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資産家独居老人の道楽11

掲載日:2026/10/20

アキは甚右衛門を抱きしめてテレビの速報を真剣に観ていた。


巨大隕石が地球に衝突すると、先ずは衝撃波が全地球を駆け抜けて文明的な人類が築き上げた、ほぼ全てが破壊されるとのこと。

衝突予定地点はハワイ沖であり、かなりの海水は蒸発し凄まじい水蒸気爆発を起こすであること。

太平洋沿岸部を中心に高さ1kmを超える津波が発生し、その被害は予測不能であること。

太平洋の海底を直撃した巨大隕石の影響でマントルが露出し、更に地殻が予測不能なほどに変動するので世界各地で火山の活動が急激に活発になり、地球の気温が急激に上昇し、氷河、河川の水、湖の水が蒸発する恐れがあること。

更に大気中に放出された水蒸気により、全地球を大量の雲が覆い、更に火山の噴火による細かな噴煙も全地球を覆うことによって、著しく地球の気温は低下し全球凍結の可能性が非常に高いこと。

よって地球上に住む人類90億人を養う、水、食料を確保することは不可能に近いことを、各チャンネルの速報や特集で放送していた。


「シェルターに逃げてもダメだなんて…。」


アキは絶望的な気持ちをどうにか落ち着かせようとしていた。甚右衛門はおっぱいが欲しいのかグズっている。


「はいはい、おっぱいですねー。すぐにあげるからね〜!」


そして、乳房をくわえた甚右衛門を見て涙が止まらなくなった。


その時裏庭で爆発音のような音がして、低音の家が揺れるような響きが身体を震わせた。


「なんなのよー?こんな時に!」


するとテレビの生中継が騒がしくなった!


「巨大隕石に向けて!謎の飛翔体が向かっています!」


アキがテレビを観ると、小さな点が飛行機雲を出しながら上空へ凄い速度で昇って行く!


「静止画ですが!精密な拡大画像で飛翔体を捉えることが出来ました!…。これは…。人のようですね!現在AIによる画像解析が行われています!しばらくお待ちください!」


「なんか…。怪しいわね?」


アキは先ほど異音と衝撃を感じた裏の森へと向かった。


小さな発射台に見えるような建築物があった!


「独田さん!!いるんでしょ!!説明して!!」


「奥様!今手が離せなくて!剛田さんが隕石を止めに空へ上がりました!!」


「なんですって!?」


アキは急いでテレビの生中継を見る。


剛田甚左衛門の姿は無く、飛行機雲だけが空に真っ直ぐに屹立している。


「AI画像解析で最大限拡大した画像をお届けします!」


テレビのアナウンサーも興奮気味である。


「あ、あなた!!」


その画像は剛田甚左衛門を正面から捉えた画像で、間違いなく剛田甚左衛門その人であった!!


「解析した画像を識別データで照会したところ、日本有数の資産家である、剛田甚左衛門氏と判明しました!あ!巨大隕石と剛田氏が衝突しました!何ということでしょうか!?巨大隕石が吸い込まれて行きます!!あんなに巨大な物体をどのようにして吸い込んでいるのかは不明ですが…。今!完全に吸い込まれて巨大隕石は消滅しました!更に詳細な画像が送られて来ました!!巨大隕石も剛田甚左衛門氏も消滅です!!繰り返します!!巨大隕石も剛田甚左衛門氏も………」


アキは気を失って倒れた………。


----------だれかきたな


これは人なのか?

私が彼を初めて見た時の印象はそれだった。


「ほう、ここへ誰かが来たのも50000年ぶりかな」


「ここはどこかのう?」


「間(はざま)としか説明できないないかな」


「何と何の間なのじゃ?」


「あなたが居た世界と、これから行く世界の間ですよ」


「どこへ行くというのじゃ?」


「その前に…と。こことここを若返らさせて…と。あれ?あれが無いじゃないのさ!ここも再生させてと、あ!ここもか!あなたは不便な身体してたからひと通り治しておいたよ」


「まあ、便利じゃったり不便じゃったりじゃのう」


「そしてと…。その物騒な物をさらに安定させるために、このスペシャルな魔核を埋め込むよ!」


私は彼の胸に両手を突き刺してスペシャルな魔核を入れ込んで彼の肉体と魂に結合した。


「うお!乱暴な奴よのう!」


「説明するよ!その左腕に薬莢の様なものがあるけれど、リロード…。入れ替えなくても永遠に発射出来るよ!そして左腕に隠されてる刀に魔核から魔力を込めると刃渡りが凄く長くなるから便利だと思う。あとは食事と排便も出来るし生殖器も再生させたから、楽しく生きれると思うよ」


「どれ…。魔力とは氣(タオ)のことかの?」


「んー。出来てるからなんでもいいよ!」


私は閃いた!彼にあれを渡すのがベストだと思った。


「ちょっと待ってくれるかな?」


「かまわんのじゃ」


私は数万年前に預けられた「黒刀(こくとう)」を手に取り、彼に手渡した。


「どれどれ…。」


彼は手慣れた手付きで抜刀して刀の隅々まで眺めた。


「だいぶ呪われておるが、いい刀じゃの!銘はなんというのじゃ!」


「黒刀としか聞いてないんだよね」


「黒刀かの、いい名じゃな!」


私は彼に伝えることを失念していた。


「あなたが今から行く世界は剣と魔法の世界です。その世界のどこに降り立つかはランダムですのでお許し下さい」


「おぬしも何を言っているのか、よくわからんのお」


「では!良い人生を!」


「待て!元の世界に戻る方法はないのかの!」


「では!良い人生を!」


「話を聞けい!!」


-----なんか身に覚えのある感覚じゃのう


「なんと!また空の上じゃ!落ちとる落ちとる!」


ワシは昔1度だけ体験したスカイダイビングを思い出していたのじゃ!しかし今は背中にパラグライダーはないのじゃ!


地上が見えて来たが戦をしてるようじゃのう?


ありゃ~。あれは一方的にあちらの方が弱いよう。


「さてと、どちらの味方につくかの?強いほうか、弱いほうか?」



-------悩むのう



そう言いながらワシは脚部のスラスターを全開にしたのじゃ!!

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