ふたり16
「んー、んまいねー。あ、『ふたり』くんは今どうしてるの?ご飯の美味しさとかわかるの?だって、この世界は見えていて、感覚も共有できてるんでしょ?それってなんか凄いよね。まあ、まだ涼から聞いた朝の話頼りにはなるんだけどね」
「んん、うん。ちょっと待って米が喉っ…に」
「ゆっくりね」
『味は良くわかる。と言うよりも、食べなければならないものを食べて、お腹が空いた感覚に不安になるから食べて、人として変わらない感覚。どんな風に伝えればだろうか』
「たぶん、感覚的な部分も全部感じ取ってると思う。ただ感じ方が違うだけで、本当に僕ともうひとりの人間って感じかな、でも他人とは思えない時もたまにあるから…なんか、伝わりづらいかも」
そう言えば、『ふたり』がどんな人間であり、どんな感覚を持っているかなんて、あまり考えてこなかったな。当然になったうるさい声。声質は嫌いじゃ無いけど、やっぱり好きになれないのは、俺の偏見か?
「ふーん、なんかさ。それは違う価値観を持った涼と言うよりもさ、同じ考えの中の一つなんじゃない?私もわからないけど…まあ、そのっ…」
「そうなのかな、て言うか。こんな話、信じてくれるんだね。優しいね、怜奈は」
「んー?優しくないよ。これはたぶん建前であって、涼と付き合えた理由かも」
『難しい話でもないけれど、君の表情や声の質が暗くなっている気がした。そんな事に今気付いたところで、何か悲観的になっている君にアドバイスなんてできないし、何かを知りたい僕の立場から、君を覗こうなんてしたくもない、だから僕は、変な言葉を振った』
「それは、自分を偽ってるってこと?」
君の顔を見ている。何かを考え出すまでに時間を要している様な、君の焦っている顔?
何か失礼なこと言ったかもしれない。どうしよう。
『君の顔が病んでいく。ゆっくりと力の篭らない瞳に慣れ果てていく。言葉を振った僕が間違えなのか、それとも、こんな会話を始めた君、告白を受け取った過去の僕が間違えなのか、まだわからない』




