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プロローグ2

「それで結局どうして?」

「今日は文化祭についての会議があったのですよ。それに先程まで参加していたのです」

「会議……ああ、生徒会の仕事か」


 花南は書記として生徒会に入っている。

 確か文化祭は今から約二ヶ月後だったはずだけど……生徒会はもう準備に取り掛かっているらしい。

 夏休みを終えたばかりだっていうのにもう仕事とはご苦労な事だ。


「その会議は結構時間がかかりますので先に帰っていいですよ、と言っておいたはずなのですが……まぁ、もうそれはいいです」

「だね。互いに仕事を終えたわけだし……一緒に帰ろうよ」

「ええ、そうですね」


 二人して教室から廊下へと出て、そのまま昇降口に向かって歩き出す。

 奥から聞こえるのは吹奏楽部の演奏だろうか。毎日のように聞こえるこの演奏はいつも間にか聞き入ってしまう程に心地良かった。これなら今年はコンクールでいいところまでいけるんじゃないだろうか。


「あ、そういえばコレを職員室に届けなくっちゃいけないんだった」

「付き合いますよ。どうせ昇降口と職員室は目の先でしょう。……? なんですか一緒に持っているプリントは?」

「ああ、コレ? ……別に何でもないよ」


 ここでそのプリントをさっと後ろに隠してしまうのがまずかった。

 目を光らせた花南は僕の手首を素早く取ると、手に持ったプリントを奪い取った。

 抵抗する暇も何か言う暇すらなかった。


「ちょっ……⁉︎」

「……見たところ授業で使うプリントのようですね。どうしてこれを梓が持っているんですか?」

「えーっと、その……」

「ど う し て 持っているんですか?」


 有無を言わさない言葉。

 ぐっと顔を近づける圧力も相まって僕は仕方なく口を開く他なかった。


「あー……実は変わりにやってくれって朝花あさかに頼まれちゃってさ。どうしてもって言うから仕方なく僕が……」

「嘘でしょう。朝花君は隣のクラスですし、そもそも朝花君は今日は風邪で欠席です」


 僕の虚言はあっさりばっさり切られてしまう。というか今のは完全に墓穴だった。


「誤魔化さなくてもいいですよ。もう大体分かりましたから」

「うっ……そうなの?」

「ええ。どうせまた嫌がらせを受けたのでしょう?」


 僕は敵わないという意を示し、無言で両手を上げた。

 どうして花南には隠し事が出来ないんだろうか。幼馴染だから?

 けど、僕は花南の考えてる事なんて分からないんだけどな……。

 そんな事を考えていると突然花南が僕に額にデコピンした。


「……っ、なんでデコピン?」

あんな事・・・・が起こったにも関わらずまだ嫌がらせする教師も教師ですが……それを隠そうとする梓も梓です。反省して下さい。いえ、反省しろ」

「うわ、出た命令形」

「……梓」

「分かってる分かってるって」

「そうやって周りに迷惑や心配をかけまいと一人で抱え込もうとするのが梓の悪いところです。一人で抱え込んで抱え切れずに爆発される方がよっぽど迷惑ですし、心配に思いますよ」

「うん……隠して悪かったよ」

「それと梓は誰かに頼る事を覚えるべきです。……幸いにも梓には運動も出来、頭が良く、頼りになる美少女がすぐ近くにいるのですから」

「いやいや、僕の妹は確かに可愛くて頭もいいけど、まさか高校生が小学生を頼りするわけにはいかないよ」

「ていっ」

「……っ、今度は何で⁉︎」

「……」

 

 さっきより強くデコピンしてきた花南は軽く頬を膨らませたまま何も言ってくれなかった。どうやら怒っているらしい。何か僕は悪い事をしたんだろうか。

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