ガガガ☆マンガール『ステータスアイ』
「まって、こいつが年齢不詳だけど……レンは歳を鯖読んでたりはしないよね」
「いや、してないよ」
「転生者ってのは大半が大人で最盛期の肉体をもってこの世界に来るから、基本的に精神的には大人ばっかりなんだよね」
「レンは違うよね! 見た目はくぁいらしい子供だけど、中身は大人とかじゃないよね!」
「落ち着け! 何を焦ってんだ! 話が脱線してんぞ!」
「大事なことだから!」
テレサのやつ、涙目で俺の肩をブンブンと揺さぶってくる。そんなに重要なことなのか。
「その子は正真正銘の15歳。それだけは保証するよ」
「何でそんなこと言いきれるの!? レン! 正直に言って!」
表情が必至過ぎる。もう何が何だか。
「わかることが私のチートなんだよね。煉瓦の持つスタン・トのように私は目に映るもの全ての情報を可視化できる『ステータスアイ』。人を見れば健康状態から家族構成、身長体重、過去のことまですべてがわかる。例えば煉瓦は身長161cmとか、好物は果物類全般とか……ファーストキスは七歳の時両親がしているのを見て興味本位で妹と、」
「やめろォ! 妹とのことを蒸し返すな! あ、違う! そんなことしてない! 嘘だからなテレサ!」
「ちょ、その話詳しく!」
「やめて! やめてテレサァ! 嘘だから! 全部こいつの出まかせだから! だからそんな目をしないで!」
今度は俺が必死になってテレサを制止するも、体格の差で押し退けられてテレサはまるでおもちゃを見つけた子供のように輝いた眼でマンガールから話を聞こうと詰め寄っていた。
何だよ。さっきまであんなに険悪だったのに。
俺は現実から目を背けるために耳を塞ぐ。
「違うんだ……あれは事故なんだ。発起人は俺じゃない。妹に迫られたんだ。あいつの好奇心に殺されたんだ」
黒歴史ともいえる思い出したくない過去を思い出してしまい自責の念が湧き上がる。
チラッと二人を横目で見るとテレサはフンフンとうなずきながらマンガールの話を聞いている。
作り話だよ! そいつはストーリーテラーだから作り話だよ!
耳を塞いでるから何を話しているかわからないけど絶対に俺の恥ずかしい話をしてるに決まってる!
なんて思いながらちらちらと見ていると唐突に二人は手を大きく振りかぶり、勢いよくハイタッチをかました後に力強く握手を交わした。
「待てよ! 何だよ! さっき互いに殺意向けてたやつらが何強敵と書いて友と呼ぶ的なスキンシップ交わしてんの!? もうわけわかんない」
「いやぁ盛り上がった盛り上がった」
「レーン。妹とあんなことをするなんて、案外チャレンジャーなんだね」
「違う! 妹の話はするな! 全部マンガールの作り話だ!」
「いや、私にしか知らないレンとの二ヶ月のことを事細かに知ってた。最初はストーカーかと思ったけど、流石にレンとの出会いのことを話されたら信じるしかないわね。おそらくそのステータスアイとか言うので潜んでいるやつの素性をあぶりだせるから捕縛員をしてるのね」
「ご明察。私の詮索スキルは当代一でございます」
真面目ぶった話してんじゃねーよ! どんなにかっこつけようとも俺をネタに笑ってた事実、恨み続けてやる。
「さて、脱線した話を元に戻そうかな。煉瓦。今回転生者ってことが私にバレた。まあもともと捕まえるつもりはなかったからよかったけど。この先必ず君のことを狙う奴が現れる。転生者を狙う専門の賞金稼ぎがいるくらいよ。そうなった場合。お前の安全は保障できない」
「そ、それはそうかもしれないけど」
「じゃあ何? アンタに着いて行けば安全が保障できるってこと?」
「少なくとも、お前よりはね」
急に静まり返る場。あれ? 急に雰囲気が悪くなった。
「その理由。聞かせてもらおうかしら」
「私は国から認可を受けた転生者よ。私と一緒にいれば少なくとも国の保護の下にいることになる。テレサと一緒にいるよりはるかに安全になると言えるわ」
それは、まだわかる。文字通りマンガールが認められた異世界人と言うなら彼女と一緒にいたら国から狙われなくなるという考えもわかる。
「と言うより、何で俺にそんなことしようとするんだよ。別にお前にとっちゃ俺は捕まえる対象だろ?」
「……私もね。この仕事を長年やってる。捕まえてきたほとんどは魔王を倒そうと躍起になって悪さをしでかす大人ばっかり。でもね。お前は違う。本当に幼くて、魔王を倒すことよりテレサに認められることを一番に考える純粋な子」
「え、べ! 別にテレサに認められたいわけじゃ……魔王を倒したいとは思ってるぞ!」
「ふーん。私に認められたいねぇ。異世界に来た使命より私のことが一番なんだ。ふーん」
どこか嬉しそうな声で俺の頭に手を置いてくる。
くそ。マンガールの話は全部屈辱的だ。
「だけど、私がお前を見つけたように、必ず狙ってくる奴が現れる。かわいそうじゃない? 私と同じ境遇の子供が命を狙われるなんて」
それについて、俺はどう返事をしたらいいかわからなかった。
かわいそうなんていうな! なんて反論はできないし。すっごいかわいそうだから何とかしてなんてのも言えない。
言ってしまえば彼女は俺を見て保護欲に駆り立てられた。同じ転生者である自分が護ってあげないとと言う念を沸き立たせて、今回の騒動になったってことだ。
「本音は?」
「30年やってきたし、そろそろ人肌が恋しいというか、そろそろ後継者を育てたいなーなんて思って。丁度いいところにいい感じの子がいたからつい」
「ショタコン」
「お前にだけは言われたくないかな」
この場に変態しかいねぇ。




