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魔王様のケモミミニューゲーム  作者: Ai
ケモミミ達の国
11/11

ケモミミラブコメ

ラブコメです!

楽しんでくれたら嬉しいです。

 ポカポカとしたお日様が差し込む、心地良い春の庭。

 

 花壇には色とりどりの花々が咲き誇り、時折、甘酸っぱい花の香りが風に乗って運ばれてくる。


 その花壇の前に木の揺り椅子が一つ。


 それは母のお気に入り。

 母はいつもそこに座り、花壇を見つめる。

 その時の、母の顔はすごく優しげで、楽しそうで。

 そして、俺は、そんな幸せそうに花を見つめる母を、眺めていることが、大好きだった。

 

 「母さん」

 

 俺の短い呼びかけを聞いた母は、背の低い俺に合わせるように腰をかがめ、微笑んだ。


 「ん?どうしたの?」

 

 俺は出来るだけそっけなく言った。


 「だっこして」

 

 俺がそう言うと、母は優しく俺の頭を撫でる。

 

 「ふふふ、ホントしょうが無い子だね」

 

 そう言うと、母は両腕で俺を引き寄せ、ギュッと抱きしめる。

 

 柔らかくて、暖かくて、いい匂い。

 

 目をつむると、まるでお日様に包み込まれているみたいだ。


 ああ、ずっとこうしていたい。

 こうやって、ずっと母さんの腕の中で眠っていたい。


 素直にそう思えるほどの多幸感に、今、俺は包まれている。


 「かあさん」


 「なーに?」


 母の優しい声。

 ただそれだけなのに、俺は嬉しくて、なんどもなんども呼びかける。


 「かあさん」


 「なーに?」


 母も、俺が何か返事を期待して呼びかけているわけではないことを感じ取っている。

 ただ、優しく一言「なーに?」と聞く。

 たったそれだけ。

 それだけなのに、俺の心は、ポカポカと暖かくなる。


 「かあさん、かあさん……かあさん!!」


 「マオウさん、私はマオウさんのお母さんじゃないですよ?」


 「え……」


 今まで聞こえていた母の声、ではない。

 それに、さっきまであった、あの花壇も、揺り椅子も、母も見えない。

 目の前は真っ暗だ。

 やばい、まさか……。


 俺は嫌な予感にまぶたをソッとあげる。


 すると、そこには困ったような笑みを浮かべたペルーシャの顔があった。


 「え!!ペルーシャ!?」


 「はい、マオウさん。」


 ペルーシャはニコリと笑みを浮かべ、こちらを見つめている。

 俺は驚きのあまり、目を見開き、彼女の顔を眺め回すが、どこからどうみても、正真正銘、彼女はペルーシャだ。


 だが、待ってくれ。

 どうして、ペルーシャが、俺の隣で眠っているんだ!?

 しかも、俺のこの体勢はどういうことだ!?

 なんで俺はペルーシャに抱きついちまっているんだ?


 グルグルと様々な疑問が頭を渦巻き、混乱していると、ペルーシャは口元に手を当て、悪戯っぽく笑みを溢し言う。


 「マオウさん。ずっと「母さん、母さん」って言いながら私に抱きついて来てましたよ?」


 「うそだろ……」


 「ホントですよ~。なんか小さな男の子みたいで、恐縮ながら可愛いって思っちゃいました」


 ペルーシャはそう言うと、ほんのりと赤く頬を染め、クスリとまた笑みを溢す。

 

 恥ずかしい!!

 死にたいくらい恥ずかしい!!

 

 「忘れてくれ……」


 両手で顔を覆いそう懇願するものの。


 「絶対忘れませんよ~。マオウさんのあんな可愛い姿」


 パチンと綺麗なウィンクを決める彼女に俺はため息をついた。


 「じゃあ、しょうが無い。忘れてもらうのは諦める。だけどな……」


 「だけど……?」


 俺の言葉のつづきを促すように首をかしげるペルーシャ。

 まるで、見当が付かない様子だ。


 だけど、俺には、ずっと気になっていることがあったんだ。


 それは……。


 「だけど、服を着せることは諦めない!!っていうか、なんでペルーシャ、お前、裸で俺を抱きしめてるんだよ~!?」


 「え……?」


 俺の魂の叫びを聞いても尚、不思議そうに首をかしげるペルーシャ。


 少し動くたびに、まぶしい肌色が視界に入り刺激が強すぎる。

 今は布団で隠れているけど、あと少しずれちゃったら大変なことになる。


 「いや、だから、なんで裸なの?そういう、種族なの?」


 「やだな~マオウさん。いくら私たち獣人族でも真っ裸で眠る習慣なんて無いですよ~」


 おかしそうに笑う彼女だが、どこからどう見ても、俺には裸にしか見えない。


 「いや、だって、今裸じゃ……?」


 俺の言葉に、ペルーシャはふっふっふ、舐めないでくださいと笑う。


 なんだ?何か彼女にしかわからない秘密がそこには隠れているのか!?

 俺は知らず知らずのうちにゴクリと生唾を飲む。


 その時、ペルーシャはカッ!と目を開き、こう叫んだ!


 「安心してください!パンツは履いてます!!」


 「おい!どや顔で言ってるところ悪いけど、それそういう問題じゃないからね!?」


 したり顔になったペルーシャに俺は鋭い突っ込みを入れる。

 だが、ペルーシャはまったく堪えた様子もなく、頬をポリポリと掻きながら言う。


 「いやぁ、私実は眠っている間に、服がどこかにいっちゃう癖があって……たはは」


 「たはは……じゃないよ!!それ、どういう癖なんだよ!?」


 「私にもわかりません!!」


 「誇らしい顔をするんじゃない!!」


 まったく……あのまじめなペルーシャが、まさか脱衣癖があるなんて、露程も思わなかったぞ。

 実はペルーシャって結構抜けてるのか……?


 俺が頭を押さえ、あきれ果てていると、先ほどまでとは打って変わり、突然、モジモジといじらしい態度になったペルーシャ。


 「どうした?」


 俺がそう問いかけると、彼女は顔を真っ赤にしてうつむき、聞こえるか聞こえないかの小さな声でこう言った。


 「……だって、こうやって強がってないと恥ずかしくて死んじゃいそうなんですもん」


 ずきゅん!

 俺の心臓は完全に打ち抜かれてしまった。


 いや、ホントそれ反則。

 さっきまでの、自信に満ちあふれた表情から一転、しおらしく、羞恥に顔を染めるなんて。

 彼女のあまりのかわいらしさに、さっきから俺の心臓はとんでもない速度で脈打ち、口から飛び出てきそうだ。


 「マオウさん……」

 

 そう呟き、うるうる、とした瞳で見上げてくるペルーシャ。

 俺は彼女のそんな様子に一瞬言葉を失い、見惚れてしまったが、なんとか言葉を絞り出す。


 「……お、おう。そうか。ホントは恥ずかしかったのか。悪い。色々言って。」


 「いえ……私こそ、なんかすみません。」


 そこで、会話は途切れ、気まずい沈黙が俺たちを襲う。

 

 お互い視線を合わせず、しばらく、口を開かなかったが、俺はこの沈黙をこれ以上耐えることができず、とりあえず、彼女に服を着てもらおうと口を開いた。


 「……じゃあさ。とりあえず、服着てくれないか?」


 その言葉にペルーシャはこれまた恥ずかしそうに言う。


 「あの……では、後ろ向いといてくれますか?流石に、着替えを見られることは、私、恥ずかしいので……」


 「お、おう。わかった……」


 恥じらいを見せるペルーシャに、俺も動揺を隠しきれず、若干声が上ずってしまい、それを誤魔化すように、素早く体を反転させ、ペルーシャに背を向けた。


 「ふう……これで、安心でき……」


 「なーにが安心なのかなあ?マオウ君?」


 反転した俺を待っていたのは、鬼の形相をしたうさ耳美少女。

 怒りが頂点に達し、こめかみがピクピクと震えている。


 あ、これ死んだかも。


 絶望が俺の心を埋め尽くす。


 だが、ここで生を諦めるわけにはいかない。

 俺はまだこんなところで死ぬ訳にはいかないし、死にたくない。

 それに、いくら鬼軍曹といえども、悪気のない人間を殺したりはしないはず……。


 その僅かな希望に賭けて、俺は満面の笑みを作り、こう言い放った!


 「おはよう!アマミ!」

 

 「死ね!!マオウ!!」


 「ですよね!?」

 

 こうして、マオウとケモミミ美少女の騒がしい一日は幕を上げた。

 


どうでしたか?

次回もお楽しみに〜

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