ふたり34
「あっ、なんで…」
ピーンポーンっ。
「あーー、押しちゃった…」
“はーーいっ?どちらさまで?”
……。
『まだ玄関から一歩も出ていない僕。頭の中、回らない思考に「諦める」と言う選択肢だけが肥大化していく。そんな中、背後から近づいている母さんの足音は面倒ごとの予兆』
「もう、来ちゃったよ…」
「あら、あらら!一ノ瀬さん所の!怜奈ちゃんでしょー!」
「は、はい。夜遅くにすみません…涼くんに用があって、ちょっと」
『それは余計な言葉だ。酔ってる母さんはうるさくなりそう。もう既に、なるようになるであろうこの状況が落ち着くまで、僕は黙り込んだ方が良い』
「そーだったのー?涼う!いつも夜散歩しに外でて行くと思ったら、やっっぱり!そーゆーことー!別嬪さんの彼女なんか作ってえ!」
「はあ…ごめん。この人酔っ払ってるから」
「あ、あの…。また卵焼きお願いします」
「きゃあー!そーゆーことだったのー!?今度家に泊めてあげな、きゃああー!あははは!」
「母さん!もう戻って良いから!」
「ごめんなさーーい!お邪魔しましたー、って!ここ私の家なんですけどおー!」
「さ、最悪だよ。ほんと、もう…苦しい」
「ご機嫌そうだね、涼くんのお母さん」
『嵐が自己完結して去って行く。苦し過ぎる家庭を見られ、君と目を合わすこともできなさそう。それより、本当にどうして君がこんな時間に僕の家なんかに来るんだ。タイミングもそうだけど、やっぱり理解が追いつかない』
まじで…本当に。どうすればいい。
何か解決できそうな言葉。一言。
「とりあえず、歩こう…」
「うん、いいよー」




