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夢の異世界記-短編をつらつらと-  作者: ジェンキンス
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最後の最期



「これでようやく俺の役目も終わる」



「終わらせぬぞ」



「いいや、終わるんだ

俺も、お前も、そしてこのくそったれな運命も」



次の瞬間、白銀と純白の線が交差した。



------------------------------------



食物、建物、衣服、それらがすべて純白の世界。

そこにいる人々も、白く穢れを知らないかのような笑顔で溢れていた。



そうその瞬間までは。



限りなく純白に近い白銀が純白に紛れ込んだ。

通常からすれば気にしないような違和感でもそこの人々は酷い違和感に襲われていた。



なんだ、あれは?



人々は一斉に呟く。

自分たちの世界にいきなり現れた白銀。

今まで純白以外見たことのない人々にとっては本当に違和感でしかなかったのだ。



「俺は白銀

お前たちを漆黒に誘うモノ」



白銀が手を振るう。

その瞬間、白銀の周りから純白はなくなった。



黒い奔流。



白銀の周りは全てソレに呑まれ、本来の色を失っていく。

異様なまでに白かった建物も黒く染まり崩れ、本当に食べ物かと疑いたくなるほどの白い果実も黒い粒子となり消えて行く。



ただ、一点を除いて。



「ようやく来たか、白銀

待ちくたびれたよ」



「それが俺の役目だからな、来るしかあるまい」



そこにいたのは人。

先ほどまでの純白の人々とは違う雰囲気を纏ってはいるが、尚も純白だった。



「いい加減やめたらどうだ?

いくらお前の役目とはいえ辛いものがないか?

いつまでたっても終わらないのだ

お主がいくら頑張ろうとも私たちの主は倒れん、あの方は不滅だ」



「お前の言葉など聞く耳もてん、俺の役目は白を黒に変えるのみ」



「残念だ、不要な戦などしたくないのだが」



「戦ではない、運命だ」



「そうか、では抗わせてもらおうか!」



数瞬。



交わる刃、交差する白と黒の奔流。

幾重にも繰り返される灰色の瞬間。



双方の姿が各々の色に包まれ高速で動き回る。

その間も繰り出される技の応酬。



しかし、拮抗が破られる。

純白に応援が来たのだ、一人二人ではなく軍隊かのような規模で。



目的は白銀の排除、ただそれだけのために何千人と集まったのだ。



しかし、白銀は恐れない。

結果を知っているから、己の勝利という結果を。



「どうだ?

これくらい集めたなら、かの運命とやらに打ち勝てるのではないか?

そも、運命とはくだらないものだからな」



「お前たちが何人集めてこようがその行動すら運命によって仕組まれているものだ

結果は変わらない、そう変えられないのだ」



「戯言を」



一人が下がり、何千もの純白が前に出てきた。

圧倒的物量差、だが白銀は一切臆した様子がない。



「無駄なことを

しかし、それもまた運命」



そこから始まったのは虐殺ともいえる光景。

一つの白銀が何千もの純白を一人づつ、時には数人まとめて黒に染め上げる。

白銀の顔には一切の感情はなくまるで作業をこなしているかのよう。



「なぜだ!!

なぜこれだけの人数差がありながらも白銀に勝てんのだ!」



先ほどの純白が唸りをあげる。

状況が進展しないどころか悪化する一方なのだ。



「それが運命だからだ」



純白は顔をあげる。

周りに何千といた者どもは一人たりとも残っていなかった。



「なっ」



「終わりだ、誰も運命に逆らうことはできない」



白銀はこれまでの戦いをなんとも思わず純白に手をかけた。

純白も黒に呑まれたのだ。



------------------------------------



幾たびの戦いを過ぎ白銀は一つの建物の前に立っていた。



「やっとだ、やっとこのくそったれな運命から解放される・・・!」



その一言を呟き白銀は中に入っていく、これから始まる運命に勝敗さえも決定付けられている意味のない戦いの為に。



「来たか、白銀

やはり、お主なのだな」



「あぁ、来てやった

くそったれな運命が俺をご所望だったようでな」



「お主とは戦いたくないといっても駄目なのだろう?」



「あぁ、それが運命だ」



二人が構えを取り合う、己の存在理由をかけて。

片方は運命の結果沿うように。

片方は運命に抗うように。



「これでようやく俺の役目も終わる」



「終わらせぬぞ」



「いいや、終わるんだ

俺も、お前も、そしてこのくそったれな運命も」



次の瞬間、白銀と純白が交差した。



交差する攻撃と、逸らされる奔流。

どちらもわかっている、お互いにとってお互いの攻撃は無駄なことを。



白は黒を跳ね返し、黒は白を呑みこむ。



だからお互いこの一手を選ぶ。



「「混沌-カオティック-」」



お互いを傷付けられる唯一の攻撃。

刃に纏い、奔流させ、流し流される。



それでも、決着がつかない。

ただどちらが勝つかは運命によって決まっている、不思議な戦い。



転機。



白銀が体勢を崩したのだ。



切り込む純白、抵抗しない白銀。

一瞬の間の後、胸を貫かれていたのは白銀だった。



「なぜ避けなかった」



「それが運命だからだ」



「体制を崩したのはわざとだったのか」



「あれもまた運命

俺は戦いの最中体勢を崩し敗北する運命だったんだ」



少しの間、お互いが言葉もなく見つめあう。



「それでよかったのだな」



「運命だからな」



「そうか」



「止めを刺してくれ、運命が終わらない」



「刺さない、といったら」



「大まかな運命に違いはないがお前に殺されたいってのは駄目か?」



「厄介な役回りを押し付けよって」



「すまんな」



純白が白銀の止めを刺す。

白銀の息は完全に止まり、白に染まり消えた。



------------------------------------



『次の運命はあなたを選びました

これよりあなたは運命の指示に従ってもらいます』



『普段生活中でも戦闘中でも運命が通告されればあなたはそれを実行しなければなりません』



『もちろん、それ以外はあなたの自由意思通りなので悪しからず』



『それではまたいつか、通告の時にでもお話ししましょう』



『ではこれからよい人生を』



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