ダンジョンに潜ろう-準備編-
異世界に来て七日間が経過した。
今日も今日とてポーションショップを切り盛りする……というわけでもなく。実際の所ポーションショップは結構休みが多かった。
異世界に来て一日目は休みだった。二日目三日目は開いていたが四日目五日目と休み。六日目が午前中のうちだけ開いて七日目の狂は完全休業。
仕入れや製造全てテレサ一人でしているみたいなので店を開けない日が多いのは仕方のないことなのかもしれないが、ニブルハイセキスのポーション製造のためにとにかく時間が足りないとのこと。
俺のせいでごめんなさい。なんて思いながら二階のとある空き部屋で俺は暇をつぶしていた。
「レーン。ポーション持ってきたけど……飲む?」
テレサが申し訳なさそうにそう聞いてくる。どうやら扉を開けて入ってきたみたいだ。
「飲むから置いといて」
「……ねぇ。まだ怒ってる?」
「別に」
「怒ってるじゃん。もういいじゃん。あれから四日経つんだよ。もうそろそろ機嫌直してよ。そんなにお風呂一緒に入ったの嫌だったの?」
「嫌だって言うより、ちぇめーが強引なのが嫌だったんだよ! 白状するよ! そりゃ女の人の体に興味ないなんて言わないし! でも腕掴まれて……色々と心臓に悪かったんだよ!」
「一緒にお風呂に入れば仲良くなれると思ったんだけど……どうやら溝ができちゃったみたいね。わかった! 今度からちゃんと前もって一緒に入るか聞くね! 今晩一緒に入ろ!」
「うるしぇー!」
こんの頭ピンクのジャングル絶対伐採ウーマンは自分勝手すぎる! まあ彼女に500万の借金をしているのだから有無を言う資格はないのかもしれないけど。それでも拒否はする!
俺はバスンと人形を叩いた。テレサに暇つぶしでもらった直立する木偶人形なのだが、どっからどう見ても木・木・人な気がしてならない。
「それよりさぁ。もうそろそろ外に出てもいいんじゃないか?」
ポーションショップに来て七日。その間一切外出をしていない。
甚平の服を脱いでテレサのおさがりを着ているから見た目で判断されなくなったとはいえ、外に出るのは危険なのはわかる。
だけど家猫じゃないんだ。外に出れないととても不便でならない。
「んーそうねぇ。なら、一回外に出てみる?」
「いいのか?」
「ただししばらくは私と同衾じゃなかった、同伴しながらね」
こいつわざと間違えたか。
「俺も一人で出歩くのは怖いし、一緒に行ってくれるなら助かるな」
「実はちょっと遠出しようと思ってね。一人にさせておくのは心配だし一緒に連れて行こうって思ってたのよ」
「遠出? どこに行くんだよ?」
「ポーションの素材を集めにダンジョンによ」
「ダンジョンだって!?」
ダンジョンと言えば、それこそ異世界ファンタジーにおける醍醐味! モンスターが住まい、剣と鎧を手に奥へと進んで強大な敵と対峙して、深層に眠るお宝を手に入れる。
まさに異世界らしい!
「行く行く! ダンジョンに連れてってくれ!」
「今回行くのはそんなに危険なところじゃないし、レンにも集めるの手伝ってもらおうかなって思ってね」
「スッゲー手伝うよ! 何なりと言ってくれよ! で、何を取りに行くんだ? どんなダンジョンなんだ?」
「スライムの洞窟ってところ。スライムから取れるエキスが欲しいんだけど、おっぱいスライムから取れるエキスよ」
「お……! スライム!」
スライム、スライム! 俺のいた国のRPGのゲームではまさに代表格のモンスターとして名を馳せていたモンスターオブモンスター。
そのスライムをこの目で見れるなんて……と思いながらスライムの頭に着いたおっぱいもかなり気になっていた。
スライムと言うことは柔らかいんだろ? それがおっぱいってことは、おっぱいみたいな感触なのか?
「ゴクリ」
「あ、おっぱいに反応してる」
「違うし! スライムに反応したんだし! 俺もこれで異世界デビューだ。いいじゃないか。いいじゃないか!」
「なんか変な妄想滾らせてるけど、レンも行くとなると準備しないとね」
「そうだな。ダンジョンって言うんだからこんな服じゃなくてもっと丈夫な鎧を用意しないとな」
「何言ってんのよ。何で討伐しに行くわけでもないのに鎧が必要なのよ。そりゃ服は変える必要はあるけどね。じゃあ出かけるわよ」
テレサに急かされて俺は裏口から外に出る。
一週間ぶりの外。青空だ。雲も静かに泳いでいる。
空気が美味しい気がする。大きく息を吸っては吐く。
地理は分からないのでテレサに連れられて歩き出す。
少し歩けば目抜き通りがあるので人の数がグッと増える。
バレてないよなと周りの視線を気にしながらテレサの後ろを歩く。
時よりテレサに『あんまりキョロキョロしてると不自然よ』と落ち着け的なことを言われ、俺はできるだけ自然体になるようにした。
着いた店は……看板にクエストショップと書かれている。
どうやら冒険のための道具や防具が売っている店の様だ。
野営のための道具一式。携帯用の簡易食料。素材をはぎ取るための解体ナイフ。暗がりを照らすための蛍光球。なるほど。確かに冒険に必要なものが揃っている。
「目がすっごいキラキラしてるね」
「男ならこの光景を見て心躍らんやつは居ねーよ。おっほ! スティールパラス対策の塗り薬? スティールパラスって何だよ」
「見るもの全て初めてものばかりでしょ。一つずつ教えてあげるから、今回はダンジョンに入るための服を買いに来たのよ」
見るもの全てが新しい物でとても新鮮な気持ちになれたが、目的を忘れてはいけないとテレサに連れられて防具エリアに向かう。
普段来ている服とは違い丈夫な服を選んでくれるとのことで渡された服を試着室で着替えたのだけど。
「おい。何だこの服! 貴族服じゃねーか!」
「やーんカワイイ♪」
「首元にフリフリ。黒合皮の服装。半ズボンで膝まであるブーツ。これどっからどう見ても冒険に出掛ける服じゃねーだろ!」
「クエストショップに置いてあるやつだから大丈夫よ。ダンジョンに潜るにしてもカワイイ恰好とかかっこいい恰好の方がいいってことでデザインされた服だし、何よりここはデザインに凝ったクエストショップだから」
「だからって、だからってこんな半ズボンなんて……! 違うのにしよ、ね!」
「もう買っちゃっからそれ。今度からレンの外着ってことで」
「えぇ!? ちぇめー……! 俺を使って楽しんでんだろ……! そうだろ!」
「ウフフフ。じゃあ明日の早朝。スライムの洞窟に向かうから。今日は英気を養おー」
「まってぇ! 話を聞いてよぉ!」




