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ふたり23


「はいどうぞ、召し上がれ」


「い、頂きます…」


『楽しみなはずの夕食、具もゴロゴロと入ったカレーに、多く盛られた白米。そして、カレーに浸かるは脂の塊。カツっ!』


これは、辛い。でも、お腹はそんなにいっぱいじゃないし。食べれるけど、なんか、損をした気分だ。

まあ、感謝して頂きます。


『カレーに浸かったカツをスプーンで半分に割り、一口。これは堪らず白米だ。口いっぱいにカレーと豚肉の甘み。これ程までの罪悪感は他にない。カレーパンと比較していた僕自身が馬鹿だった様だ』


「うまああい、幸せだあ」


「そう、良かった。じゃあ母さんも、頂きます」


『手を合わせた母さん。スプーンを手に取り、カツを一口。美味しいと言う表情で、何ら変わりない様だ。あ、そう言えば。向かい合って一緒に夕飯を食べるなんて何日ぶりだろう。母さんって、どんな人だろう』


『ふたり』が余計な言葉を吐く前に、カツカレーを食べてしまおう。そうじゃないと、せっかくのご馳走が勿体無い。でも、今なら…。

今なら、母さんに聞けることがある気がするんだ。


「父さんってさ、次はいつ帰ってくるの?」


『ふと吐き捨てた言葉が独り歩き。沈黙は空気を重くしている。母さんは目を瞑っていて、カツカレーを味わっているのか、今僕が吐いた言葉を飲み込もうとしているのか。どちらかはわからないけど、きっとそのどちらかであって、きっと後者の方だ』


「悪い人じゃない。ただ生き甲斐が仕事なのよね、あの人は。自分のことしか見えてないから。でも、それを知ってあいつと結婚して、あんた産んで…。母さんがもう少し人の心がわかれば良かったんだけどね。寂しい思いをするのは、涼だよね…」


「いやいや、そこまで詰めた思いないけど?でも、最後に会ったの6年前だろ?別に寂しいとかじゃないけどさあ、あの人がどんな人なのか全然知らないし、話してみたいし。あと、色々仕事の話とかも聞きたいし、海外回ってるんでしょ?あっ!もしかして、実は離婚してたりとか?」


「離婚!そうなの!?離婚されてるの!?」


「いや、あんたが知らんでどうするんだよ…」


「うーそっ、たぶん私はあの人のことを嫌いにはならないし、離婚なんてことは絶対しないわよ。あいつが稼いでくれる収入無くなったら困るし」


「やっぱり、金は偉大だなあ…」


「そうっ!でも母さんはお金じゃないのよ!人生と言う長い旅をする中で!あいつと出来る限り全てを共感して!出来る限り全てを共有する為に生きるって決めたのよ!そしてあんた!涼っ!あなたを立派な人間にして!このよく解らない世界へと放り出して完結よっ!」


パチパチパチパチっ…。


『続く会話の末、母さんは徐々に熱のこもった演説をし始め、気づけばスプーンを天井に向かって掲げた。ひとりでに演説を締め括った母さんに対して、僕はひとりでに静かな拍手を送った』


 「ご馳走様でした、あー!お腹いっぱいぃ!」


『カツカレーと言い、母さんの演説と言い、お腹いっぱいだ。父さんのことについてはあまり話は深まらなかったけど、母さんが上手くやっているなら良かった。そう安堵している』


確かに、父さんが側に居ないことが当たり前。そう暮らしてきた僕にとっては寂しくないし、悲しい事じゃない。

ただ、父さんが存在すると言う事実を今更に考えてしまうと、それは余りにも。もどかしいんだ。

まあ、母さんも深刻そうじゃないし、別にいいんだけど。

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