ふたり46
『本の文字が読めるほどの薄い灯りのなかで、ベットに座り文字を眺めている。文章と言う鮮烈さに感動してしまうのは、本の匂いも相まっての事だろう。いつか、自分の書斎でも持ってみたいと思うばかり。
本をゆっくり閉じる。僕の言葉が聞こえた瞬間、既に小説を読んでいないと言うことだ』
「読み終わったな…。けっこうおもしろかった」
『内容まで理解してたんだね、小説好きなんじゃん?無駄とか言ってたくせに、ちょっとは僕の有益さにも気付いてもらわないと。まあ、お前になに思われようと大した事じゃない』
「なんか、最近お前の声に鬱陶しさがなくてさ、自然っていうか?前にも言ったろ?一ノ瀬怜奈と会ってから頭が痛くならないって」
『そんなの知らない、初耳だ。耳ないけど。まあ、だんだん近づいてるんだよ。僕らが分離できる時がね…』
「そうなの?そんな感じしねーけど、『ふたり』、お前がそう感じるって事はそうなのかな?俺にはない感覚だよ」
『はあ、感覚か。そんなくだらないこと考えてないで、もっと現実的で物理的な物事に目を置くべきなんじゃないか?例えばそうだな、一ノ瀬怜奈の裸姿とか…』
「それはただの最低な奴だろ、それに一ノ瀬怜奈の裸を見たって、慌てふためくのはお前だろ?」
『確かにそうかもしれない、ただ感覚を探すよりも手間はないし。どちらが正解に近いかを考えれば、僕の案の方が、現実的だろ?』
どうせ人間で、所詮はひとつ。偽りや後悔が生まれるこの世界…。こんなにも捻くれた考えなんか捨てたいのに、今流れ込んできている思考が止まらない。これは小説を読んだせいなのか?
なんだっていいから空っぽのままがいい。どうしようか、何か別のことを考えて…。例えば…君の。
は、はだ。はだはだかっ。
「うえーい!どうでもいい!ぜんぶ…」
『なにしてんの?気持ち悪いんだけど。そんなことより、この匂いはそろそろ晩ご飯。今日は唐揚げだろう』
「こんだけの匂いでよくわかるよな、それはどんな能力なんだよ」
『また感覚の話をしなきゃいけないの?』
「いいや、もういいです…腹減った」




