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元魔女は村人の少女に転生する  作者: チョコカレー
6部:聖騎士血戦
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最終話:魔女を殺す者



 魔法陣に魔力を込めながらエメラルドは身体中の全神経を集中させる。呪いを解くには集中力と大量の魔力がいる。一度失敗すればもう一度儀式を行う事は不可能だろう。故にエメラルドは額から汗を流しながら唇を噛み、詠唱を行った。


「我が名は魔女エメラルド。汝に掛けられし死の呪いを解く者なり、全ての魔素よ、我に従え……」


 詠唱を始めると同時に魔法陣が輝き出し、光が怪物を包み込んで行く、魔素が実体化して光の粒子となり、宙をフワフワと飛び始めた。ここからが本番である。エメラルドは気を引き締め直して詠唱を続けた。


「解き放て、束縛されし力を。消え去れ、魔の呪縛よ。全ての魔素は今我が手に……ッ」


 怪物を包んでいた光が線となり、エメラルドの手と繋がって行く。エメラルドはその光を掴み取り、ぎゅっと力強く握り締めた。これこそが呪いを解く重要な手順。最後の詠唱を行う為にエメラルドは腕に力を込める。


「我が名は魔女エメラルド! 解放せよ、死の呪いよ!」


 そう言葉を発した瞬間エメラルドは思い切り光の線を引っ張り、儀式を発動させた。怪物を包み込んでいた光はそのまま凝縮され、怪物の身体を飲み込んで行く。まるで押しつぶすようにその光景は痛々しく、怪物からもうめき声が漏れた。だが次の瞬間、パキィンとガラスが割れるような音と共に光が散った。怪物の漆黒の鱗が剝がれて行き、光と共に怪物だった人物が姿を現す。


「うっ……く……私、は……?」

「そ、その姿は……貴方はまさか……っ」


 エメラルドは現れたその姿を見て絶句する。自分が想像していたのはとは違う、予想外の事態に完全に言葉を失った。その直後、教会の屋根の上から激しい轟音が響き渡った。





「ア! ハ! ハ! ハ! ハ!」

「すばしっこい奴め……! 逃がさんぞッ」


 屋根の上では黒い霧に覆われた少女が高笑いしながら走り回っていた。その後を浮遊魔法で宙に浮きながらシャティアが追い、魔力の球を発射する。しかし霧の少女は高い身体能力で魔法も使わずにそれを回避し、塔の壁を蹴り上げると上空を舞い、霧の刃でシャティアに斬り掛かった。


「アハハッ!!」

「しッーーー!!」


 鋭い金属音を立てて霧の刃が散って行く。受け止めたシャティアの手には銀色の輝く短剣が握られていた。シャティアが魔力で生成した魔法剣だ。霧の少女はいつの間にか切り裂かれた自身の肩を抑えながら屋根の上に着地し、再び霧に紛れてシャティアから距離を取る。

 するとシャティアは銀の短剣を投げ捨て、空いた両手を霧の少女に向けると手の平に大量の魔力を込めた。轟音と共に巨大な魔力砲が放たれ、屋根を破壊していきながら霧の少女へと向かって行く。


「これなら避けられまい!」


 逃げ場は無い。このままなら霧の少女は魔力の塊に直撃して力尽きるはずであった。だが吹き飛ばしたはずの霧の少女の身体は黒い霧と共に掻き消え、散っていった。ただの霧。シャティアは表情をハッさせて後ろを振り返った。そこには霧に覆われた本体の少女が迫って来ていた。


「クハハハ!!」

「むっ……相変わらず、騙すのが上手いな……」


 襲い掛かって来た大量の黒い霧を左腕で防ぎ、シャティアは忌々しそうに呟きながら屋根へと着地した。

 今ので完全に左腕をやられた。呪いの類を付与されているあの霧は素手で触ってはならない代物だ。しかしシャティアは全身を守る為に敢えて左腕を犠牲とした。最悪の場合腕は切り落としてしまえば良い。そう考えたのだ。それを知ってか知らずか、同じく霧の少女も屋根へと着地し、黒く塗りつぶされたその顔でケタケタと笑っていた。だがその時、屋根の一部が吹き飛んでそこから一人の少女が現れた。紫色の長い髪にボロボロの黒いドレスを羽織った美しい少女だった。


「ああ、ようやく目覚めたか。ヴェスタリス」

「私だと最初から気付いていたんですか?……シャティファール母様……」


 シャティアはその姿を見ても大して驚いた様子は見せず、ああと何気なく挨拶して手を振った。

 少女の名はヴェスタリス。かつて不死の魔女として恐れられたあの魔女であった。彼女こそが死神の呪いによって黒い怪物に変貌させられ、今までずっと記憶を失って彷徨い続けていたのだ。


「まぁな。幾つか分からない点があったが、これでようやく納得いった」


 近づいてきたヴェスタリスの頭を撫でてやりながらシャティアは寂しそうにそう言う。ヴェスタリスも何処から辛そうな表情をしており、二人はゆっくりと視線を霧の少女の方へと移した。


「これで隠す必要も無いだろう……いい加減姿を現したらどうだ?ファンタレッタ」


 シャティアがそう言うと黒い霧の少女は急に肩を落とし、壊れた人形のように項垂れた。そして突然ケタケタと笑いだし、身体を包んでいた霧を発散させ始めた。竜巻のように黒い霧が周りを飛んでいき、中心に黒服を来た小麦色の髪の少女が降り立つ。短く纏められてて天辺から一本の髪の毛がちょんと飛び跳ね、獣のように鋭い目つきに常に吊り上がった口をした明るい印象の少女。その少女は邪悪な笑みを浮かべながらシャティア達の事を見下ろした。


「あ~れれ~?バレちゃったすか?せっかくヴェスタリスっちをかっこいい怪物にして玩具にしてたのに~。酷いじゃ無いっすか母さんー」


 何の罪悪感も感じていないようにケタケタと笑いながら【破滅の魔女】ファンタレッタはそう言い放つ。呪いを司る彼女は死神の呪いで仲間であるヴェスタリスを怪物へと変貌させた。だがその事すらも玩具の一つとしか捉えていないようで、シャティアは小さくため息を吐いた。


「何故だ?何故こんな事をしたんだ……?」

「アハハハ。そんなの何百年も前に話したじゃ無いっすか」


 シャティアはようやく最大の疑問であるファンタレッタがどうして仲間の魔女達を裏切るような真似をしたのかを尋ねた。するとファンタレッタは腕を頭の後ろに置いて何てことの無いように話し始めた。


「人間てぇのは馬鹿な生き物でしてねぇ、母さん。ちょーっと突いてやればすぐに本性を現すんすよ。あたしが魔女の居場所を教えてやっただけですぐに勇者を派遣して殺しに向かわせる」


 パチンと指を鳴らしてヴェスタリスの事を指さしながらファンタレッタはそう言った。そして親指以外の指を折るとビッと自分の首の前で線を切り、死んだジェスチャーを送った。


「お前が人間をよく思っていない事は分かっていた……だが何故仲間まで裏切るような事をした?」

「だってぇ、母さん達は人間を守ろうとしてたじゃ無いっすか。他の魔女達もなんやかんやで母さんの言う事守って人間に手ぇ出さなかったし……だ、か、ら。邪魔だったんすよ。母さんが」


 今度はシャティアの事を指さしながらファンタレッタは堂々と言い放った。一切隠そうとはせず、その言葉には殺意まで込められている。彼女は本気で母親代わりであったシャティアを殺そうと考えていたのだ。


「そしてあたしは計画を実行し、勇者を誘導して母さん達を殺させた。もちろんあたしもやられたフリしたっすよ?んで案の定クロークっちは人間達を憎み、あのエメラルドっちまでが人間に復讐しようとした……全部あたしの計画通りっすよ」


 ファンタレッタはクツクツと小さく笑みを零しながらそう言う。そのあまりの非道振りにシャティアの横に立っていたヴェスタリスは完全に言葉を失い、口元に手を当てていた。そんな理由で自分を怪物に変貌させたのか?と尋ねたかった。だがあまりのショックで彼女は口を動かす事すら出来なくなっていた。


「でも! やっぱりいつでも邪魔するのは母さんっすよ……完璧にやったと思ったのに。転生魔法まで使って戻って来た……本当しぶといっすよね。母さんは」


 拳を握り絞めて大層恨めしそうにシャティアの事を睨みつけながらファンタレッタは低い声でそう言った。本気で憎んでいる。彼女は自分の計画が邪魔された事に本気で憎んでいた。今まで出会ってきた魔女達はいずれもシャティアが母親代わりだと言う事から情を持っていた。例え敵対していても尊敬していた。だがファンタレッタは違う。彼女は完全にシャティアを障害と認識していた。


「ああ……そうか……やっぱり、そうなのか」

「……シャティファール母様?」

「ヴェスタリス、お前は下がっていろ……」


 シャティアは何かを悟ったように悲しそうに呟く。そこに違和感を感じたヴェスタリスは声を掛けたが、シャティアはただ忠告をするだけだった。だがこういう時はシャティアの言う事を聞いていた方が良いと知っているヴェスタリスは言われた通り、その場から下がった。シャティアは一歩前に踏み出し、躊躇無くファンタレッタへと近づく。


「……?」

「ファンタレッタ、お前に真実を教えてやろう」


 シャティアがそう言った直後、彼女は腕を下から上へと振るうと凄まじい突風を巻き起こした。突然の攻撃にファンタレッタは反応出来ず、そのまま風に巻き込まれて上空へと打ち上げられる。それを追い掛けてシャティアは浮遊魔法で空へと飛び立った。

 教会の塔を蹴ってファンタレッタも軌道を取り、霧に身体を包ませながら更に上へと回避する。すぐ後ろからはシャティアが迫って来ており、彼女は上空で停止するとファンタレッタも同じようにその場で停止した。


「真実って……一体何を教えてくれる気なんすか?」

「お前は昔から気になっていただろう?自分達魔女はどういう存在なのか?どうして七人しか居ないのかって……それを教えてやる」


 シャティアの様子がおかしい事に気づいたファンタレッタは少し余裕を無くし、いつでも離脱出来るように魔力を集中させながら会話を切り出した。シャティアは両腕を組み、落ち着いた雰囲気のまま口を開く。


「魔女が七人しか居ない理由……それは我自身が【魔女の一族】を滅ぼしたからだ」


 シャティアから告げられた言葉にファンタレッタは一瞬自身の耳を疑う。到底彼女の人物像からは信じられない言葉が飛び出したからだ。ファンタレッタは目をぱちくりとさせて呆然としている間、構わずシャティアは話を続ける。


「かつて我々魔女の一族は世界を傍観し、見届ける役目を担っていた。だがある一部の魔女達が自分達こそ世界を支配する存在なのだと反発し、力を行使するようになった……丁度今のお前のようにな」


 シャティアは悲しい表情を浮かべながら昔起こった出来事を述べる。それはまるで今の世界で起こっている魔女達の現象と同じだった。ファンタレッタは何か嫌な予感を感じ、自然とシャティアはから距離を取った。


「我は一族の長から裏切りの魔女を抹殺する役目を課せられていた。間違いを犯した魔女を正し、世界の均衡を守る役目だ……」


 次々と告げられる真実にファンタレッタの頭は追いつかない。自分達魔女の一族が母親代わりであるシャティアによって滅ぼされた?それでは自分がしている事は一体なんなのだ?これではただ繰り返しているだけでは無いか。そんな疑問が彼女の頭の中を埋め尽くしていく。そして、混乱している彼女にシャティアは更なる悲劇を伝えた。


「そしたらどうなったと思う?何と長までもが裏切り者の思想に飲まれ、一族全体が自分達は支配者となるべきだと訴えたのだ……」

「……ッ、母さんは、それでどうしたんすか?」


 ようやく喋れるようになったファンタレッタは答えなど聞きたく無いと思いながらもそう尋ねてしまった。尋ねずにはいられなかった。自分がずっと求めていた物が今目の前にあるのだ。それを知ろうとするに決まっている。そしてシャティアは、ニコリと残酷に微笑んだ。


「殺したさ、一人残らずな。我は自分の役目を全うした。そういう風に育てられたのだから」


 何て事の無いように、先程のファンタレッタのように感情の籠っていない声でシャティアはそう言う。その澄んだ瞳は何処を見ているのか、ファンタレッタの事を見ているようで向こう側の雲を見ているようでもある。


「それから我は何も知らない六人の赤子を連れて外の世界に出た。真実を告げず、新しい魔女として生きてもらう為に」

「それが……あたし達……」


 告げられた真実が信じられないようにファンタレッタは首を横に振るう。しかしシャティアの冷たい瞳がこれは現実だと訴えてくる。逃げ場など無かった。これが事実なのだ。そしてシャティアは指先をファンタレッタへと向ける。


「だがファンタレッタ、お前はそちら側だったな」


 冷たい言葉と共にファンタレッタに突風が襲い掛かる。かつてシャティアが裏切りの魔女達に向けた物と同じ殺気。それが今ファンタレッタへと襲い掛かって来ていた。


「ぐぁっ……!」

「我はこの手で何人もの同胞を殺した。世界の均衡を保つ為に、一個人の魔女が力を持ち過ぎないように……お前達のような裏切りの魔女は殺さなければならない。それが我の役目だ」


 シャティアの瞳には光が無かった。ただ冷徹に機械のように腕を払い、魔力の衝撃波を放つ。吹き飛ばされたファンタレッタは空中で回転しながら下降し、姿勢を整えてすぐさま迎撃の準備をする。だが目の前に居たはずのシャティアの姿は消えており、気が付けば背後に移動していた。


「何故我が眠り歌という魔法を習得しているか分かるか……?」

「あぐっ……はっ……ぁ!」


 ゴキンと鈍い音を立ててファンタレッタは魔力の塊をぶつけられ、再び吹き飛ばされる。だが自身の耳元からはシャティアの声が聞こえており、すぐ傍に居る事が分かった。シャティアは何の感情も込めず、何て事の無いように質問する。


「魔女を完全に殺す為だ」


 魔女の身体は魔素と強く結びついている。故に大量の魔力を保持する事が出来るし、歳を取るスピードも遅い。彼女達は魔力と一体化する事によってその特異な身体を更に高次元の物へと昇華させているのだ。だからこそ、逆にその魔力が、その魔素自体が直接消されるような事があればその身体は崩壊し、完全に生命を終える。眠り歌は魔女を完全に殺す為に作られた抹殺用の魔法であった。


「あがっ……がぁぁッ……!?」


 無数の光が飛び散る。銀髪の少女の寂しそうな歌が流れ、ファンタレッタの身体を光が包んで行く。そしてその瞳から光を失うと、その身体は光の粒子となって崩壊していっった。まだ意識のあるファンタレッタは苦しそうにもがき、身体をくねらせた。


「あああァァッ!! ……あ、あたしを倒したところで、無駄っすよ……母さん! いずれ皆悟る。あたしら魔女こそが世界を支配する者なんだって……! いずれ皆、母さんを裏切る!!」


 身体が崩壊していながらもファンタレッタはそう訴えた。自分を消滅させたところで全てが解決する訳ではない。自分のちょっとした細工で魔女達が人間を憎むようになったように、また些細な事で魔女達は反逆を行うと。そんな言葉を聞いても、シャティアは寂しそうな瞳を向けながらファンタレッタの事を見つめ、ポツリと言葉を零した。


「だったら……我はまた繰り返すだけさ。同じことをな」


 最後にシャティアはそう答え、同時にファンタレッタの身体も完全に消滅した。残された光の粒子を横目に、シャティアは逃げるように背を向けた。


 こうして事件は終息を迎えた。街を騒がせていた怪物は騎士団によって討伐された事になり、黒幕であるファンタレッタもシャティアが倒した事から真実は隠蔽される事となった。本来なら教会の上空で激しい戦闘を行っていたシャティアも問いただされるのだが、コーサルが弁護してくれたおかげで事なきを得た。全ては終わった。大切な何を失い、それでも世界は時を刻んで行く。


「これからどうされるんですか?シャティファール母様」

「とりあえず屋敷に戻りますか?ロレイドさんも心配してるかも知れませんよ」

「さぁてな……とりあずのんびり行くさ」


 道を三人の少女達が歩いている。一人は綺麗な金色の髪をツインテールで纏めた人形のような子。もう一人は長い紫色の髪を伸ばした美しい少女。もう一人は銀色の長い髪に澄んだ瞳をした少女。彼女達はこれと言った目的も持たず、何処かに向かって歩いて行く。

 魔女は生き続ける。過ちを犯しながらもそれを正す存在によって修正を続けながら、それでも生き続けようとする。
















 緑が生い茂っている草原に一人の少女が木の下に座っていた。栗色の髪の毛をツインテールだ纏め、まん丸の瞳に小動物のような可愛らしい顔をした少女だった。そんな彼女は何やら難しそうな本を読んでおり、ページをめくってはうんうんと唸っていた。

 そんな少女の元にもう一人雰囲気が違う少女が近づいて来た。ローブを纏い、美しい銀色の髪を垂らした少女。彼女が近づいて来た事に気が付き、栗色の髪の少女は急いで立ち上がると駆け足でその少女の元にやって来た。


「お帰り! シャティア!」


 栗色の髪の少女がそう呼ぶと、銀髪の少女シャティアははにかみながら顔を頷かせた。懐かしき村に戻り、どこか雰囲気も柔らかくなっている彼女は久々に幼馴染に会えたからか表情を緩ませていた。


「ああ……ただいま。モフィ―」


 シャティアは重いローブを解きながらそう返事をする。

 久々に聞いた幼馴染の声は変わっておらず、相変わらず子供らしくない口振りだった。しかしモフィ―はそれが安堵したように笑顔になった。


「王都はどうだった? 色んな人が居た? 魔法は覚えたの? どうだった?シャティア」

「ああそうだな。王都にも行ったし、色んな所にも行った。懐かしい人にも会ったし、面白い魔法も見れた……」


 モフィ―は早速気になっていた事を尋ねる。王都に行ったシャティアがどんな生活を送っていたのか、どんな魔法を覚えたのかと、とにかく全部が知りたかった。そんな相変わらずのモフィ―の質問攻めに戸惑いながらもシャティアは一個一個丁寧に説明した。


「お前の方こそ魔法の勉強はどうなんだ?ちゃんと魔法書は使ったのか?」

「もっちろん! 少しは私も魔法使えるようになったんだよ! 見ててシャティア!」


 シャティアが尋ねるとモフィ―は自信ありげに力強く答え、そう言うと少し離れて覚えたての魔法を披露し始めた。まだ荒のある魔法と呼ぶにはいささか不十分な物だが、それでもモフィ―にしては随分真面目に取り組んだ事が分かる魔法であった。シャティアはそれを見て何故か自分の事のように嬉しくなり、モフィ―の近くに寄ると注意すべき事を指南し始めた。するとモフィ―は注意される事が嬉しそうに微笑んだ。


「えへへ! これからも魔法教えてね。シャティア!」

「ああ、もちろんさ」


 混じりっけない純粋な笑顔を浮かべながら言うモフィ―の言葉に、どこか寂しい瞳をしながらも元気づけられるようにシャティアも笑顔になり、そう答えた。

 こうして一つの物語が終わる。村人の少女に転生した元魔女は、故郷の村へと戻り、平和な時を送る。せめてこの平穏が長く続く事を祈りながら、彼女は幼馴染との魔法の勉強を楽しんだ。





最終話です。


皆様のおかげで最後まで続ける事が出来ました。今までお付き合い有難うございました。

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