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魔王様のケモミミニューゲーム  作者: Ai
ケモミミ達の国
3/11

アマルニ王国

第3話です。

ペルーシャを感じてもらえればいいかな。

ガチャリという音ともに入ってきたのはエプロンを身につけたペルーシャだった。

「マオウさん。おかゆ。持ってきましたよー。」

「おう・・・ありがとう。ペルーシャ。」

「いえいえ。そんなお礼なんていりませんよ。」

 謙遜するペルーシャだが俺には喜んでいるのが丸わかりだ。なぜなら、彼女のしっぽがフリフリと左右に揺れ感情を表してしまっている。でも、彼女としては俺よりも立派な"できる"お姉さんでありたいみたいなのでわざわざ指摘するようなことはせず「そうか。」とぶっきらぼうに言うにとどまった。

 彼女は扉を閉めると、俺のすぐ隣にまで来て屈む。何をする気なんだ?と不思議に思い顔を横に向けるとそこにはスプーンにおかゆを載せ「あーん。」とほほえむペルーシャさんがいた。それに彼女は気づいていないが襟元からは小さくはない胸の谷間が全開で俺に見えている。なんだこれは!?ぐいぐいと視線がそっちに持って行かれる!もしや重力魔法の使い手か!?

 などと、冗談を唱えなければ平静を保っていられない俺は、視覚的かつ精神的安寧を獲得するべく首を横に振り断ろうと試みる。

「いや、ペルーシャ。気持ちはありがたいけどそれぐらい自分で食べられるよ。」

「ダメですよ。けが人は安静にしてなきゃ。」

「いや、でも・・・。」

「だーめーでーす。けが人はおとなしく看病されてください!」

よりいっそう目力を込めて「むん!」とスプーンを俺の眼前に突き出すペルーシャのその姿を見てこりゃダメだ。と悟り俺は諦めて口を開いた。

「あーん・・・モグモグ。あ、うまいな。これ。」

「ですよね?おばあちゃんのおかゆは世界一おいしいんですから!」

そう言ってペルーシャは得意げにほほえむので少し俺は意地悪を言う。

「あ、ペルーシャは料理できないんだ?」

「ち、違います!今日はたまたまおばあちゃんに任せただけで私もちゃんとお料理ぐらいできるんですからね?」

「へぇ~そうなんだぁ~。」

「もう!その顔は信じてませんね!」

「シンジテルヨ?」

「なんで片言なんですかぁ!」

こんななんでもない冗談を言合う幸せをかみしめながら俺はおいしいおかゆを完食した。

「ふぅー、食ったぁ。」

「いかがでしたか?」

「ああ、おいしかったよ。ありがとう。」

「お粗末様です。」

「マーガレットさんにもお礼言わなくちゃな。」

「ああ!いいですいいです!立ち上がらなくて。私が伝えておきますから。」

「そうか?」

「はい。お任せください!」

グッと腰の位置でガッツポーズの仕草をするペルーシャに俺は苦笑しながらお願いする。

「なら、お願いするよ。おいしかった、ありがとう。と伝えてくれ。」

「はい!では、お休みなさい。」

「お休みなさい。」

ヒラヒラーと手を振りながら扉の向こうに消える彼女に俺は手を振った。

パタン、という扉の閉まる音が響き、部屋に静けさが戻る。すると、腹が満たされたためか、急速に眠たくなってきた。まぶたが重くなり、次第に目を開けていられなくなる。お腹もいっぱい、部屋も暖かで、布団もフカフカ。俺はこれ以上無い満たされた気持ちで眠りにつくのだった。


「・・・ウさん。・・・オウさん。」

「・・・ん?」

肩を揺さぶられる感覚によって俺は目を覚ました。

「あ、マオウさん。ようやく起きてくれましたね。もう朝ですよ。」

どうやらペルーシャがベッドのすぐ隣で俺を起こそうと肩を揺さぶっていたようだ。

「ふわぁ。」

俺は大きなあくびをしながら体を起こした。

「体の方はどうですか?まだ痛みますか?」

ペルーシャは心配そうに瞳を揺らす。俺は確かめるように肩をグルグルと回してみた。

「ふむ・・・大分良くなったみたいだ。」

「そうですか!良かったです!!」

両手を組みキラキラと目を輝かせる彼女の様子に俺は少し照れくさくなり鼻頭を掻く。

「ありがとうな。ペルーシャ。」

「はい!それほどでも!」

「ところでなんだが・・・。」

「はい、なんでしょうか?」

俺が言いよどんでいると不思議そうに首をかしげる彼女。俺はポリポリと頬を掻きつつ言った。

「お風呂、貸してもらって良い?さすがに二日間も入っていないと気持ち悪くて・・・。」

「あ、なるほど。ちょっと待っててください!」

そう言い残すと彼女はタタタと走って部屋を出て行ってしまう。取り残された俺は一人呆然としていた。

しばらくすると、またタタタと走り戻ってくる彼女。ポカンとそんな彼女を見てると、ペルーシャはピシッと敬礼ポーズを取り敢然とこう言い放った。

「マオウさん!準備が整いました!」

「へ?なんの?」

「お風呂です!ささ。行きましょう!!」

嬉しそうに俺の手を取り、立ち上がらせるペルーシャ。

「大丈夫ですか?立てますか?」

「それは大丈夫だが・・・。」

「痛くありませんか?」

「ああ。」

「そうですか!ならお風呂場へご案内しますね。行きましょう!!」

「お、おう。」

 俺は彼女に腕を取られ風呂場へと連れて行かれる。うぉおお!柔らかい、ムニムニ当たってる!!バッと顔を彼女に向けても彼女は「?」という顔でこちらを見つめ、その次の瞬間にはニコッと笑いかけるのみ。何でこういうときにそんな可愛い笑顔になるの!この子は!ホント食べちゃいたい!

そうこうしている間に脱衣所に着く俺たち。

「では、ここが脱衣所ですので、適当に脱いだモノはここに置いておいてかまいませんので。」

「おう、悪いな。」

「いえいえ。ではごゆっくりー。」

そう言って脱衣所の扉を閉め出て行くペルーシャに俺は首をかしげる。あんなにテンションが高いのはなんでだ?は!まさか!俺が気が付かなかっただけでめちゃくちゃ臭かったとか!?ヤバいそう思えばすべての辻褄が合う気がする。早急に体を洗わねば!!

 そう考えた俺は勢いよく服を脱ぎ捨てお風呂場に入る。すたすたと歩いて鏡の前に立つ。そして怪我の具合を一応確認した。

「ふむ。もうほとんどふさがっているじゃないか・・・動いても大丈夫そうだな。」

 俺は一人うなずくと早急にシャワーで頭をぬらしシャンプーで頭を洗い出す。ペルーシャに臭いと思われたらこれからの人生、生きていけない。

 そんな思いで一心不乱に頭を洗っていると、カラララという軽やかな音とともに風呂の扉が開く。誰が来たのか確かめるためにシャンプーを洗い流そうと考えたが、目をつむったままではどこにシャワーがあるか分からずあちこち手の感触だけで探し回っていると、後ろからクスリと蠱惑的な笑う声が聞こえ、ぎくりと背筋を凍らせる。おいおいおい。まさか今、俺の後ろにいるのは・・・。

「マオウさん。シャワーはここです。」

「ブハァ!!」

ペルーシャの声が背後から聞こえ、あまりの驚きに俺は吹き出す。だけど、彼女はそんな俺に構わずシャワーのお湯を出し俺の頭に付いたシャンプーを洗い流していく。ぎこちないその手つきに身を任せていた俺は慌てて彼女の真意を問う。

「ど、どうしてペルーシャがここに!?」

「お背中を洗い流そうと思いまして。なにか変ですか?」

「変だわ!!」

「そうですか?女の人が男の人の背中を流すのが当たり前だと思っていましたので。はい、できた。」

キュッとシャワーの栓を閉める音が風呂場に反響し、俺はおそるおそる視線をあげる。鏡に映ったのはどう見ても全裸のペルーシャだった。

「おいぃいい!!服はどうした?」

「脱ぎました。当たり前じゃないですか。服を着てお風呂に入れば服が濡れちゃいますし。」

フフン、と馬鹿にするような顔で俺を鏡越しに見るペルーシャ。今のところ俺の体に彼女の体は隠れているので、見えていないが少しでもずれればアウトだろう。

「でも、安心してください。マオウさん。」

「何がだよ。」

「バスタオルは着けていますので!」

「どや顔でそんなこと言われても説得力無いわ!!」

 俺のツッコミなど意に介さない様子で「ふっふっふ。」と誇らしげにこちらを見つめる彼女を見ているとなにか自分の方が間違っている気すらしてくる。

 当のペルーシャに目を向けると、彼女はジーと俺の背中に目を凝らして何かを見ている。

「どうした?」

「いえ、本当に傷治ってるなあ、と感心してまして。マオウさん、傷の治りすごく早いんですね。」

「そうか?」

「はい。一昨日、私たちが治療した後はこんなに傷小さくなかったですもん。驚異的な早さです。」

「まあ、確かにもうほとんど痛くないし、そうなのかもしれないな。」

そう答えた俺は遅まきながらようやく彼女の真意にたどり着いた。

「ペルーシャ。」

「はい?」

「お前、俺の傷の具合を見るためにこんなことしたんだろ?」

「ギクゥウ!!なぜそれを!」

オーバーなリアクションで驚く彼女に俺は苦笑しながら答えた。

「いや、そんだけ顔を赤くしていたら誰だっておかしい、と思うぞ。」

「はうぅう・・・そんなぁあ。がんばったのに・・・。」

両手で顔を押さえて恥ずかしがる彼女を見て俺は再度苦笑した。

どれだけまじめなんだ、この子は。自分の気恥ずかしさを押し殺し、人のためを思って行動できるなんて・・・。

俺は感心するやらまじめが過ぎることを呆れるやらでため息をつく。

「はぁ・・・。」

「呆れましたか?」

うるうるとした目でこちらを鏡越しに伺う彼女に俺は笑みを浮かべてこう言った。

「ありがとなペルーシャ。心配してくれて。」

「あ・・・いや、そんなとんでもない。」

モジモジと顔をうつむかせ恥ずかしがる彼女だがしっぽがピュンピュンと左右に動いているので喜んでもいるのだろう。俺は彼女のそんな様子をほほえましく思ったがこれ以上彼女に恥を掻かせるわけにも行かないので退室を命じる。

「もう俺の怪我は心配いらない。だからほら。もう上がれ。」

俺は鏡越しに彼女を見ながらあごで脱衣所の方向を指し示す。

すると、彼女も限界だったのだろう。ぺこりと頭を下げお礼を述べる。

「ありがとうございます。では、また朝食で会いましょう。」

「おう、ありがとな。」

「はい!ではお先に失礼します!」

喜び勇んで彼女は立ち上がる。そのとき誰もが油断していた。だからこそこの悲劇は起こってしまう。

ぺろん

鏡一面の鮮やかすぎる肌色が俺の視界に飛び込む。

そこからの記憶は無い。


「お、上がったのかい。湯加減はどうじゃった?」

「ええ・・・最高でした。」

「あら?、どうしたんだい、その怪我。風呂に入る前より増えてないかい?」

「ええ、ちょっとまあ、何ででしょうね!わははははー。」

「?まあいい。朝食を食べようじゃないか。」

不思議そうに首をかしげたマーガレットさんだったが、気にしないことに決めたようだ。「ふぅ」とため息を小さく吐いた俺。

「マオウさん。」

「はい!?」

耳元で小さく囁く声。俺はビクゥッと背筋を凍らせる。耳元で微かに彼女の息づかい。

「忘れましたよね?さっきの。」

「はい。わわすれまちた。」

噛み噛みでそう答えると、腕を取られ。

「ならいいです。いっしょに座りましょう!」

さっきまでの迫力はどこへやら。ニコリと笑いかけながらそんな提案をしてくる。女の子って恐ろしい・・・。

「おう。座ろうか。」

こうして皆が一堂に会し朝食を食べ始めた。今日の朝食は洋風。食パンやフランスパンなどのパンがメイン。あとはサラダやジャムなどをお好きにどうぞ、というスタイルだった。なかでも、コーンスープがうまい。超うまい。

俺が夢中になって朝食を食べていると、ペルーシャとマーガレットさんが何かを気にして話し出す。

「あれ、今日もアマミちゃんは宿直?」

「そうみたいだねえ。」

「大変ですね、衛兵隊の隊長さんは。」

「仕方が無いさ。なんたってあの巨人族が私たちの国に攻め入ろうとしているという専らの噂だからねえ。」

「え、なんだその話。」

マーガレットさんの言葉に俺は口を挟む。

「巨人族がこの国に攻め込んでこようとしているのか?」

俺の言葉に、うなずくマーガレットさん。その瞳は真剣な色味を帯びている。

「ああ。そうだ。お前さんは知らないだろうが、つい先日、魔王が勇者様によって倒されたらしいのじゃ。すると、魔王死亡の噂は瞬く間に世界各地へと広まり、残党の魔族が「我こそは次代の魔王である。」と言った具合に活動を活発化しよっての。そのご多分に漏れず、巨人族も名乗りを上げ取るのじゃ。そして、巨人族進軍の一番最初の標的は、周辺諸国の内最も戦闘力の低い儂らの国「アマルニ王国」であると言われておる。」

「そんな・・・。巨人族って言うのはやっぱり強いのか?」

「ああ。強い。その巨体は岩をも砕く堅さと強さを備え取る。歩いとるだけでも脅威じゃ。だが、幸いなことに個体数はさほど多くない。逆に儂らアマルニ王国の国民は一万人はおるじゃろう。奴らに勝つには数で勝負するしかないじゃろうて。」

「大丈夫だよ!おばあちゃん。アマミちゃんならスゴイ作戦を思いついてすぐに巨人なんて倒しちゃうよ。」

「さっきから出てるそのアマミちゃんっていうのは誰なんだ?」

俺がそう聞くと、ペルーシャは瞳を輝かせて俺に言う。

「アマミちゃんはこの国の衛兵のトップのとっても強い子です。そして、私の一番の親友なんですよ。」

「へぇ、そうなのか。どんな子なんだ?」

「えっとですね。まず、とっても可愛い子です。黒ウサギの獣人なんですけど、頭に付いてる耳とかおしりに付いてるしっぽとかがアマミちゃんにすっごい似合ってるんです。でも、アマミちゃん本人はカッコイイ女の子に憧れているらしいんですけど、そんなところも可愛いんです。」

「お、おう。そうか。ペルーシャはホントにその子のことが好きなんだな。」

「はい。大好きです!」

アマミちゃんとやらの話をするペルーシャの勢いがすごすぎて若干引き気味の俺であったが、彼女がそのアマミちゃんととても仲良しであることだけは伝わってきた。

「そうか。じゃあ、そのアマミちゃんとやらは今、どこにいるんだ?」

「えーと、この家に帰ってきていないところを見ると、たぶん見張り櫓の方にいるんじゃないかなあ、と思いますけど。」

「ふーん、そうか・・・って。え!ちょっと待って!」

「はい?」

心底不思議そうに首をかしげるペルーシャに、俺は頬を引きつらせながら尋ねた。

「そのアマミちゃんの家って。もしかして、ここ?」

「はい。言ってませんでしたっけ?」

「言ってないし聞いてないんだけど!?」

すると、マーガレットさんが笑いながら言う。

「そうじゃったな。まだ言っていなかったみたいじゃ。失念しとったわい。」

「私も完全に忘れてたよ。」

「頼むからしっかりしてくれ。」

俺の懇願に二人はクスクスと楽しそうに笑う。

「すまんな。この家はお前さんを除いて三人の住人がおる。儂、ペルーシャ、そしてアマミじゃ。」

「もう、言い忘れは無いですよね?」

「残念ながら、これで家族は全員じゃ。」

俺はその言葉を聞いてホッとする。しかし、俺はまだ見たことのない同居人がいることに興味が沸いてしまった。そのアマミにあってみたい。

「じゃあ、今日はそのアマミのところに行ってみたいんだけど、良いかな?」

「え!?じゃあ、私も行きたい!」

二人して立ち上がりマーガレットさんに聞くと、マーガレットさんは心底嬉しそうにほほえんで言う。

「いいよ。ただし、暗くなる前には帰ってくるんじゃぞ?」

「はい。」

「よろしい。じゃあ、気をつけて行ってきなさい。」

「はい。行ってきます。」

「よし、行きましょう、マオウさん!」

俺の手を引き、楽しそうに笑うペルーシャにつられ、俺も笑みを浮かべてしまう。

――アマミ・・・どんなやつか楽しみだ。

俺はまだ見ぬ同居人に胸を躍らせ、家の扉を開けたのだった。


いかがでしたか?

感じていただけましたかね、ペルーシャの愛らしさを。

もっともっと共感してもらえるよう頑張りますので応援よろしくお願いします!

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