ふたり37
『朝、目がひらいている。全く眠れない夜だった事に後悔している今に、網戸から入り込んだ朝の風が僕の左頬を強く撫でてくるのを感じる。今日は身体を起こす事も億劫。靡くカーテンから漏れた光が眩しく、重たい瞼をさらに重くさせている』
「今日は学校休むんだっ!」
『それが良い。だけど昨日に君と約束した事を思いだ…
「思い出さない!そんなもん忘れた!」
『そうだ、僕は約束を平気で破るクソ野郎だった。それに、今日を休んでも出席日数に問題があるわけでもないし、明日の夏休み前日に顔を出せばズル休みを疑われない可能性は高い』
がちゃっ!
「涼お!遅刻しちゃうよー!」
「母さん!今日は休む!もう決めた!」
「なによ急に。今日は午前中だけでしょー?馬鹿なこと言ってないで支度しちゃいなさい、母さん今日はもう仕事行くから。あ、休むなら学校に連絡入れなー。あと、昼ごはん冷蔵庫に入れてあるからレンジであっためてから食べなさーい」
『母さんの後押しをもらって頑なになった僕の意思はもう曲がらない』
君に連絡入れて、本当に今日は休もう。
そっちの方が楽だ。それに、久しぶりにズル休みをするとなると、気分が良くなってくる。そんな感じだ。
「あー!怜奈ちゃん!昨日はごめんなさいねー。あっ、涼のやつ起こして来てくれる?「今日は休むんだあ!」とか言って起きてこないのよー」
『部屋まで届いてくる母さんの声と言葉に眉間に皺がよった。ベットの上で天井を見上げている僕は、嫌な予感がした。いや、予感ではなくて、そうなる事を確信した』
まずいっ!母さんがまた余計な事をしてる。でも、もう休むモード全開だ。身体がベットにくっついてる。動きたくない。
「家入って良いですか?」
「いいわよー、あいつの部屋は二階上がって正面だから。涼の部屋って書いてある名札吊るしてあるからわかると思うわよー。じゃあ私は仕事に行って来ますー」
「いってらっしゃい、お気を付けて」
『会話がダダ漏れだ。こうなると君は本当に家に上がって来そうだ。それに、母さんは本当に余計なことしか言わない』
うわ、玄関が開いた。本当に来るのかよ。
二階へ上がってくるこの足音は知らない足音。
母さんのものではないのは確実だ。
『今の状況を把握し始めてはいるけど、寝不足で極まった僕の目は頑なに天井を見つめている。そして、君がこの部屋に入って来ても決して学校へは行かないと言う意思を強く保つために、毛布をぎゅっと握りしめている』
『コンッコン。
ノックの音が響いた。』
「おじゃまあーしますよーっ、って…。なにしてんの?」
「休むっ!」
『揺るぎない!』
「じゃあ先言ってるー、進藤くんと綾音ちゃん仲直りしたらしいよ、あと旅行の話したいって言ってえー、綾音ちゃんが」
「準備するかあ…」
『簡単にへし折られた意志は僕を起き上がらせた。起き上がる頃、君が階段を降りて靴を履き直している音がしている。そして、制服に手をかけている頃には玄関が開く音。君は本当に先に行った』
あぁ…。眠いだけだ。午前中だけ頑張ろう。




