もし魅了〈モエルン〉がなかったら(投稿済み)
「ねぇ、ブサメン」
僕が部室でライトノベルを読んでいると、〈メタ女王〉一夜が話しかけてきた。座っている僕をいつものように見下している。僕は無視して本を読み続ける。
「ねぇ、ブサメン」
「いや……別に僕は不細工ではないんだが」
本をめくる手を止め答える。
「ハーレム物でモテモテの主人公が普通にイケメンだと『このリア充め。爆発しろ!』と思うじゃないの」
「そうらしいな」
だが、一夜はどこでそんなことを知ったんだ?
「あなたがそう思われるとかわいそうだから、あなたはブサイクと言うことにしようと思ったのよ」
「せめてフツメンにしてくれよ……」
感情移入した読者がブサメンと言われたら傷つくだろうが。
「萌儀田君、ブサメンの癖に三つ編みにピアスなんて……かっこわるいわ」
服装の設定は変わらないのか……。
「ブサメンが何でハーレムにいるんだ?」
「あなたはそもそも普通のハーレム物と違って、実力じゃなくて『女性を魅了する〈モエルン〉』のおかげでモテているんだもの」
「確かにそうだが。もし能力がなくても――」
女性には好かれている、と言いかけた僕に割り込む一夜。
「甘いわ! 能力がない萌儀田君がモテるわけないわ! 『能力を失っても彼女との絆は本物だった』みたいな展開はないわ」
「最終回はその展開だと思っていたけど、ないのか……」
「萌儀田君は一生女性と縁のない人生を送るわ! 萌儀田君のキャッチコピーは〈一家に一つ置くだけで、見事に女性が近づかなくなる! 女性避けバリアー。〉になるわよ」
「虫除けかよ……」
「コンビニに行っても、女性店員が『この人に会いたくないからバイトやめよう』と思うくらいよ」
「僕はコンビニのレジで何をしたんだ!」
「ファストフード店に行くと店長に『申し訳ありません。あなたがいると女性客が来なくなるのです。無料にしますので。どうかお持ち帰りで!』と頼まれるのよ」
「いったい僕はどんなオーラを出しているんだ!?」
「救いはあるわ。萌儀田君はガチホモにはモテるのよ」
「モテない方がましだ!」
「しかもその件に関しては実証済みよ」
と、一夜はツモルを指さす。ツモルとはこの部活のメンバーでもなく女でもないが、俺につきまとってくるホモだ。
「たしかに……」
「まあ、そんなわけよ、ブサメン君、ホモと仲良くしなさい」
と、言い一夜は僕に背を向け立ち去ろうとする。
「まったく、僕をおとしめるために話しかけたのか……」
僕はため息を吐く。
「も、萌儀田君が楽しそうに読書しているから、邪魔したくなったのよ」
と一夜。僕は何となくライトノベルの表紙を見る。題名は『そんな世界でも、私は君を好きになる』。




