ふたり47
感覚的で、感情的。俺の今感じている感覚と感情はどこへ向いている?『ふたり』はどうして存在する?俺の中だけ、変な奴がいて。そいつとの馴れ合いが当然になっている。
それは現実で、感覚的とはまた別の…それは事実か。
でも、俺のこの感情も感覚もまた何処かにある事実で…。
憎悪、死、嫌味、慈悲、憐れみ、殺意、絶望、
これは、どこからきた事実だろう。
俺は、誰の為の、おれ…?
「涼?お腹空いてないの?」
「えっ?お腹空いてるよ。ちょっと考え事してて」
『早く食べなきゃいけない気がしている。唐揚げの匂いも、味噌汁の落ち着く雰囲気も目の前にして、進まない箸は母さんを困らせている』
「母さんも、今日は一緒に食べようかしらっ。あと、ちゃんと聞かせて?最近の涼のこと」
『この一言だ。母さんの一言が原因になる気がする』
「話してどうなるの?なに考えてんの?父さんは?母さんはなにが…。生きてて楽しいの?知らないふりして、辛くないふりして、苦しくないふりして、楽しいふりして、幸せなふりして…後悔していないふりだけ…」
あぁ、感情って奴だ。引き金は母さんだ。
怒ってなんかない、疑問をぶつけてるだけ。不満も隙間から逃がしていればいつか治る。
「母さんね、涼の優しいところ。大好きよ?」
「優しい…。あー、そうそう。今日昼飯は怜奈と食べた。卵焼きの作り方教えて欲しいって、優しい味がするとか言ってたけど、俺は別に優しくないから。そんな味はわからねえ」
ごちそうさまでした…。
『何も口にしてないじゃん。気を張って意味ない行動するのはやめろ。
「僕はお腹空いてるよ」そう言い聞かせても、今この雰囲気で食事をすること自体が何者かを破裂させてしまう様な気がして、こんな思考でお腹いっぱいだ』
「涼、ご飯このまま残しておくから…。お腹空いたら食べちゃいなね」
母さんの声。反応もしたくない。この感情と感覚は?
誰だ、何者だ?どこから来てる?
黒くて、醜くて、何処かにある言葉。『ふたり』の…なにか。
なんで話さないの?なあ『ふたり』。俺はお前を消したいんだ。
部屋…。読み終わった本なんか持って、何してんの?
知らない、知らないけど。何か言葉を探したいから…。ただそれだけ。それだけの事のはず。
『深呼吸に余裕を持たせている。自分の呼吸がいつも通りになるまで、本の重みと匂いを嗅いでいたい。そして、明かりもないこの部屋で黒くなってしまいたい』
「なあ、俺って邪魔か?」
『自分を被疑したって何者にもなれない。他人の目を気にしすぎる臆病者。
言うまでもなく、僕は今、僕自身を被疑している』
「お前に言ってるんだよ…」
『邪魔だ。ただ、慣れない感覚を共有したってなおさら意味はない。そうだ、面白いことを考えた。一ノ瀬怜奈を襲って、嫌がらせをすればこの気持ちから解放されるかもしれない。原因はいつもあいつだった』
「そうじゃない、原因は…ぜんぶお前だよ」
『なにが?僕の何が悪かったんだ。存在が悪いのか?もしかして僕を殺そうとしてる?もしそうなら、殺されるのはお前のほうだ。仮に僕が死んでもそれは変わらない事実だ。感覚的なものじゃない』
「だからあ!!そんなのどうだっていいじゃねえかよ!!感覚的にとか、物理的にとか…知らねえんだよお!」
『あっ!僕は勉強机に駆け出す。引き出しを開けて目についた凶器。衝動的に握るもの。カッター。迷いがない僕の思考。今、僕のナレーションが追いついていないのが証拠っ!くっ…!?』
がっん!ガッダン!
ぐちゅぐちゅぎゅっ、ぎゅっ。




