ふたり29
キーンコーンカーンコーン…。
『五時限目の始まるチャイム。
進藤はそそくさと自分の席へと戻っていく。
それにしても、まさか夏休み中の旅行の話で喧嘩になったとは思っても見なかった』
原因はたぶんあれだ。吉田は俺達を邪魔と思っているってこと。
付き合いの長いあいつら二人の関係。
偶然に俺と君が付き合い始めてしまい、「じゃあ四人で旅行行こう!」。この偶然が”はずれくじ”だった。
まあ、吉田も俺たちの事を邪魔と思っているわけでもないのだろうけれど、簡単に吉田の気持ちを見てみれば、進藤と「二人で旅行に行きたかった」って事だ。やっぱり”はずれくじ”を引いたな、進藤優。
こんなくだらない推測をしても吉田が冷静になるわけでもないから、後はなるようになるだけだろう。
キーンコーンカーンコーン…。
『放課後になって、不貞腐れて直ぐに帰ろうとした吉田を止める』
「吉田、ちょっと話があってさ」
「なによっ!どうせ優の引き金でしょ?無理っ!」
「違うってば、ちょっとだけ…」
「じゃあなに…バイトあるから早く話して」
『短い会話のくせに、僕と同じ身長差の吉田からは迫力のある目つき。これほどの圧迫感があると、流石に怯んでしまいそうだ。まあ、ただ進藤からの入れ知恵のまま、解決させれば良いだけで、解決しなくても僕は知ったこっちゃない』
「えーっとさ。別に僕らが邪魔なら二人で旅行行っても良いし、僕と怜奈も関係ないから…。そのー、楽しんできてね」
「はあ!?てめえ!このっ!」
ガンっ!
「うえあっ!」
「りょっ!涼おおお!」
『解決もクソもなく、空回った会話になったことは、吉田綾音の表情と、僕の左頬にに感じだ鞄の衝撃で理解した。そして、陰で見ていた進藤が崩れる僕を庇い受け止めた』
「あとは、頼んだぞっ。しん…どう」
『進藤に抱えられ、態とらしく力尽きる僕。何か面白いことがあると思えば、本当に面白い事になっているこの状況。何気ない雰囲気は正解に近づきそうだ』
「やっぱり優から頼まれたんだ!優、サイッテー。もう知らん!」
「ちょっ!綾音!待ってくれよー。頼むから話し聞いてくれってば!」
「いたいっ、うぅ…」
『進藤に抱えられていた僕は、吉田を追う進藤に弾き飛ばされ、教室の床に転がった。でもこれで、二人が会話の出来る猶予は生まれたはずだ。そろそろ帰って、僕は小説でも読もう。いや、帰りは君がいるだろうか』
「涼くんだいじょぶ?」
「見てたならもっと早く助けてくれても…」
「ごめん、どうなるのかなって。気になったから」
「まあ、大丈夫でしょ。明日には仲直りしてるよ」
「そうだね、帰ろっか」
『立ち上がった僕は、制服に着いた誇りを叩き。待ってくれていた君と帰る事にした』




