ふたり38
「おー!涼おおお!夏休み間近に遅刻かああ!珍しいなぁ!」
『門番である男の体育教師、岡田先生は閉まり切った校門を元気に開ける。そして、怒号なのかもわからない満面の笑みで僕を出迎えている』
「すみません、道にいたお婆ちゃん観察してたら遅れました」
「だっははは!それはただの変質者だなっ!それで遅刻の理由は!なんだ!」
「寝坊です…」
「正直でよろしい!よしっ!入れ!」
久しぶりの遅刻だ。それよりこの先生はなんでこんな元気なんだよ。
『誰もいない静かな下駄箱。階段を上がっていけばクラスから聞こえる先生の声。あの空気の中で教室に入るのは気まずさを感じる。だけど、そんな気まずさを感じ取られない様に、眠そうに、いつも通りこの教室入ろう』
ガラガラ…。
「すみません、寝坊しましたあ」
おはよー。
おー、涼が遅刻すんの珍しいなあー。
今日も眠そうだなあ。
「はーい、早く席に着けー」
『担任の女教師、山下先生。特に何か言ってくるわけでもなく。すんなりとクラスの空気に溶け込んだ僕はいつもの席。網戸になった窓をボッーと見つめる』
ねむい。疲れが増してる。
あと3時間。こうしていれば今日はもう終われる。
そろそろ机に伏せて寝てしまおう。
…。
がちゃんっ!
「おきろ、昨日はごめん。その…殴っちゃて」
「あぁ?吉田かあ…痛かったなあ」
『顔も上げず、吉田の雰囲気と声に耳を貸す』
「あんた、痣になってるじゃん。本当に…ごめん」
「いいよ、目立たないし…一ノ瀬さんにも気づいてもらえなかったし。あー、怜奈にも気づいてもらえなかったし」
「なんで二回言ったのよ。それより旅行計画なんだけどさ、四人で海見に行く感じだから。詳しくは今日の昼、喫茶店で話すから」
「あー、わかった」
『謝罪をしに来たのか、自分の予定を話に来たのか。吉田は僕に面倒事を押し付けた後、直ぐに去っていった』
「ねむい、本当に眠いんだよ…」




