その二人、出逢う
side ユキ
今、私は危険な状態に陥っている。
「おら、金目のモンだしな!!」
いわゆる恐喝。小屋に連れ込まれ、三人の男に囲まれてしまった。
「おい、聞いてんのか!!」
「うるさいなぁ……」
「あぁん!?」
まったく、少しは落ち着けないのだろうか?
そんなに騒いでも、無いものは無いのだから仕方ない。
「おぉい!!聞いてんのか!!」
「きゃっ」
ついに胸倉を掴まれてしまった。
男の酒臭い息が、顔にかかる。
(く、臭い……)
「痛い目見る前に、さっさと出せやぁ、コラァ!!」
その時、小屋のドアが勢いよく開けられた。
side out
俺は自分の愛車、キューレを止め、とある村に寄ることにした。
「ふぅ……」
久々にメンテナンスでもしてやるか。
俺はふと、腰の銃を見た。
ボロボロになった銃と、傷一つない銃を一撫でし、周囲を見渡し、一休みできそうな場所を探す。
『おぉい!!聞いてんのか!!』
『きゃっ』
そんな声が聞こえてきたのは、何かの偶然だったのだろうか。
この後起きることを知っていれば、俺はこんなことはしないだろう。
「?」
俺は声の聞こえてきた小屋に近づき、窓から中をのぞき見た。
そこに見えたのは女の子が、男に胸倉を掴みあげられている光景だった。
「おいおい……」
俺は咄嗟にドアを勢いよく開け放った。
中にいた三人の男は、皆一様に驚きの表情を浮かべた。
「!?」
「……何やってんだよ?」
「お前にはカンケーねーだろ」
いち早く元に戻ったリーダー格の男が、そう答えた。
「黙っとけ、アホ。さっさとソイツを放しな」
「あぁん!?」
「ほら、さっさとしろよ」
「こ、このクソガキ!!やっちまえ!!」
リーダーらしき男の号令と共に、残りの二人が俺に飛びかかってきた。
俺は素早く銃を二つとも抜き、二人の頬を掠めるように、弾丸を撃ち出した。
ドォン!!
「「ヒィイィ!!」」
たったそれだけで、二人はその場に倒れこんだ。
「おいおい、そんなもんか?」
「おい、お前ら何してんだ!!」
「そういうお前がかかってきたらどうだ?」
「フンッ!!俺様にたてついたこと、後悔させてやるぜ!!」
男は腰から剣を抜き、斬りかかってきた。
「はぁ……大振りすぎ」
俺は懐に潜り込み、肘を腹に打ち込む。
「ゲフッ!!」
その場に倒れこんで、ピクピク痙攣しだした。
「ほら、今のうちに行くぞ」
「は、はい……」
俺は女の子を小屋から連れだし、自分のバイクの近くまで連れて行った。
よく見ると、女の子は何処かの貴族の様に見える。
「た、助かりました。ありがとうございました」
「別にいい。それよりお前、何処かの貴族か?」
「一応、そうですけど」
「ほー、こりゃまた珍しいな。こんな辺境に貴族が来るなんて」
この辺りは辺境もいいところ。貴族が来るなんて、まったくないに等しい。
「あの、私が勝手に出てきてるだけで……」
「つまり、家出ってか?」
「家出ではないんですが……」
「じゃあ、なに?」
「ほ、放浪です……」
「ほ、放浪!?」
あまりにも予想外だった。
「あの、図々しいのは重々承知の上でなんですが……」
「鬱陶しい言い回しだな」
「そのですね、送ってもらいたいなぁ、なんて……」
「何処に?」
「ヴィルフォングまで……です」
「ヴィルフォングって、ここからかなり遠いな」
「気が付いたら、ここにいたって感じで……」
「おいおい」
「い、いいでしょうか……?」
「ま、暇だからいいぜ。ちょうどそっちに向かおうと思ってたところだし」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ」
「ありがとうございます!!」
こうして、俺はその女の子を送り届けるの事になったのだった。
「あの、お名前は?」
「リク・ルルノルフだ。リクでいい。お前は?」
「ユキ・ヴィルフォングです」
「つーことは、姫ってわけか、ユキは」
「は、はい」
「どうした?」
「ユキって呼ばれるのは、慣れてなくてですね……」
そんなどうでもいい話をして、多少打ち解けたのだった。
バイクのキューレは、バンディット1250F ABSをイメージしています。
あと、キューレは魔力で動きます。
感想バッチコォォォイィィ!!




