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勇者の条件

兵士に案内された部屋はなかなか豪華で広い。

ベッドには天蓋までついている。



部屋には専属のメイドが付き、常に部屋には人がいる。



んー。落ち着かん。



「あの、用があれば呼びますので席を外してもらえませんか?」

「いえ、お側に控えてお世話するように命じられていますので」

メイドは目を伏せたままピシャリと言い放った。



とりつく島もないか。思いっきり監視やんけ。



仕方なく天蓋の中に入り、ベッドに横になった。



軟禁されている間に状況を整理しよう。



仮にここがラノベのような異世界だとして、俺は向こうの世界でどういう扱いになってるんや?



おそらくこっちにきてるのは俺だけのはず

娘は、突然いなくなった俺に対してどう思うのだろうか

妻には、どれほどの負担をかけるのだろうか

家のローンは、、仕事は、、

一つ一つ問題をあげるたびに心臓を握りつぶされそうな感覚が襲われる。



異世界ものは帰れないのが定番やけど

全部が全部そうではない、もし帰れるとしたらどの時点に?ここで過ごした年月がそのまま経過してるなんてことないやんな?



消えた俺と入れ替わりで帰れるとか?

いや、そんな都合のいいことはないやろう。



いやいや、他の創作物を当てにして何になるねん

こういう時は最悪の状況を想定して対策を練った方がいいな。

今のところ考えられる最悪の状況は









帰れない。



その言葉が頭に浮かんだ瞬間

頭が真っ白になり、枕を引き裂いてしまいそうになった。



「違う、それが最悪じゃない...思考を止めるな。」



現時点で最悪なのは、

このまま冤罪かけられて

わけもわからず殺されることや。



かと言って、今逃げだせたとしても

この世界の事が全くわからん状態ではすぐに捕まるか

野垂れ死ぬのが関の山やな。



ひとまずは、従うふりして情報収集やな。

調伏の呪鎖とやらはあの召喚士の独断みたいやし

いきなりかけられることはないと思いたいな。

けど、油断は出来ひんな。



ここに返す手段があろうとなかろうと自分で帰る方法を探す。

返すって言うて

ただ遠くの大陸に放り出されるなんて物語もあったしな。

誘拐犯の言うことなんか信用出来ん。



まずは情報収集やな



数日間部屋から出ることも許されず、メイドに話しかけても会話は長く続かない。

そのメイドも午前午後で入れ替わり、関係性の構築なんて出来なかった。

これといった情報は引き出せないまま国王との謁見が決まった。



コンコンコン



「失礼します。勇者カズサシロカネ様、国王陛下から謁見の準備ができたとのことです。」

身なりの整った使用人が軟禁の終了を告げに来た。



「こちらに着替えていただきます。」

メイドが使用人から服を受け取り、服を脱がそうとしてくる。

「ちょ、自分でするから!」

「いえ、私の仕事ですから」



「えー...」



真っ白なタキシードにあちこち銀の装飾が施されており、マントまで付いている。



なんというか...勇者っぽいな。



「では謁見の間にご案内いたします」

「はい...」



廊下ではメイドや貴族っぽい男たちがひそひそと話す様子が見える。



正当防衛とはいえ、召喚士長とやらを殺したのはまずかったか?

いや、そもそもあれは事故みたいなもんやろ。



素直に呪鎖とやらを受け入れるという選択肢はないし、考えても仕方ないな。



巨大な扉の前に案内され

「勇者!カズサ シロカネ様入られます!!」

使用人の掛け声とともに巨大な扉が開かれた。



中には廊下にいた貴族っぽい男は比べ物にならないくらい着飾った者たちと

その奥に玉座の前に立つ国王の姿が見えた。



国王の前まで進み、軽く一礼しておく。

この世界での礼儀は知らないし、よく知りもしない国王に跪くつもりもない。



「私はこのシヴィル王国を治めるヴィクトール・クロード・シヴィルだ。この度は勇者召喚に応じてくれたこと感謝している。そして、召喚士長の無礼を改めて謝罪させていただきたい。」

そうして階段を下り、頭を下げた。

周りの貴族がざわついているが止める者はいない。

「謝罪は受け取りました。召喚士長の件は互いに水に流すということでよろしいでしょうか」



「無論である。寛大な対応重ねて感謝する」



「一つ引っかかることがあります。勇者召喚に“応じた”とはどういうことですか?私はそのようなつもりはなく。突然この世界に連れてこられたと思っています。」



国王が頭を下げた時以上にざわつく貴族たち。

「勇者ではないのか!?」

「私達はどうなってしまうの?」

「まさかハズレなのか?」

この貴族達は自分のことばかりか?ってかハズレは失礼すぎるやろ!



「そうであったか。こちらとしても本人の意思を無視して召喚するつもりはなかったことを理解しておいてほしい。召喚士長の話では、異世界の勇者たる素質を持った者が召喚に応じた場合に術が成功すると聞いていた。」



話を聞く限りでは、召喚士長が国王に嘘をついて召喚の儀式を強行したような感じか。

この国王は貴族達に比べると倫理観を持ち合わせているようやけど。



「先程も申し上げた通り、私は召喚に応じたつもりもありませんし、意思を問われた記憶もございません。勇者の素質というのはわかりませんが、元の世界に妻も幼い娘もおります。ですので、可能な限り早急に元の世界へ帰していただきたい。」



「なんと身勝手な!」

「とても勇者の言動とは思えない!!」



貴族達が口々に非難してくるがブーメランにしか思えない。

それに、勇者を名乗った覚えはない。



「勝手な発言は慎め!」

国王の一喝で喚いていた貴族達は口を噤んだ。



「臣下の無礼、謝罪させていただく。シロカネ殿の事情は理解した。結論から申すが、貴殿を元の世界に戻す方法はないのだ。召喚が歴史上初めての成功であるため帰還の方法は更なる研究が必要になるのだ。」



まぁ、そうやろうな。

部屋でこの展開を予測してなければ激昂してしまっていただろう。



「そしてその研究も、ほぼ確実に長期化すると思われる。」

「...理由を伺っても?」



「今回死亡した召喚士長はあれでも、正真正銘トップの召喚術師だったのだ。勇者召喚の儀式も彼奴が編み出したものであり理論を理解しているのは彼だけだった。」



マジか。アイツそんな優秀やったんか。



「そのため、シロカネ殿の代わりに他の勇者を召喚することも出来ない状態なのだ。」



あー。嫌な予感やぁ。



「不本意にこの世界に連れてこられたシロカネ殿に頼むのは筋違いであるのは理解しているが、どうか勇者としてこの世界を救って欲しい。我々も帰還方法の研究は最優先で行わせることを約束する。」



この場の全ての人間が頭を下げた。



「...そちらの事情はわかりました。しかし、こちらの世界のことを何も知らない状態で勇者を引き受けるわけにはいきません。ですので、知識や技術の講師をつけていただけますか?」



これ以上ゴネても意味ないしな。

お互いこの辺が落とし所やろ。



「承知した。明日にも担当講師からカリキュラムを提出させよう。その前に、シロカネ殿のステータスを鑑定させてもらっても良いだろうか」



「ステータスの鑑定...ですか?」



いよいよ異世界転生っぽくなってきたなぁ



「そうだ。詳しい説明は鑑定士から説明させよう」



貴族の中から紺のローブを着たモノクルをかけた爽やかイケメンが出てきた。



「鑑定士のバロン・レーンと申します。鑑定ではシロカネ殿の、クラスとレベル、スキルとギフトの有無が分かります。ギフトの内容は本人にしか分からないため自己申告となりますが、事実確認はさせていただきますので嘘はつかないようにお願いいたします。」



なるほど、この世界にはプライバシーはないようだ。

ギフトがあれば、その内容が肝やな



「分かりました。自分で確認するにはどうすればいいのですか?」



「ステータスオープンと念じるだけで頭に浮かびます」



言わなくていいのか。ステータスオープン

名前:白銀 上総 76.4

年齢:22

クラス:勇者

Lv.5

HP:20

MP:10

ATK:50

DEF:50

RES:10



スキル:

回復魔法Lv.2

呪い耐性LV.1



ギフト:生物のステータスに干渉し、奪い与えることが出来る



これが俺のステータスかぁ。

名前の横の数字はなんや?EXP(経験値)か?

やっぱ勇者なんか。いや、ここで勇者じゃない方が問題や。



なんか物理に尖ったステータスやなぁ。

元の世界では筋トレしてたし、あんまり違和感はないな。

RESはレジストかな?魔法防御的なステータスやと思うけど低すぎるやろ!



回復魔法は元の世界の職業の影響かな

ギフト...これはチートっぽいなぁ。

このまま申請したら、変に危険視されたり避けられたり厄介なことになりそうやな



「それでは鑑定させていただきます。大丈夫だとは思いますが、レジストしないようにお願いしますね」



イケメン鑑定士がにこやかに手をかざして鑑定を始めた。

「やはり勇者で間違いありませんね。スキルは回復魔法のレベル2と呪い耐性をレベル1 をお待ちですね。...ギフトもお持ちのようです。」



「おぉ!勇者!!これで一安心ですな」

「貴重な癒しのスキルが使えるのか!」

「勇者のギフト!強力なものに違いない!魔族を蹴散らしてくれる!!」



いちいち貴族が反応する。

やっぱり出たな敵対勢力は”魔族”か



「・・・ギフトの内容についてお教えいただけますか?」



「私のギフトは、ステータスの成長補正です。スキルや能力値の上昇に補正がかかるみたいです」



「思っていたより随分地味だな。」

「ギフトはハズレのようですな。」

「しかし、努力して伸ばすのは勇者らしいではありませんか」



貴族共うるせーわ!あとハズレって言ってる奴!顔覚えたからなぁ。!



「ありがとうございます。ギフトの内容については適宜鑑定を行いながら事実確認を行いますのでお付き合い願います。」



「承知しました。国王様、講師の件をよろしくお願いします」

こうして、この世界での生活が始まった。




国王との謁見の翌日

「失礼致します!!講師陣揃いましたのでご挨拶に上がりました!私が教養、マナー担当で講師筆頭のフィリップ・ル・ソシャでございます。」

講師たちを引き連れて先頭の女性が鼻息荒く宣言した。



「...あ、はい。よろしくお願いします。」



朝5時半にゾロゾロ引き連れて突撃してきやがった。

これがマナーの講師やと?


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