ふたり9
「さっき、一ノ瀬さん…なんて言った?」
『「オモシロイネー」って言ってた』
「違う!玄関前だよ」
『あー、「信じてみても良いかも、オモシロソウダシネー」って言ってた』
「そんな言い方してねーだろ!なあ『ふたり』もしかしたらさ、一ノ瀬さんに話したら俺たちのこと信じてくれるのかな?」
『まあ、やってみても良いと思うけど、人の言葉を鵜呑みにして騙された事を後で後悔しても、それはお前の責任でしかないんだから、よく考えとけよ若造』
「何が若造だよ。お前も同じだ。もし、俺らのことを認めてくれるなら、もし本当にそうなら。たぶん仲良くなれたりするかな…」
『まあ、やってみても良いと思うけど、人の言葉を鵜呑みにして騙された事を後で後悔しても、それはお前の責任でしかないんだからな?よく考えとけよ若造』
「お前はNPCか」
もし一ノ瀬さんに『ふたり』を認めてもらえたら、きっと変われる。今まで苦しんできた俺はきっと変われるはずだ。なら、あの言葉を信じなきゃ行けない気がしている。
『ひとり玄関にて立ち尽くしている僕は、腫れた心臓の大きな鼓動を感じている。額から流れる汗を拭い取り、じめじめとしたこの玄関を抜け、きっと冷房が効いているだろうリビングへと向かう』
「涼しいぃ」
『涼だけに?』
「うるせえ、」
『先ほどの言葉を思い出せば、冷めていたはずの心は暖かい。安堵したひとりという空間に、今日初めて感じる空腹。気づけば、朝に母さんが作ってくれたお昼の弁当も食べていなくて空腹。せっかく母親が作ってくれた弁当だ。それを鞄から取り出す。そして、今更リビングで食べる事にした』
「あー、腹減った」
『お前、何か勘違いしてるかも知れないから言っとくけど、たぶんあの子はお前が思うほどの奴じゃない。言っちゃえば好奇心程度の浅はかな上塗りだ。
恋は盲目と言うけど、今のお前にはピッタリ言葉だな』
「別に良いだろ、賭ける価値はあるし。少なくとも、お前の言う正解を見つける為のメリットにはなるだろ?」
『へー、まだ探してたんだね。そんなくだらない正解。とっくに諦めてると思ってた』
「強がるなよ、お前が1番解決したい癖に」
『それは違う、正解を見つけないといけないのはお前だよ、涼』
「はあ?おれが?ふざけんな。お前が黙ってくれればぜんぶ問題ねーんだよ」
『また始まりそうな口喧嘩。目が冴えている僕は、今日も夜歩くことを決めている。そして、今日に起きた恋愛と言うくだらない物語の肩書きを探したい年頃。僕はやっぱり気持ち悪い』
「気持ち悪くねーよ!皆んな望んでるだろ。そのくらい望んだっていいだろ」
どちらかと言えば夜歩こう。どちらかと言えば、『ふたり』の言う通り目が冴えている。
そして、どちらかと言えば恋愛と言う正解も気になっている俺。
人と関わろうという気はしないのに、君のあの言葉で全て解決できそうなつもり。
ただ、今は明日の君との会話の為に考えていよう。




