ケミカルモンスター『シミズク』
ブルーステラウェイ。それが今俺がいる街の名前。
以前にヴァレチナとかヴェネリアとか言っていたけど、ヴェネチアだ。ヨーロッパ特有の荘厳石造りと張り巡らされた水路。国の中でも特に栄えた水の都だそうだ。
水の都と言うだけあって水に関しては密接な関係があり、海に面した都市なのだけど驚いたことに海の一部が川と同じ成分、つまり海水でないらしい。
何でかと言うとそれこそ奇跡的な要因によるものらしい。海底にある岩礁の位置、さらには岩山、草原と言った超自然的な物体だか何だかが超偶発的に超高次元の結界陣を作り出したことにより、陣の範囲にある水路や川や海は超絶に清らか、汚れなどは完全に洗浄され、ミネラルタップリの水へとなっている。
一言で言えば最高級の水として飲料としてもってこいらしい。
ポーションショップを経営しておりかつ、地下に工房があり売っているポーションを全て自作しているテレサにとって良質の水が取れるからこそブルーステラウェイでポーションショップを経営しているとのことだ。
確かに水は文化を育てる大切な要素。ブルーステラウェイがこんなにも大きく華やかな都市であることの裏付けでもあると思う。
ちなみにブルーステラウェイには荘厳なる水の都とか言われているけど、他に異名と言うか呼ばれている名があった。
テレサに教えてもらったブルーステラウェイの別の名。
『始まりと終わりの街』
カッコイイじゃないか! この街で生まれた誰かがなんかすごい偉業を成し遂げ、伝説となってその生涯を生まれたこの街で終えたとか、そういう逸話があるのかと思った。
まあ実際のところそんなことはなく、テレサに聞かされた真実は異世界人の始まりと終わりの街とのことだそうだ。
つまり転生者は皆この街に出現し、そのほとんどがその場で殺されるか捕まって連れていかれる。だから始まりと終わりの街と呼ばれるようになったとのこと。
さらに言えば異世界人に懸賞金が掛けられるようになってからブルーステラウェイは急速に栄えたそうだ。
異世界人を捕まえたら多額の賞金もらえるもんね。
正直聞いていい気分ではなかったな。俺だって異世界に来た初日に追いかけ回されて、まさしく始まりで終わりになりそうだ、
「おぉう!?」
「大丈夫レン? 足元すべりやすいんだから気を付けなさい。変な考え事でもしてたんじゃないの?」
「イタタ。いや、別に変な考えじゃあないけど」
「でもしてたんでしょ」
「……してた」
「うーん……見てて危ないから手、繋いであげようか?」
「断る! 俺は俺の足で昇ってやるぁ!」
尻もちを着いた俺は急いで立ち上がり、手を差し出すテレサを横に岩がむき出しになった山道を登っていく。
今俺がいるここは『シンオークの雑木林』。テレサが以前スライムの洞窟で使ったシミズクの住む清流の水、およびシミズクを捕獲しにやってきていた。
-シミズクの源泉-
「にしても、見渡す限り木もくモク! ほんとにここで道あってんのか?」
「ウーン。遭難したって言ったらどうする?」
「いや、嘘だよな。だってテレサあんな意気揚々とついてこーいって言ってたじゃん? 嘘だよな」
「嘘に決まってるじゃない。私がここに何回訪れてると思ってるのよ。怖いの? 帰れないかもって心配なのぉ? 不安ならお姉さんが慰めてアゲルよ。ほら、こっちおいで」
「アンタそればっかだな!」
シンオークの雑木林。この前のスライムの洞窟に次ぐダンジョン。
と言っても本当にただの雑木林だ。深々と生い茂る木々と多くのモンスターが住んでいるとされるあまり人の立ち入りのない雑木林。
出てくるモンスターの中には熊とかイノシシといった系統のやつも出ると聞いたけど、今のところそう言ったモンスターには遭遇していない。
だけど今の今まで歩いて来た道が獣道だっただけにいつ猛獣に遭遇するかしないかとひやひやしている。
耳をすませばきょきょきょきょーと変な鳥の鳴き声にかなかなかなーと変な虫の鳴き声と明らかに野生生物たちが自分の存在を誇示しているじゃないか。
「モンスターには早々遭遇しないから大丈夫よ」
「何でそんなこと言いきれるんだよ! 獣道だぞ! イノシシが突進してきたら死ぬんだぞ!」
「連中は早々暴れないわよ。モンスターより恐ろしいのがいるからね」
ゾクン。嫌な汗かいた。モンスターより恐ろしいのがいるって、それモンスターじゃないか。モンスターが恐れて暴れなくなるって、ここら一帯のボスじゃん! 危ないじゃないか!
「ま、まあそいつに手を出さなければいいって話でしょ? 今回そいつが目的ってわけでもないんだからさ」
「そうだけど、そいつは徘徊型だからいつ出会うかわかんないのよねぇ。もし遭遇したら厄介かなぁ。でもそいつから取れる素材もいいポーションになるんだけどな」
「そんなまるで出会いたいみたいな物言いやめてよ。そりゃ俺だってダンジョンに行くけど行くーって言われて喜んで行くーって言ったけど、前のスライムの洞窟に比べてずいぶんハードになってないか? 嫌な気配は感じるわ道のりは困難わでさ」
「シンオークの森でハードとか言ってたらこの先どんなダンジョンにも行けないわよ。シンオークなんて一部のモンスターがクソ強いってだけのダンジョンなのに」
「そのクソ強いが余計だ、」
「伏せてレン!」
唐突。テレサがダイブして襲い掛かってきやがった。
この野郎大自然フィルターを使って俺に襲い掛かってもモザイクがかかるから安心とか考えて時と場所も考えず襲い掛かってきやがった!
テレサに抱き締められながら俺は地面に倒れ伏せる。
「離せテレサ! ダメだから、俺15歳だから!」
「しーっ。アホなこと言ってないで、あれ見てみなさい」
あれを見てみろ?
テレサから解放されて、地面に伏せながら指さされた方向を見てみる。
地面に伏せているからこそ分かる微弱な揺れ。なんだ? 地震か? それとも……テレサの言うクソ強いモンスターか。
俺はさり気なくテレサに近寄る。何かあった時はこいつに護ってもらわねば。
「お、何? レンその気になったの? お姉ちゃん感激」
「感激してないでお姉ちゃん……あれ何?」




