俺とふたり5
つまらない教室の前で、僕は深呼吸する。
そしてドアを開けると、まだ朝礼前の雰囲気に緩んでいる幾人かのクラスメイトたちが僕を見てくる。
そして社交辞令な言葉を吐くんだ。
おはよー!
「おはよー、外暑くない?」
あつーい!
「だよなー」
短い挨拶が終われば、そのクラスメイトたちはまた自分たちの話で盛り上がる。そして取り残された僕は、不安を紛らわす為に自分の持った荷物を自分の机に置く。
この窓側の一番後ろの席は、誰からも視線を置かれることが少ないから落ち着くんだ。
隅にいる埃みたいな人間。それが僕のクラスでの存在意義。
「そんな訳ねーだろ、ぶっ飛ばすぞ?」
俺は机に伏せたまま、小さな声でふたりに文句を言う。文句なんて言ったって意味はないけれど、言わないと、本当に俺自身がそう思ってしまっているんじゃないかと不安になる。
だからこれは、防衛本能なんだ。
なら行けばいいんじゃない?進藤達也のところ。まあ、そんな勇気もないでしょ?だってほら、お前が机に伏せてる間も進藤達也は誰とでも楽しそうだね。
「何が言いたいんだよ」
なんでもないよ、ただ…。
「ねえ!涼くんおはよっ!今日も寝不足?」
「あ、おはよう。一ノ瀬さん」
僕の嫌いな【一ノ瀬 怜奈】はいつものように面倒臭い。人と関わりたくも無いのにわざわざ反対側の席にいる僕なんかに挨拶して来て、言った何を考えているんだこいつ、腹立つんですけど。
なんなのこの女、友達沢山いて学校でも楽しんでますよアピールですか?はあ!?
そもそも、あんた見たいな人間が僕の気持ちを弄ぶな!可哀想だろ!
うるさい『ふたり』は、一ノ瀬さんを好いてはいない。でも俺は、一ノ瀬さんのことは結構好きだ。たとえそれが『ふたり』の言うように僕を弄んでいたとしても。だって、こんなにも可愛い君の顔に、嘘はないと思えるから。