ガガガ☆マンガール『テレサの一番弟子』
今日も晴天なり。
ブルーステラウェイはいくつかの区域に分かれている。第一から第八まで、別段それぞれに特色があるというのは……まだわからないな。そんなに活動範囲は広くないんだ。
俺がいるのは第四区域。ヴァルハライズも同じ区域だ。おそらくだけど一番盛んな商業エリアだと思う区域。
水の都と言うことでとにかく水路が多いし橋も多い。見た感じ歴史的なデザインの建造物やモニュメントも多い道を俺はひたすらに全力疾走していた。
人通りも多く、風邪を頬に感じながら巧みに避けて走る。
今していることはポーションの素材を第四区域各地にある店から集める作業。何では走っているか。善は急げってやつだ。
「よおレン。元気一杯だな」
「うん! おはよー!」
「レン君今日もテレサのお使い?」
「そう! 今日も今日でポーションの素材集め!」
「レンだ! またバカみたいに走ってる!」
「るせークソガキ! ちぇめーも走れ!」
「レン。これ持ってけ!」
「お、ありがとうおっさん!」
果物店のおっさんが放り投げた果実を受け取り、齧りながらまた走りだす。
ブルーステラウェイの生活ももう二ヶ月が過ぎた。今やこの街を一人で走り回るほど馴染んでいる。
最初はテレサの影に隠れて街を回っていたけど、テレサといろんなところを回り、いろんな人と顔を合わせた甲斐あっていろんな人に声をかけられるどころか今みたいに物をくれるなんて人もいるくらいだ。
段差を駆け上がり、橋を越えて、最後の店に入る。
入った瞬間に青臭い匂いが鼻につんと入ってきた。ここは薬草の店。ここはテレサ御用達の薬草店。何で御用達化は店の奥から出てきた店員を見たら一目瞭然だ。
「お、レン君。いらっしゃい。今日も来ると思ってたよ」
「ハァ、ハァ。こんにちはリュルリさん! ハァ。コレ、リストがあるからこのリストの薬草ください!」
リュルリ・ボウガネート。まだヴァルハライズで働き始めた時に出会ったテレサの友人。彼女は第四区域の一角で薬草店を切り盛りしている、テレサとは店主友と言った関係だった。
「毎日毎日飽きないねぇ。そんなにテレサの使いっぱしりが気に行っちゃったの?」
「ハッ! そんなわけないでしょ! 使いッパシリも何もこれがポーションケミカラーへの第一歩ですよ! だけどテレサに弟子入りして一ヶ月。まだろくにポーションの作り方も教わってない! 俺は本当にテレサの弟子なんでしょうか」
リュルリさんとは一ヶ月。こうやってテレサのお使いで訪れてはそのたびに愚痴を漏らしていた。
「そりゃ一ヶ月じゃまだまだ素人。雑用係が普通のことよ」
「そうかもしれないですけど、とにかくあいつは俺に対しておかしいんですよ。服を買ってくるのはいいけど半ズボンばっかりだし、ご飯の時もまず俺が食べたのを見てから食べるし。飯くらい一緒に食べようって話だよ!」
「テレサも意味わからない方向にこじらせてるからねぇ。小さい子供と暮らすのも初めてだからタガが外れてるんじゃない」
「ちっちゃくないです! 15歳です!」
俺はカウンターをバンバン叩いて言い返す。
とにかく、俺はポーション作りの弟子入りをしたにも関わらず雑用ばかりさせられている。
別に雑用が悪いってわけじゃないんだけど、直接何かを教えられているわけでもない現状がとにかく煩わしい。
「というわけでリュルリさん。俺は俺なりにテレサの作る過程を見て自己習得しました。ジャーン。煉瓦特性のポーションです」
「え? 嘘? 自分で作ったの?」
「もちろん。テレサの目を盗んで適当なレシピを複合させて作った緑色のオリジナルです。どうぞ」
ポーションをズイッと差し出す。
「え゛? 私が飲むの?」
「リュルリさんにはお世話になっているので。ほんの御礼です。遠慮しないでください」
「えぇ……だって初めて作ったんでしょ?」
「大丈夫です。レシピ通りに組み合わせただけですから」
「それ素人が一番やっちゃいけないこと……まあそんな目で見られたら断るにも断れないけど。南無三!」
ポーションを手に取ったリュルリさんが一気に飲み干した。いい飲みっぷりだぁ。
「……」
「どうですかリュルリさん。効果ありですか?」
「これ、味見した?」
「いいえ! リュルリさんのために作ったものですから自分は飲んでないです!」
「……君が頑張ってるのはよくわかるけど、やっぱり手順を踏んだ方がいいよ。良薬は口に苦しって言うけど、テレサの作るポーションは全部美味しいからね」
そう言ってポーションを突っ返される。
全部飲まないんですかと聞くとレン君のために残しておいたんだよと言われる。
残しておいたって、間接キスじゃないか。ちょっと恥ずかしいけど、うん。飲んでもらったんだし今度は俺が味を見る番だ。
ゴクリ……そして俺はそのまんま青苦い葉っぱを齧ったような味が口に広がり、瞳から涙をこぼした。
俺は薬草店から出る。やっぱり自分勝手に料理をするものではない。今日の最大の収穫はその認識だった。だけど、毎日毎日テレサの雑用で、もう少しポーション作りに必要な知識を教えてほしいもんだ。
「まあこうやって買い出しをしてたら自然と覚えられるかもな」
ポーションの素材を買った残金の一部をくすねて帰路に就こうとしたとき、俺の目にある物が移る。
道を歩くはド派手な恰好。まるで奇術師ピエロの様だ。ピンクと黒との不協和音な色彩。彼女はこの街に流れ着いた流浪人。
俺は彼女の傍に駆け寄った。




