ふたり5
『つまらない教室の前で、僕は深呼吸をする。
そしてドアを開けると、まだ朝礼前の雰囲気に緩んでいる幾人かのクラスメイトたちが僕を見てくる。
そして社交辞令な言葉を吐くんだ』
おはよー。
「おはよー、外暑くない?」
あつーい。
『短い挨拶が終われば、そのクラスメイトたちはまた自分たちの話。そして取り残された僕は、不安を紛らわす為に自分の持った荷物を自分の机に置く。この窓側の一番後ろの席は、誰からも視線を置かれることが少ないから落ち着くんだ。
隅にいる埃みたいな人間。それが僕のクラスでの存在意義』
「そんな訳ねーだろ、ぶっ飛ばすぞ?」
俺は机に伏せたまま、小さな声でふたりに文句を言う。こんな文句を言ったって意味はないけど、言わないと、本当に俺自身がそう思ってしまっているんじゃないかと不安になる。
だからこれは、たぶん。防衛本能なんだ。
『なら行けばいいんじゃない?進藤優のところ。まあ、そんな勇気もないでしょ?だってほら、お前が机に伏せてる間も、”進藤 優”は誰とでも楽しそうだね』
「何が言いたいんだよ」
『なんでもないよ、ただ…』
「ねえ、涼くんおはよっ、今日も寝不足?」
「あ、おはよう。一ノ瀬さん」
『あー、でたでた。僕の嫌いな【一ノ瀬 怜奈】。
そんな君はいつものように面倒臭い。人と関わりたくも無いのにわざわざ反対側の席にいる僕なんかに挨拶しに来て、いったい何を考えているんだこいつ、なんか、腹立つな。イライラしてきた。
なんなのこの女、友達沢山いて学校でも楽しんでますよアピールですか?はあ!?
そもそも、あんた見たいな人間が僕の気持ちを弄ぶな!可哀想だろ!』
本人に聴こえもしない不満や悪口を吐くうるさい『ふたり』。一ノ瀬さんのことを好いてはいないのは確かだろう。ただ、俺は一ノ瀬さんのことは結構好きだ。たとえそれが『ふたり』の言うように、君が俺を弄んでいたとしても。それはそれで良い。
だって、可愛い君の顔、長く伸びたその綺麗な髪の毛。そんな君に嘘はないと思えるから。




