ガガガ☆マンガール『平和的解決』
テレサは鎌、グリムリーバオを振り被る。対するマンガールは自分の側頭部に手を置いた。
「『マチェット=フライデー』」
置いた手を引き抜くと頭から巨大な鉈が引き抜かれる。
鎌と鉈はガキンと音を立てて火花を散らす。
「創造召喚系の人法なんて、珍しい物を使うじゃない」
「お前のには負けるかな。グリムリーバオ。斬り付けた物を爆発させる鎌だけど、二つに割かなきゃ爆発しないから、ただの鎌として見てもいい。そして! 『メタルクロー=ナイトメア』」
もう片方の手を頭に置いて今度はかぎづめを取り出し、テレサに斬りかかる。
しかしその手はテレサに届かず、テレサがマンガールのどてっぱらに蹴りを入れてマンガールは俺の方向に転がってくる。
こいつら、異世界だって言うのになんて野蛮で肉弾的な戦いをしているんだ。
「カッは! 容赦のない蹴り……流石テレズス・ビーネ・テスタルーサ。生半可な覚悟じゃ太刀打ちできないかな」
「……アンタはレンに酷いことをした。生半可なお仕置きじゃすまないわよ。二つに割かなきゃ爆発しないって言うこの鎌、爆発させてあげる」
ゆったりとこっちに向かって歩いてくるテレサが鎌をゆっくりと振り被る。
このまま行くとマンガールは文字通り真っ二つのスプラッタで爆殺されることになる。
俺はすぐにマンガールの前に出て手を広げる。
「ストップ! ストップテレサ! ステイステイステーイ!」
「退きなさい」
「退かないよ。ダメだって。暴力はダメだって!」
「何言ってるのよ。そいつは君によくわかんない刃物を突き付けて挙句の果てに護ってあげるとか言って一緒に来いって言うショタコンをこじらせた変態野郎なのよ。生きてる価値無し」
こいつ自分のことを棚に上げて他人をショタコンと言うか。
「マンガールも! 話が突飛で何にも接合性ないから! 刃物を向けたけど、しまったってことは別に俺に危害を加えるとかじゃないんだろ!? 一回向けたけど。それに異世界人の俺を護ってやるって言ったってことは俺のことを思ってくれてのことなんだろ? それはありがたいから、話し合いで解決しよ。な!」
「……私も焼きが回ってたのかな。確かに言ってること、むちゃくちゃだったかな」
マンガールは立ち上がり、手を少し上げてぴらぴらと振る。
「本当はテレサに見つかる前に煉瓦を連れてこうかと思ったけど、テレサとバトったらかなり分が悪いし」
「わかってくれたか! テレサもその物騒な刃物しまいなさい! ほら!」
「……レンの優しさに感謝することね。本当は私、大人相手には容赦ないから」
そう言ってグリムリーバオをジャングル・バッグにしまう。一触即発は避けられたか。
「と言うより、誰もいないと思ったのに、何であんなに都合よくテレサが煉瓦を助けに現れたんだよー」
「そりゃレンをずっと尾けてたからね」
「え? 尾けてた? え? いつから!?」
「最初から。レンがちゃーんとお使いできるか心配でこの一ヶ月ずーっと尾けてたんだ。もちろんお釣りをネコババしたこともぜーんぶ知ってるよ」
サーっと体の熱が引っ込む。あぁ。怖い。全てを見透かされてなお俺に向けられる笑顔が怖い。
「お説教は後。マンガール。アンタの素性を吐いてもらうわよ。ただ子供たちを笑顔にする道化師じゃないわね」
「道化師じゃなくて流浪のストーリーテラーだよ。まあ確かにただの流浪のストーリーテラーじゃないけどね。ここまで来たらしゃべっちゃうかな。私は国に派遣された異世界人捕縛員です!」
「捕縛、員?」
「簡単に言っちゃうと煉瓦のように街中に潜んでいる異世界人を見つけてはお国に報告、もしくは捕縛する係なのよねこれが」
「待って、だって。異世界人なんでしょ? え? 国に報告って、お前は捕まらないの!?」
「まあ、昔は人間側に付いて魔族と戦っててそれなりに貢献してたから王室とも結構仲が良くてさ。その恩赦で国のために働く公務員になったってこと」
つまり、異世界に認められた転生者。確かに昔は魔族と戦うための戦力に異世界人は有用だって話は聞いたけど……ん? 魔族と戦っていた?
「待って。おかしくない? え? なんか変じゃない?」
「変って、何がかな?」
「アンタのその見た目。私より少し上くらいに見えるけど、人間と魔族が戦争してたのって20年前よ。アンタいつこっちに来たわけ」
「んー。25から30年前くらいかな。戦争の末期に転生したんだよね。いやあ驚いたかなあの時は」
30年前……? 見た目がどうにも30年生きているようには見えない。いや、最盛期の状態で肉体が再構成するはずだから実年齢はともかく肉体年齢はもっと歳がいっているはず。
これも死神曰くチートの一つなのか?
「じゃあアンタ。何歳よ」
「あっけからんと聞く? でも俺も知りたい。マンガール何歳?」
「乙女に年齢を聞くのは厳禁ーだぞ☆」
きゃぴんとウィンクをしてポーズを決めて言ってくる。
鬱陶しい。少なくとも若くはないし、さっきまで殺し合いに発展しかけた奴の態度じゃないぞ。なんかこう、砕けすぎ。




