ふたり19
『午後の授業も終えて、放課後になった憂鬱。進藤と吉田は仲良く二人で帰って、君の行方は知らずに図書室に来ている僕、実は前から読み始めた小説を探していた』
「これだっけ?」
『違う、それ漫画じゃん。隣の小説だってば!わかってるくせに下手にボケんな、面白くないんだから』
「今日いち辛辣だな…。それより、こっちの漫画の物語はさ、なんか俺らに似てるよな、なあ?」
『一冊の小説を借りる為、図書室を管理している生徒が居る所へ向かう』
「おい、勝手に俺の行動を進めんな。聞いてんのか?」
『早く帰ろう、早く読みたい』
仕方ない。指示されるがままに従おう。こんな本より、こんな文章より大事な事があるって言うのに、俺は情けないなぁ。
『図書室を出て、下駄箱へと向かう途中、夕陽が差し込む廊下。すれ違う人もいなくて、静かな僕の足音だけが聞こえている。夏場の靴箱の匂いは独特な感じだけど、偏見を持たなければ、それほど悪くもないのだろうか』
「いや、だいぶ最悪だろ」
「あれ、おっそいよ。何してたの?もしかして浮気とか?」
『あー、この声はまた面倒な会話。早く帰って小説を読みたいのに、邪魔になる存在の一ノ瀬怜奈』
「ま、待っててくれたの?言ってくれれば良いのに。拗ねて帰ったのかと思ったんだけど。まあ、怜奈に浮気を疑われるのは悪くないなあ。あ、本借りてただけ、小説」
「拗ねてないし、涼くん小説好きなんだね、意外ぃ。まぁ、帰ろーお腹へったっ!」
『情緒がめちゃめちゃな君は、何のために僕なんかを待っていたのだろう。君の思う人間に例えたら、これも建前なのだろうか、そう思わざるを得ない』
「ね、ねぇ。怜奈はさ、昼休みの時から”くん”付けで僕のこと呼んでるけど、何で?なんか気に食わない事でもあった?そしたら謝るからさ、いや、別に呼び捨てで呼んで欲しいとかじゃなくて、なんか怒らせちゃったかなって」
『はあ、いちいちの不満を言葉にして、それも詳細に事細かく、うまく伝わる様に。
情け無い僕。そう思うと同時、君からも「情けない奴」と思われているんじゃないか。とまた疑っている僕は、女々しい奴なんだ』
「涼くんっ、こっちの方が…好きっ」
「おぉ、おお。僕も好きかも…」
『おぉい!あざとければ何でも許されるとでも思うな!女々しくなって、あれだけの恥を晒した僕の顔が立たないじゃんか!」
まずい、『ふたり』をも飲み込むあざとさと可愛さに気持ち悪い声で返答してしまった。
でも、たぶん君は嘘をついてる。本当は何かあったんだろう。それは確かだ。まあ、聞けるほどの度胸もない。
それに、頼りない信頼ほど不器用な距離はない。
今は君にそう思える。




