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花魁、美しさを纏う。
「朝雲、」
煩い、朝だというのに寝させてもくれない。長い自慢の黒髪が頬を滑るのを感じながら、目を開けば秋がいた。
「たまには、禿禿より早く起きておくんなんし」
秋の言葉を聞かなかったふりをして窓の外を見れば憎たらしいほどの良い天気。今日もお客がたくさん起草である。そうなれば大変なのは私だが、おまんま食うためには頑張らんといかん。
「ほれ、早速準備してくだしゃんし!」
生意気にも布団をはぎ取った童を、ぎろりと睨み付ければ重い体を持ち上げ言われたとおりに鏡台へと向かった。
鏡に映る間抜け顔をまだ見れるものにしようと、一生懸命に顔に色を付けていく。髪も秋に手伝ってもらいながら、結うとべっこうのかんざしをこれでもかというほど刺して花魁、朝雲を作り上げる。最後に唇に真っ赤な紅を刺せば、朝雲太夫の完成だ。強気な笑みを浮かべる鏡の中の自分はきっと男には妖艶な美しい化け物に見えるのだろう。