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フィオレブルーム 学園編  作者: アンヌ
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主人公と厄介者

第1章

1話 主人公と厄介者


ここは街の大部分を占めていると言っても過言ではないこの街唯一の学園だ。

人が100人以上横に並んで通ることができるのでないかと思わせるほど大きい門の先には玄関まで続く石畳の道がある。

その道の周りには生き生きと生い茂る木や満開に咲いた花が見え、ところどころに人の手によって仕切られた花壇も存在する。…が俺は正直花壇の花よりもその周りに咲く野花が好きだ。花壇の花よりも小さいが太陽の光を全身に受けた生命力を感じるからな。

また、学園の中央には大きな噴水があり、学園の特徴の1つとして存在する。俺は外で食べるのは苦手だかここで朝食をとるやつも多いようだ。

そして、なんといっても学園の象徴は塔のてっぺん近くにある大きな時計である。この時計は設立当初からあるのでもうかれこれ数十年たつのだか、止まったことはないという。

はっきりとは見たことないが鳥や花などの柄が細かく刻み込まれているそうだ。この時計塔から見る景色からは学園だけでなくこの街全体を見渡すことができ、いざと言う時は非常に便利な場所だ。



そんな学園の1室に俺はいる。


現在の時刻は午後5時、朝の学園ならではの賑やかさはなくとても静かだ。まぁこの場所はいつも静かなのだか…丁度夕暮れが綺麗な時間帯で窓から差し込む夕日の光がまぶしく感じる。

ふと部屋の中にある鏡に目をやる

数々の書類や本、さらにはアンティークな家具やどこぞやの国が使いそうなティーセットまである

そんな中、不釣り合いなほどやつれた人物、…つまり俺がいた

鏡に映る俺は茶髪がボサボサになり_これはくせっ毛だと言われるが整えれば直るんだと信じることにする_の下にのぞかせる黄色い目の下にはいかにも寝てませんというようなクマがくっきりと刻みこまれていた

ぐちゃぐちゃに着崩された制服からもはたからみれば俺が疲れ切ったブラックな企業に勤めるサラリーマンかなんかと勘違いするだろう

まぁ、実際そこまで老けてはいない…と信じたいが…


「はぁ…」


普段であればため息ななどは人前ではつかないのだ

むしろ本来ならばぶっ倒れてもおかしくないかもしれないな

ここら一週間のことを振り返るだけで再び疲労がこみ上げてくる…

鏡の中の自分の顔は不思議と疲れ笑いが出ていて、不気味さを感じてしまった

自分の顔なのにな…と内心では苦笑いをしながら


恐る恐る鏡から目を離しこの部屋で唯一俺が使用する机に目をやる…

その机は木製だか可愛らしい花や鳥の柄が彫られており、男の俺は若干使うのを躊躇ったこともある


今度は目線を机の上に移す

…とさらに現状は悪化していた、


「…もう、いい加減にやめてくれ…」


さすがに限界がきていた

それは肉体的にも、精神的にも、、、

疲れて掠れきった声に気付いたのか、厄介なモノはこちらを見、動きを止めた


そいつはなぜ俺がそんなことを言ったのか理解できないというきょとんとした顔で俺を見つめる


そいつの整った顔の中に存在する鋭い目に見つめられるのも嫌だったので口を開きかけた

…とその時

そいつは銀の髪を揺らしながらやれやれといったわざとらしい動作でため息をついた


どうしてお前がそんな態度をとるんだ…

俺の疲労の原因は全てこいつにあると言ってもいい

_のだが…分かってないのか?

今度こそ口を開く…半分諦め混じりで


「…もう何か言いたいならいえばいいだろ」

「…そんな顔しちゃモテないぞっ!☆」

「いやお前のせいだからなっ!?」


ビクッと体を強ばらせこちらの顔を伺うそいつに俺は再びため息を大きくついた


「やっぱり分かってなかったのか…」

「なっ、何がだ!?僕に分からないことなんてないぞ!?」


そう言ってふくれっ面をしているのだが、整った顔は崩れる事がない

…じゃなくてだな

俺はそいつの手に抱えている赤い入れ物に目をやる

目の錯覚かと思わせるような早さでそいつは黄色っぽい小さな棒を手に取っては口に運ぶという動作を繰り返していた


「…とりあえず手を止めろ」

「ふぁっておいひいんだから…あぁッ…!」


俺はこいつの手に抱えている大量の細長い棒…ポテトフライを問答無し奪い取った。先程までのふくれっ面は別に怒ってる理由ではなくこれが原因だろう。

未だにモグモグと口の中で噛んでいるのか頬の膨らみは小さくなることは無かった。


奪い取った大量のポテトフライの入れ物を抱え、再び部屋の中を見渡す

目に映るのは食べ散らかしたポテトの入れ物の山、つまりはゴミの山だった。


俺は眉間に皺を寄せ、再び心の中でため息を吐いた。

ここ一週間俺はゴミ掃除とこいつのイタズラの相手…そんな毎日が続いている。


ポテトフライを取り上げたことで恨めがしく俺を見てくる、目の前にいるこいつの名前はランという。一週間ほど前から俺についてまわる自称"ストーカー"…らしい。もちろん俺はこいつのことなんか知りもしない。


一週間前に出会うまでは。


______


もうそろそろ日が暮れる。辺りが静まりかえっている中自分の足音だけがコツコツと響き渡る。

ただの廊下だというのに無駄に綺麗な大理石で作られた床に目をやる。半分鏡の役割も果たしているのではないかと思えるほど綺麗なそれはいくつも並ぶ大きな窓から夕焼けの光を反射させてオレンジ色に輝いていた。

その輝きに魅せられたかのようにぼおっとなり、ひたすら目的の場所まで歩いていたがふと足を止める。

一つの黒い影が見えたからだ。

顔を上げると全く気づかなかったが人がいたようだ。いつもなら挨拶ぐらいしたのだがその異常さに意識が向いた。

銀色の髪のそいつはグレーがかった薄手のロングコートを羽織り下は黒いシャツに黒いズボンだった。

格好としてはどこにでもいそうだ、だかしかし、それが異常だったのだ。

なぜならココは学校だというのに。

教師…では無いよな、もしかしたら誰かの知りあいか?

そんなことを考えているといつの間にやらその人がこちらを向いていた。恐る恐る声をかける。


「あの、…ここ関係者以外立ち入り禁止なんですが…」


「…やっと見つけた、胡桃…だね?」


「えっ?」


俺が言い終わる前に口を開いたその人の言葉に意識がいく

一体誰だろうか?と再び考えるがいくら記憶を巻き戻しても顔見知りでもない…はずだが…何かもやもやするような気持ちになった


俺が思考を巡らしているとそいつは再び口を開いた。


「やぁ!君が胡桃ちゃんだね!探していたよ。もう長旅だったんだよ〜、ここに来る途中で…」


_やはり人違いでは無いようだが、…すごい気さくに話しかけてくるな…


「あの…どこかで知り合いましたっけ?申し訳ないんですけど忘れてしまって…」

「…で銀色の物体が飛び出してきたんだけど僕はそれを軽々と避けたんだよね!それから…」

「あの…」

「今度は可愛らしい少女が道に迷っていてね。僕もこの辺は詳しくなかったんだけどなんとか2人力を合わせてね…」

「…おい」

「無事少女の求める場所へと辿り着いたんだ!あの栗色の髪の子…もう1度会いたいな…」

「...おいったら」

「まるで少女との出会いは奇跡!!いや、運命と言うべきか...」

「…話を聞けぇぇぇえ!!!!」

「ひぃぃぃぃ!!!??」


ドンッ…!!と壁に手を打ち付けてしまった。


まずい、俺としたことが取り乱してしまった。

少し手が痛かったが元の位置に戻し平静を装い尋ねた。


「...で、あんたは何者なんだ?」


よほど驚いたのかいかにも驚きましたよと言わんばかりの両手を横に大げさにあげた姿はとてつもなく胡散臭い。


「すまない、自己紹介が遅れてしまった。僕の名前は蘭。胡桃ちゃんのストーカーだよ。」


ふむふむ、ストーカーだったのか…ストーカー…って


「ええええええぇぇぇ!?」

「?どうしたんだ、そんなに驚いて?」


どうもこうもないぞ、普通ストーカーってこっそりやるもんじゃないのか?こんな正々堂々と言っちゃっていいもんなのか!?少なくとも俺はこんなストーカー見たことないぞ!?


ぐるぐるとこいつの言葉に思考が重なり合ったが言葉に出すことができたのはこれだけだった


「おまえ…バカなの?」

「な、なんだとぉ!?」


怒らせてしまったと焦ったが、起こったというよりはガーンと衝撃を受けたこいつの表情に安堵する。


…まあ、流石に初対面でバカはないな、失礼だったなと思い、言い直すことにした。


「あ、すみません間違えました。アホですか?」

「アホやない!!」


今度はすぐさまツッコミを入れてきたな…

と思いながら目の前のこいつを再度見つめてみる。

パッと目に付く銀色の長い髪は夕日に照らされてキラキラと輝き、純粋に綺麗だ。整った顔立ちはどこか中性的で一見女と言っても通用するのでは…と思ってしまったが鋭い目がそれを打ち消してしまっている。その中に光る赤色の目はどこか憂いを帯び、グレーのコートがそれを一層きわだ出せている。背は俺よりちょっと小さいか…ぐらいだかあまり変わらないな。腕をばたつかせながらポコポコと怒るその姿は子供っぽくみえ、俺よりも若いのでは?と思わせる。…が実際は何歳なのだろうか?

と思いつつ、こいつが暴れるのを右手で頭を抑えることによって静止する。


「全く、馬鹿にしては行けないぞ!僕はとある遂行な目的があるのだよ」


そいつは腕を組んで偉そうに話すが、俺は何やら嫌な予感がしたので出来れば関わりたくない。


「...あ~と、、蘭?だっけ?目的だがなんだか知らないが、、、悪いんだけど俺はストーカーは受け付けて無いのだが…?」

「ふむ…まぁ、ストーカーというのは言葉のあやだ、僕が勝手に胡桃ちゃん付き纏うだけだからな」

「それをストーカーっていうんだよ!!ってかちゃん付けはヤメロ変質者!!」


はぁ、、変なやつに絡まれてしまったな

俺は人生の中で初めて本当のため息をついた…


俺はとりあえず学園の外へと追い出すべく、そいつの腕をつかみ校門へと向かった。

変質者ではないぞ!という声が聞こえたが耳を貸す必要もないだろうと思い

その後は変質者として学園の外へぽいっと追い出してやった。俺は学園の規律を見出すやつは容赦ないからな。

……いや、追い出したはずなんだが…


「おい、…おい!」


ふと現実へと意識を移す。見ると先程まではゴミ屋敷と間違えられてもおかしくないほど部屋にポテトフライを食べたあとの容器が散らばっていた。

だが、それらは俺の持っているポテトフライ入容器以外綺麗さっぱりとなくなっていた。俺が回想に入ってからまだ5分もたっていないはずた。まるで魔法のように…


…というか、"魔法"なのだ。

目の前に得意げにドヤ顔をする蘭はビシィッと机を指さす。そのアンティーク風の机の上に置かれているのは大量の書類。


「どうだ?全て完璧にこなしたぞ??」


「おぉ!ほんとに1日で全部終わらしたのか…!」


この書類は細かいサインをしなければならなかったがそれは1000枚以上あったはずだ。

…もちろん俺の筆跡で


そう、俺が唯一こいつのストーカー行為を許した部分がこれにある。

こいつは"魔法"とやらを使い全ての仕事を完璧にこなしてしまうのだ。


俺の純粋な驚きに蘭は気をよくしたのかフフンとはなをならす。


「まぁ、僕にかかればこんなものだな。全く…こんなに仕事を溜め込むものじゃないぞ~?そんなんだから眉間のシワが濃くなる一方なんじゃないのか?」


こいつ…俺がさり気なくきにしていることを…


「、、溜め込んだ文句なら他のあのこに言ってくれ…」


そもそもこれは俺の仕事には含まれていないのだ。

しかし、この原因をつくったあのこはいない、、…のはまぁ、理由があるので強く咎めることができないのが難だ


「まぁ、これでやっと全部終わったな」


ここ1週間溜め込んでいた作業を俺1人でこなすのは無理があったかもしれない。蘭がいてくれたお陰で大分作業が捗ったのは認める。


…この一週間イタズラなんかも多かったが…おおめに見てやるか…



ゴクン


…ん?

何かを飲み込んだ音が正面から聞こえたような。


目の前の蘭を見ると何やら見覚えのある赤の中に黄色のでマークが描いてある入れ物を手に持っていた。

いつの間に…

ふと嫌な予感が脳裏をよぎり書類に目をやる


「って、あぁ!!」

「!?ど、どうしたんだ!??」


俺としたことが重要なことみをとしていたようだ…

大事な書類にだか無造作にガシッとつかみ蘭の目に入るように持っていく。その妙にヌメリのある書類を、


「…見てみろよ!書類が油でギットギトじゃねーーか!!」

「えぇ!?…まぁ構わんじゃないか!言われた通り仕事は終わらしたんだ!」

「構わなくねーよ!これ今日提出だぞ??いつもの魔法とやらでこのヌメリ消せよ!ついでにこびりついたポテトフライの臭いも!」


「残念だか…それはできない…」

「な、なんで…」


いつにもなく初めて見るそいつの深刻な表情に冷や汗がでる…見るとそいつの顔面が徐々に青白くなっているのではないか…!?

まさか魔法を使うことによって代償がなんかが生じるのか…!?


「それは…」


それは…??

ゴクリと喉が鳴る。この一週間無理がある大量な仕事ばかり押し付けて来たも同然だからな。...と今までのことを振り返る。

それで無理をさせてしまったんだろう…俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

…その代償を俺が受けるのは当然か

そう思いこいつの次の言葉を待つ。



「それは…。

…お腹が空いて力が出ないからだ」

「、、、...は?」

…は?

「は?じゃないぞ!僕は物凄くお腹が空いている!!細くて!長い!黄色い棒が食べたいんだ!」

「おまえさっきまで食べてただろ!?ほんとについさっきもなんか飲み込んだ音聞こえたぞ!」

「アレはエアで食べていたのだ!つまり空気をポテトフライに見立てて食べていたんだ!」


「訳分からないことを言うなって!?」

「頼むよ〜、胡桃ちゃんの棒でもいいからたべさせてよ〜」

「誤解を招く言い方をするな!!」


俺の腰にしがみつくそいつをずるずると引きずる姿は周りから変な目で見られること間違いない光景だろう…ここにあのこがいなくて良かった…そう思いながら手に持っているこれをあげた方がいいのだろうと思った瞬間…


「…なにしてるの??」


…ドアが開く音とともに俺の人生がある意味終わったような感覚に陥った


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