ふたり41
「なあなあ、お前は彼女のところに行ってやれよー」
『絡んでくる進藤の腕を避ける』
「いちいち暑苦しいなあ、あんまり近寄んなあー」
「なんだよ、みずくせえなあ」
「お前は汗臭いんだよお…」
「えっ!俺ってくせーのか?」
『キャラメルフラペチーノのが進むのは、暑苦しい温度を紛らわせてくれるから。目の前にいる君の後ろ姿はつまらなそうだ。でも、この距離感の方がお互いに尊重し合える気がしていて、文句も付けたくはない』
「そうだ、日焼け止めとか塗る?海行ったら泳ぐでしょ?」
「当たりめえだろお!泳がない奴は来た意味がない奴だ!日焼け止めは!いらねー!日焼けしない奴は海に来た意味もねーよ!」
「そこまでは言ってないよ…。じゃあ僕は日焼け止め買っとこうかな。あとあと痛いのは嫌だし」
「あっ、涼くん?」
「ほーら、行ってこい」
『突然、振り向き声を掛けてくる君に目が止まる。そして、相変わらずお節介な進藤は僕の背中を強く押した。僕は進藤をおいて前にいる君へ近づいた』
「なに?」
「眠気は覚めた?」
「あっ、確かに、眠くないかも…」
「よかったよかったあ」
『君がそう言うと、またスマホを弄り始めた。次の君の言葉を待っていたが、その後は何もなさそうで。つまらなそうにしている』
「怜奈ってさ、いつもスマホ見てるけど。普段なに見てるの?」
「んー、見てると言うか。スマホ見ながら考えてるだけ。旅行のこととか、予定とか」
「そ、そうなんだあ」
『で?なんだと言うのだろう。会話の始め方は悪くないけれど、返答が返答であって、これ以上もそれ以下もなく。ただ今は眠くはなくなってしまった気分に縋っている』
読めないし、測れない距離は歩きずらい。
何かまた話題を生んでくれそうな言葉は、何かあるか?
「お腹すいたねえ、涼くん。ご飯食べに行かない?」
「今から?別に良いけど」
「別に?なにそれー」
「僕もお腹すいたから。食べに行こう」
「おー!いこーう!」
君は、時々テンションおかしいんだよな。
なに考えてるんだかわからない。
『僕の家に着くや否や、気を遣っていただろう進藤は直ぐに道を真っ直ぐ。歩き去っていく。そして、一度君を外で待たせて、一度家の中に入った僕は今日の朝を思い出した』
「昼飯ある〜」
そうだ。朝、母さん言ってたな。
冷蔵庫、れいぞうこ。
『冷蔵庫を開ける。真ん中に置かれたラップをされたお皿。卵焼きにウインナー。ほうれん草のおひたし。昼ごはんの準備は万全と言っても良い。決めつけに、炊飯器には保温されているごはん』
「なんだこれ…」
『ラップのされたお皿の上に紙がテープで貼ってある。この場合テープは剥がしづらい。剥がすまでもなく、皿を持ち上げて冷蔵庫から取り出す』
・昼ごはんこれ。卵焼きいっぱい作ったぜっ、怜奈ちゃんと食べても良いよー。ごはん保温してあるぜっ。
『お節介な…』
「さそう?飯…」
『僕は誘う勇気がない。ただ母さんがせっかく作ってくれたし、これこそ話し合いというものが役に立つ時なのかも知れない。どの道、どうなるかは知らない』
「どうなるかわからないから聞いてんだよ…」
『ふたり』にも分かるわけもないか。
まあ、とりあえず一言。君に言えば良い。




