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勇者の教育②

歴史の講義中に、いや講義時間終了ジャストに

部屋に乱入してきたのは、美しい金髪に整った小さな顔にはあまりにアンバランスなフル装備。

そして、その腕には冑まで抱えている。

剣術講師のセシル・ド・チェカルディだった。



「チェカルディ先生。まだ私の講義が終わっていないのですが。」

「そうなのか?しかし、スケジュールでは私の講義の時間だぞ?」



どっかの精神攻撃系マナー講師が独断で講義を延長した皺寄せがカレンガ先生にきてるな。

キャラの濃い先生に挟まれて可哀想に。



「分かりました。この国の歴史はあらかたお話出来ましたし、詳しい歴史に興味がおありであればいつでもご質問下さい」



「ありがとうございました。とても興味深い内容でしたので質問に伺わせていただきます。」



「さぁ!勇者様!早速行きましょう!」



見るからに熱血な女騎士に手を引かれて講義室を後にした。



剣の鍛錬なんやから、演習場みたいなとこで型の練習か素振りか?



「さぁ!こちらを装備してください。この日のために私が特注したんです!」



用意された白い鎧は装飾だらけで

実用というか美術品じゃないか。

しかもこの鎧、金属とは思えないほど軽い。厚手のパーカーくらいか?



「美術品に、この軽さ。大丈夫なんか・・・」





「美術品ではありません!ちゃんと実用できる最高級品ですよ!」



「・・・すみません。失礼しました。」

重いのがいいわけじゃないけど。防弾やからって渡されたベストが軽すぎたら不安やろ。



「あの、派手すぎませんか?」

「これでも装飾はかなり減らされたんですよ?もっと荘厳なデザインを提案していたのに。流石に陛下に言われたので変更せざるを得ませんでした。」



ありがとう!王様!!



「なんか、バフかかってる?」



不貞腐れていたチェカルディ先生の表情がパッと晴れ、誇らしげに鎧の説明を始めた。



〝体温調節〟〝自己修復〟〝軽量化〟〝堅牢〟〝耐久力上昇〟〝ステータス上昇〟〝注目〟〝発光〟が付いてるらしい。



なるほど。凄まじいスペックやな。

正直、見た目の恥ずかしさに目を瞑れるくらいすごい。



「この注目と発光とは?」



「それはですね!私が提案して付けてもらったんです!!勇者たるもの民衆の注目を集めて活躍を世に知らしめる必要がありますし、発光している方が神々しくていいと思いまして!ここだけは陛下に言われても外せません!」



王様ー!!

お前、何してくれてんねん!

なんとか受け入れられそうやったのに、羞恥心が逆転してもうたわ!



「どうですか?素晴らしいでしょ!」



「あ、ありがとうございます。」



苦笑いをするのが精一杯だった。

自信満々に自信作を紹介する美人騎士にNOとは言えなかった。



「あの、チェカルディ先生。フル装備で何をするんですか?」



「勇者様、私のことはセシルと呼んでください。

いくら勇者様といえど、レベルが低いうちは

討伐にはフル装備で行かれた方がよろしいかと思いますが。」



「え?討伐?」

「はい!実戦に勝る経験はありませんから!」



「・・・分かりました。

では私のことも勇者様と呼ぶのはやめていただけますか?」



なんか疲れた。



「承知しました!カズサ様にはこの街道沿いに出没するゴブリンを討伐していただきます。」



ファーストネームを許可したつもりはないのだが。

もうどうでもいい。



「ところでカズサ様は戦闘のご経験はおありですか?」



「ないですね。私の世界には魔族やモンスターはいないし、

平和だったので、本気で戦闘する機会なんてありませんでした。」



「それは、いい世界なんですね。この世界もカズサ様がそのように変えてくれると信じております!」



大きな期待を抱えて勇者カズサを真っ直ぐに向き直る。

見るものを虜にするような人懐っこい笑みを浮かべて



・・・。



「そうなるといいですね。」



「カズサ様なら出来ると信じてます!さあ、早速参りましょう!」



え?話聞いてた?戦闘経験ないってゆうてるやん!!



街道へは王城から馬車で1時間程かかるらしい。

王城から初めて外に出たが、町並みはテレビで見たような中世ヨーロッパのような雰囲気が漂っていた。



馬車が通る道は意外にも綺麗に整備され、中央には白線で車線がきっちり分けられていた。



しかもその白線がほんのり光を放っている。

セシルの話では、白線のおかげで夜間も暗闇になることなく街を照らしてくれているらしい。



行き交う人達の顔立ちもあまり馴染みのないヨーロッパ系の白人ばかり。



「王都の近くでゴブリンに遭遇するなら街中に出現してもおかしくなさそうやけどな。」



ふと浮かんだ疑問を口に出してしまった。



馬車に同乗しているセシルから

「王都はサンコッテ聖教によって浄化されているので滅多に魔物は出現しませんし、出てもとても弱いんです。」



「浄化。結界とかですか?」



「詳しいことは秘密にされていて私達にもわかりませんが、空気中の魔素も外に比べて薄くなっているので安全に暮らせているんですよ。先程説明した道の白線も教会が設置してくれたものなんですよ」



「国民の生活に深く関わっている宗教なんですね」



「初代国王様とともに魔王を討伐された僧侶が開いた宗教と伝えられています。古くからこの国を守ってくれていて国教になっているんです。」



英雄のパーティにいた僧侶が開いた宗教なら人気も出るやろうな。

でもセーフエリアはどういう仕組みなんや。



「そのうちカズサ様のパーティにも聖教から優秀な僧侶が派遣されますよ」



教会の成り立ちからして、意地でも派遣してくるやろうな。

変なのが来ないといいけど。



「関所に到着しました。私は手続きをしてきます。

街道へは徒歩になりますのでご準備を」



馬車を降り、1時間揺られ続けた身体をほぐしていく



手続きはあっという間に終わり、関所を抜けた。



すぐに街道を外れ、王都の直ぐ側と思えないほど茂った森を進んでいく。



「ところで、ゴブリンについて教えてもらえますか?」



「僅かばかりの知能とそれなりにナイフが使えます。

子供くらいの背丈で力も強くはありません。

ですが、数が厄介なので油断は禁物です。

単独でいるのは滅多になく、基本的に4~8体の集団です。」



初戦が集団戦闘ですか?

せめて1対1やんな?



突然セシルが立ち止まり手を上げ、拳を作る。



事前に説明を受けた。停止の合図だ。

ふたりともその場に息を殺してしゃがみ込む

セシルが小声で

「探知にかかりました。

11時方向に50m先に4体、おそらくゴブリンですね。

こちらに向かってきてます。気づいてはなさそうですね。」



いよいよか。



しばらくそのまま待機していると、本当に4つの小さな影が近づいてくる。



ゴブタみたいなゴブリンを期待していたが、

可愛らしさの欠片もない。

小柄な体は痩せ細り、苔色の皮膚は血と泥で黒ずんでいる。



口元からは腐った歯が剥き出しになり、

その目だけが獲物を探す獣のようにギラついていた。



このまま、ゴブリンが素通りしたところを後ろかr...



「ギャ!!」



な!?



まだ10m程距離があるにも関わらず4体全員が一斉に俺を凝視した!



「見つかった!?ゴブリンに探知スキル持ちなんてないはずなのに!」



セシルが立ち上がり剣を抜く。



「カズサ様!本当に危ない時は助太刀します。頑張ってください!」



「・・・え!?」


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