プロローグ
第1話です。
ケモミミ美少女といちゃつきつつバトルも書く!という思いから書きました。
どうか暖かな目で見守ってください!
では、どうぞ!
紅蓮の炎逆巻く魔王城。
最上階“宝玉の間”の中央で対峙する二人。
一人は金色に輝く聖剣を携えた美青年――金色に輝くのは剣だけでなく、身につけている鎧や盾までもが煌びやかに輝き、彼の頭上には“勇者”の証たる金の冠。
燃えさかる炎の輝きを受けてそれらの色合いは深みを増し、凄みさえ感じる迫力を帯びている。
そんな勇者に対峙するは、全身黒ずくめの男。
こちらの手にも一振りの剣――こちらは柄から刀身までが真っ黒で、その鍔の真ん中には深紅の宝石が輝く。
勇者の美麗な剣とは逆に、こちらの剣は精緻な技巧が一切無い。
純粋に研ぎ澄まされた「人を斬る」ためだけの道具。
それ故、人を魅了させる洗練された美しさが宿っている。
だが、その黒の男は負傷していた。
足下まで伸びたレザーマントは至る所が破れ見るも無惨だし、胸や肩に付いたプロテクターも割れ、そこから覗く傷口からは鮮血があふれている。
目深にかぶる黒のハットで片目は隠れ見えないが、もう片方の目が憎々しげに歪められ、苦しそうだ。
そう。今まさに、長きにわたる勇者と魔王の戦いに終止符が勇者の勝利という形で打たれようとしているのである。
疲弊した魔王の姿を見て、勝利を確信したのだろう。
勇者は勝気な笑みを浮かべ、剣を構える。
「魔王・・・これで終わりだ!」
高らかにそう叫んだ勇者の一撃が魔王に迫る。
「ぐはっ・・・・!!」
魔王は反応が遅れ避けきれず、勇者の渾身の一撃をもらってしまう。
うめき声を上げる魔王だったがまだ息はある。
剣を支えに立ち上がった魔王だが、足下はふらつき、立っているのがやっとという状態。
誰の目にも結果は明らかだったが、それでも魔王は諦めない。
おぼつかない足取りで数歩玉座へと近づいた魔王は崩れるように倒れる。
「魔王、往生際が悪いぞ・・・。」
勇者が確かな足取りでじわりじわりと魔王の背後に迫る。
すると、追い詰められ危機的状況であるはずの魔王が不気味な笑い声を上げだした。
「く・・・クフフフ。」
「何がおかしい?」
魔王の背後に立ち、聖剣をゆだんなく魔王に向ける勇者が問うた。
すると、倒れたままの魔王が不穏な言葉を吐き出す。
「確かに、今回はお前の勝ちだ。それは認めよう・・・だが、私は諦めない!いつかお前の前に再び現れ、この世界を闇に落とし入れることを約束しよう。」
バッと顔を勇者に向け雄弁に語る魔王の手には水晶のように透き通った球体が握られている。
これは転移結晶!?
勇者は魔王がどこかに転移し逃亡を謀るつもりであることを瞬時に見抜き、聖剣を裂帛とともに振りかざす。
「そうはさせないっ!」
勇者の持つ聖剣が勇者の意思に呼応し金色の閃光を放ち出す。
聖剣の持つこの聖なる輝きは魔王の持つ魔の瘴気を打ち払い浄化する。
「・・・・・・!」
魔王も転移結晶による転移が完了するまでの時間を稼ごうと残りの魔力すべてを放出し防御壁を作ることで最後の抵抗を謀る。
「はぁああー!!」「くっ・・・・!!」
勇者の聖剣と魔王の瘴気が交錯した。
光と闇の奔流があたりを飲み込み、風がうなり、大地が轟く。
「・・・・・!!」
勇者の剣を魔王の魔力が押し戻し拮抗する。
力だけで見れば互角に思えたが。
「くっ・・・!」
消耗していた魔王にはやはり分が悪くジリジリと勇者の聖剣に押し込まれだしている。
転移結晶の転移はまだ完了しないが、結晶の輝きが増している。
あと、ほんの少しで魔王の転移が完了してしまう。
それを勇者が許すはずもない。
「はぁああああ!!」「ぐ・・・うぉおおお!!」
両者がよりいっそう大きな雄叫びをあげ最後の力を振り絞った。
バリーン!!
破砕音とともに砕け散る魔王の防御壁。
勇者の力が魔王の力を上回り、勇者が防御壁を破壊したのだ。
もはや魔王の身を守るモノはなにもない。魔力も底を突いているはず。
勇者は自らの勝利を確信し、ニヤリと笑みを浮かべた。
それは一瞬の気の緩み。
その刹那、魔王の目がキラリと光った。
「まだだ・・・・!」
「なに・・・!!」
ここまでが魔王の作戦だった。自らの防御壁をあえて勇者に破らせることで、一瞬の隙を作り出したのだ。
「ぐはぁっ・・・!!」
残りの魔力のほとんどを使った魔王の一撃を喰らい勇者の体が吹き飛ばされた。
宙を舞う勇者。
だが、勇者も負けてはいない。
空中で体勢を整え、着地と同時に顔を上げる。確かに驚異的な戦闘能力である。
これだけ早く体勢を整えられては敵は追撃できないであろう。
しかし、このときに限ってはその一瞬が運命を分けた。
転移が始まったのだ。
魔王の体が時空のゆがみによってうっすらと消えていく。
勇者はそれを見て急いで飛びかかるが間に合わないことはあきらかだった。
魔王はすでに満身創痍。
だが魔王は剣に寄りかかるようにして立ち上がり勇者を見据えて最後にこう言い放つ。
「では、また会おう。さらばだ。勇者よ・・・・。」
そう言い残した魔王の姿は次の瞬間には忽然と消えた。
先ほどまで魔王のいた場所に駆け寄った勇者だったが、魔王は完全に消えてしまっている。
「逃げられたか・・・。」
そうつぶやく勇者の目に転移を終えた転移結晶が映る。
コロコロと勇者のそばに転移結晶は転がり、カシャンという軽やかな音を立てて破砕。
無感動にその様子を見ていた勇者だったが、フン!と鼻をならし。
「待っていろ、魔王。すぐに見つけ出し殺してやる。」
そうつぶやいた勇者は聖剣を鞘に戻すと、きびすを返し歩き去る。
魔王城を焼く炎はいっそう激しさを増している。
魔族の屍。
人間の屍。
おびただしい死に彩られた魔王城のレッドカーペット。
その真ん中を一人。
勇者は颯爽と歩き、揺らめく陽炎に消えるのだった
いかがでしたか?
楽しんでいただけていたら幸いです。
ではまた次のお話で会いましょう!
SEE YOU!