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 第Ⅰ章 超能力者の島    ‐1‐

「なんと言われたのでしょうか?」

 黒髪の少女が、黒髪碧眼の男に問いかける。

 窓から見える景色は、かなり高所からのものだった。その景色を背にして、その男。伊乃宮善史は座っていた。

「言った通りだ。君達には、ある要人の護衛をしてもらいたいのだ」

 『達』といった通り、その部屋にはもう一人の人影があった。金髪碧眼の少女の姿が。

 しかし、その少女は、律義に伊乃宮の前に立つ黒髪の少女とは違い、壁にもたれかかっていた。

「いいえ、そこではありません。誰を護衛するのかと聞いているのです?」

「依頼者は、『葛河 朱音』。君達も知っているだろう?」

「……ッ!」

 依頼者の名が言われた瞬間、二人の少女の目が変わる。それは、動揺と怒りの目であった。

「……どういうつもりですか?」

 黒髪の少女は、静かに問う。

「優秀である君達に、重要な依頼人の護衛を任せるというのだが? 何か問題でも?」

「いえ、特にそういうのは、ありませんが……」

 黒髪の少女がそう答えた時、金髪の少女がデスクに歩み寄り、言い放つ。

「私は、嫌です」

「ほう。理由は?」

「その男の警護をしたくない。ただそれだけです」

 その答えに、伊乃宮は眉をかすかに動かす。

「……それは、お前の感情論か?」

「はい」

 迷いのない即答だった。

「そうか……だが、これは命令だ。拒否権は無い」

「なっ……ッ!」

 身を乗り出し反論しようとする金髪の少女を、黒髪の少女が腕で制する。そうして、こう答える。

「わかりました。受けましょう」

「姉さんっ!」

 金髪の少女は、ヒステリックに叫ぶ。

「いい加減にしなさい。私たちに拒否権はない。受けるしかないの……」

「で、でも……わかりました」

 腑に落ちない顔をしながら、金髪の少女はしぶしぶと同意する。

「……入れ」

 二人の同意を確認した伊乃宮は、誰かを呼びつけた。扉を開けて入ってきたのは、修道服を着た女性だ。黒のケースを持ち、ゆっくりと二人の元へ歩み寄ってくる。

「中身は?」

 楓が問い。

「見ればわかる」

 伊乃宮が答えた。

 修道服の女性は、デスクの上にケースを置くと、一礼して部屋を静かに去る。

「君たちにこんな大役を押し付けるのは、私も心が痛む。これは、私からのささやかな贈り物だ」

 伊乃宮は、ケースを開く。そこにあったのは、漆黒の拳銃二丁だった。

 二人は、素直に驚いていた。その二丁の拳銃がどれほどの物か、二人は知っていた。

 魔力錬弾式第四攻魔銃 ヴァルキリー・ヴェテルギア。

 魔力を弾丸状に錬り発射することで鉄製の弾丸より高い威力を誇る、所謂『魔銃』だ。数年前に、少女たちの所属する『組織』が開発した兵器。使用者によっては、核を超越する威力の兵器になる代物のため、使用できる者は限られている。

 そんな銃を与えてもらったという事は、彼女たちの実力が認められた事になる。

 二人は、それを手に取る。ずっしりとした鉄の重さだけではない、今までにこの魔銃が殺してきた人々の命の重さすらあるように感じた。

「これが……魔銃……」

 紅葉が、思わず声を漏らす。

「呪われた能力(ディザスタースキル)が活かせる最強の武器だ。もしもの事があれば、依頼人を抹殺しても構わない。まあ、もしもの事があれば、だがな」

 二人は、ケースに入っていたホルスターを腰に取り付け、魔銃を収納する。

「それでは現時刻より、高倉 楓、高倉 紅葉を特別要人護衛に任命する。頼んだぞ」

 少女たちは、息を大きく吸った。そして、静かに声を揃え、

「了解!」

 それは、何らかの覚悟を持った答えであった。


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