮やかな赤い石のブレスレット。
店の入り口できょろきょろと周りを見渡しているキョコに、それを手渡す。
「えっと、これですか?」
「そう、ローズクォーツのブレスレット。絶対キョコに似合うって!」
キョコは手に持ったブレスレットを眺め、
「で、ですが、……私は地味ですし。こういうちゃらちゃらした物は似合わないと思います」
とオレに返してくる。眼鏡の奥に見える目は困惑で揺れている。
「いや似合うね。オレが断言する。これをつけてもっともっと美人になって欲しい」
「……いえ、でも私、アクセサリーなんてつけたこと無いですよ」
キョコはうつむき、ぼそりと言う。
「知ってるか、ローズクォーツには女性の美を招く効果があるんだぜ。オレはさらに美人になったキョコを見たいな、――って事で買ってくる」
オレがレジに向かおうとすると、キョコはオレの服の裾を引っ張り、
「待って、高いでしょ? 私のためにそんな悪いです」
とオレをじっと見つめ言う。
「値段を気にするのは、キョコの役目じゃないぜ? それに、これはオレがオレのために買うんだよ。オレはこのブレスレットをつけたかわいいキョコが見たい、だからオレが自分のためにこれを買うんだよ」
そう言い捨て、オレはレジに向かいブレスレットを買い、綺麗にラッピングされたブレスレットをキョコに手渡す。キョコはさすがにもう突き返すことは出来ないと思ったのか、素直に受け取る。
「あ、ありがとうございます」
ぺこりと軽くお辞儀する。キョコ。
「じゃ、気が向いたらそれをつけてかわいい姿をオレに見せてくれよな? かわいい君がオレのあげたブレスレットをつけてくれると、こんなかわいい子がオレの女なんだって誇らしくなれるからさ」




