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4話:スケルトンとの戦い



 次々と飛んで来る終わりの無い雷撃をシャティアは何処か達観した目をしながら避け続けていた。右へ左へと避け、子供の身体では補えない身体能力を浮遊魔法の移動でカバーし、時折避けきれない雷撃を魔法の壁で防ぐ。

 シャティアにとってソーサラースケルトン達の雷撃を避ける事は造作の無い事であった。だが、彼女の悩みはそこでは無かった。


「そい」


 雷撃を避ける合間にシャティアは指を振るって同じ様に雷撃を放つ。するとそれはソーサラースケルトンの一体に当たり、一瞬で沈黙させてしまった。この調子でシャティアは先程から何度も合間を縫って雷撃を放っているのだが、いっこうにソーサラースケルトン達が減る様子が無かった。それ所か最初は二十しか居なかったスケルトン達は今や四十程の数になっており、むしろ増えていた。


「やれやれ、幾ら倒してもキリが無いな……」


 倒しても倒してもちっとも減らないソーサラースケルトン達にシャティアは面倒くさそうに表情を曇らせた。

 この調子では村人達が自分が居ない事に気がついてしまう。シャティアはそう思ってこれ以上時間を掛けるのは不味いと判断した。だからと言って逃げるのも何だか釈然とせず、彼女は困ったように空を切った。一度上空まで避難し、休憩時間を取る。


「どうしたものかね。魔力切れを起こす心配は無いが……それでも数がいっこうに減らんのでは我も流石に疲れるぞ」


 上空で腕を組んでソーサラースケルトン達を見下ろしながらシャティアはそう考え込んだ。

 やはり根源を絶つのが一番楽なのだろうが、その根源の居場所が分からない。流石のシャティアもそれでは動けない為、どうしたものかと顎に手を置いた。首を傾げ、銀色の髪を揺らしながら下を覗いてみる。するとそこにソーサラースケルトン達の姿が無かった。


「んん?」


 思わず落ちそうになって慌ててシャティアはソーサラースケルトン達の姿を探す。すると彼らは岩場の一カ所に集まっており、そこで杖を振り上げて魔力を込めていた。それを見てシャティアに額に思わず汗が流れる。


 次の瞬間、辺りが光に包まれた。一瞬世界が無音になり、続けて雷が落下したような激しい音が響き渡る。そして光が消えると、ソーサラースケルトン達は杖を掲げて巨大な雷の球を形成していた。

 融合魔法。複数の魔術師達が同じ魔法を唱える事で魔法を強力にする方法。その威力は人数が多ければ多い程高くなる。そして四十人近くのスケルトン達が集まったその魔力は当然、凄まじい物となる。


 シャティアに向けて雷の球が放たれた。動きは遅い。避ける事は可能。だがこんな何処に落ちるかも分からない物を放っておくのは不味い。最悪村の方にも被害が行くかも知れない。そう思ったシャティアは強靭な魔法の壁を作り上げ、雷の球を真正面から受け止めた。


「ぐ、おぉッ……!?」


 魔法の壁と雷の球が衝突すると同時にシャティアの身体に凄まじい負荷が伸し掛る。流石に四十人が集まった分の魔力だけはあり、その威力は凄まじい物であった。シャティアは徐々に押され始め、後ろへと引く。魔法の壁の強度も段々と弱り始め、ビキビキとヒビが入る音が響いていた。だがシャティアは耐える。圧縮させ、その雷の球を無力化させる。


「……ッ、と!」


 強大な魔力をそれよりも強大な魔力で包み込み、魔法の内部魔力を消し去って行く。そうすると原動力を失った雷の球は少しずつ小さくなって行き、やがてプツンと消えてしまった。それを確認してシャティアはどっと疲れたように項垂れ、小さくため息を吐いた。


「ふぅ……中々面白い事をやってくれるじゃ無いか」

「ギギギッ……!!?」


 流石にソーサラースケルトン達も魔力切れか、追撃をするような事はしなかった。むしろ自分達の最大の一撃すらも無効化された事に酷く慌てた様子をしていた。シャティアはおもむろに手の平を開き、そこに小さな魔力の球を出現させた。


「では、次はこちらの番だ」


 ニヤリと笑みを浮かべてシャティアは魔力の球に更に魔力を込め、先程の雷の球よりも巨大なエネルギーを形成する。そして腕を振り下ろすと、真っ逆さまにソーサラースケルトン達の居る方向と投げ飛ばした。

 ソーサラースケルトン達はそれぞれ魔法の壁を形成して防ごうとするが、圧倒的な魔力波によって壁は一瞬で掻き消され、ソーサラースケルトン達も同様に吹き飛んで行った。


「……いい加減全滅してくれると嬉しいんだがな……ああ、まぁそうだろうな。そう簡単には負けを認めてはくれないか」


 辺りの岩や砂利も吹き飛び、そこにはちょっとしたクレーターが出来上がっていた。だが周りからは木々の間や草むらからワラワラとソーサラースケルトン達が再び集まっており、シャティアの前には先程と同じ様にスケルトン達の集団が出来上がっていた。

 それを見てシャティアは疲れた様にため息を吐く。すると、突然ソーサラースケルトン達が道を開け、そこから一体の巨大なスケルトンが姿を現した。


「ほぅ……ロードスケルトンのお出ましか」

「グゥゥウ……」


 他のスケルトン達も黒ずんだ骨をしており、ドス黒い雰囲気を醸し出した鎧に、魔物の目玉らしき物が埋め込まれた杖を持ったスケルトン、ロードスケルトン。言わばスケルトン達のリーダー的なポジションに属する特別なスケルトンだ。シャティアはそれを見て目を細めた。


「お前が指示を出している……という訳では無さそうだ。一時的にスケルトン達の統率を取っているだけか?」


 最初はスケルトン達に指示を出しているのがロードスケルトンかと思ったシャティアだが、魔物であるロードスケルトンがそんな指示を出せるとは思えず、ロードスケルトンもまた操られている魔物なのだと判断した。そして何を思ったのか、そう考えを纏めるとシャティアは何かを察したように笑みを浮かべた。


「という事は、お前を倒せば指揮者の所に行けるという訳だ」

「グゥオオオオオオオオ!!!」


 シャティアがそう言うと同時にロードスケルトンは雄叫びを上げて杖を振り上げた。ギョロリと目玉が動き、怪しい紫色の光を放つ。すると上空に向かって鋭い魔力波が放たれた。シャティアはそれを受けて僅かに姿勢を崩すが、落下する程では無い。すぐに立て直すと自身も同じ様に腕を振るって魔力波を放った。


「ふっ……随分なご挨拶だな!」


 放たれた魔力波をロードスケルトンは手をかざすだけで受け止める。それを見てシャティアはほぅと感嘆の言葉を漏らした。

 明らかにソーサラースケルトンとは段違いの魔力を保有している。極めつけはスケルトンが所有しているあの杖。恐らく何らかの魔法を掛けられた特別な杖なのだろう。それで魔力を底上げしているのだ、とシャティアは推測した。ならばまず狙うのはあの杖。そんな事を考えているとロードスケルトンの方が先に動き出した。


「グォァアアアアアアア!!」


 けたたましい咆哮と共にロードスケルトンがかざした杖が目玉を血走らせ、眩い閃光を放つ。すると無数の紫色の雷撃がシャティアを襲った。瞬時に魔法の壁を形成するが一撃だけシャティアは肩に擦る。幸い服が裂けた程度ではあるが、シャティアはその一撃を喰らって僅かに唇を噛んだ。


「やれやれ、母上から貰った大切な服なんだがな……ボロボロにしてしまったら後でどやされる」


 怪我をする事よりも後で母親から怒られる方が怖いシャティアにとって服の損傷はもっとも危惧すべき事であった。魔法で服を元に戻す事は出来ない為、ボロボロにしてしまえば取り返しの付かない事になる。シャティアは破れた肩の部分を抑えながらロードスケルトンから距離を取った。


「高く付くぞ?これは」

「グォォオオオオオオオオ!!」

「ああ、心配するな。弁償金はお前達の指揮者から頂くとしよう」


 シャティアは空いている片手だけ振り上げ、三つの水の球を形成した。それを自分の周りに浮かばせながらロードスケルトンへと接近し、一つ目の水の球を放つ。ロードスケルトンはそれを杖で弾き飛ばし、更に呪文を唱えてシャティアに雷撃を放った。しかしシャティアは二つ目の水の球でそれを防ぎ、最後の水の球をロードスケルトンへと叩き込む。


「本当は火魔法の方が効果があるんだが、森が焼けては困るからな」


 水の球の衝撃で岩場まで吹き飛んだロードスケルトンを見ながらシャティアはそう呟き、続けて片手を振ってロードスケルトンに直撃して水の球を弾かせる。飛び散った水は辺りの地面に染み込んで行った。


「さて、少し面白い事を教えてやろう。先程我が放った三つの水の球だが……あれには特別な魔法が掛けられている」


 地面へと降り立ったシャティアはそう言って周りのソーサラースケルトン達に顔を向けた。ソーサラースケルトン達は各々杖を持ち、ジリジリとシャティアに近づきながら逃げられないように囲んでいた。にも関わらずシャティアは逃げようとする所か何やら妙な解説をし始める。


「水魔法は数ある魔法の中でも特に自由度の高い魔法でな……一番の利点は形成した水をその後も自由に操作出来るという点だ」


 手を差し伸べながらまるで授業でもしているかのようにシャティアは水魔法の説明をする。ソーサースケルトン達はその意味不明な動作に疑問を抱くが、そんな事は気にせず敵であるシャティアを倒そうと杖に魔力を込める。

 気がつけば岩に寄りかかっていたロードスケルトンも体勢を立て直し、ソーサラースケルトン達の輪に混じって杖を掲げていた。


「先程の水の球は飛び散って辺りの地面に染み込んだ。さて、この意味が分かる者は居るかな?先に注意しておくが、足下に気をつけろよ」

「ッ!!?」


 その一言で気付けたのはロードスケルトンだけだった。彼はすぐさま掲げていた杖を引っ込めるとその場から跳躍して岩の上へと避難した。その直後に地面から突然鋭い刃の形を形成した水が出現し、スケルトン達を貫いてそこに針の山を作り上げた。


「ギィァァアアッ……アァ……!?」

「おっと、ロードだけは気付いたか。流石だな。だがお前にも注意しておこう。飛び散った水はお前の鎧にも付着しているぞ」

「グォッ!!?」


 シャティアはそう言って指を軽く振った。その瞬間、岩の上に居たロードスケルトンは付着していた水が刃に変わった事で貫かれ、うめき声を上げてその場に崩れ落ちた。

 針の山で貫かれているスケルトン達も悲鳴を上げて苦しんでいる。痛みは無いはずだが、貫かれているのと骨が損傷しているせいで身体を維持出来なくなって来ているのだろう。シャティアはそんなスケルトン達の無惨な姿の合間を縫い、岩の上に居るロードスケルトンまで歩み寄った。


「ふぅ……これでようやくまともに会話が出来るな。まぁスケルトンと意思疎通が出来るかは分からないが、ひとまずお前」

「ググ……ゥ……」


 ソーサラースケルトンが現れないのを見てようやく勝負が付いたと確信したシャティアは岩の上に飛び乗り、ロードスケルトンを見下ろしながら話し掛けた。その顔はまるで良い実験台でも見つけたかの様に 清々しい表情をしている。そして彼女は少女の笑顔を見せながら口を開いた。


「指揮者の元へと案内してもらおうか?ロードならそれくらいの事は出来るだろう」


 完全に勝機を失ったロードスケルトンは弱々しく頷く事しか出来なかった。魔物達は弱肉強食の世界、弱き者は強き者によって喰われる。今回は、シャティアの方が強者であった。



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