ふたり15
「あー、ここすごいでしょ。なんか木が植えられててベンチもあってね、日陰になってるよー。はやくぅ」
『僕が梯子を上がりきると、君は既に、そこにあるベンチに腰を掛けていた。木漏れ日だけが君を照らしてる。別にそんな君を見たからって、どうと言うこともないけれど。まあ、少しだけ良い場所ではあると思えた』
「おまえ、珍しいな」
『ふたり』がこんなに穏やかになるのは珍しかった。まあ、今はとにかくお腹も空いてるし。早く食べよ。それと、君といっぱい話したい気分だ。
『ベンチに腰をかける。弁当箱を開ければ、馴染みある具材と白米が敷き詰められて居る。具材は卵焼きに、タコさんの形のウインナーに…。いや、そんなことよりだろう」
「れ、怜奈?パンはおいしい?それは、焼きそばパンか」
「おいひぃ、て言うか涼のお弁当のおかずの卵一個ちょうだい?」
「う、うん。別に良いけど」
「ありがと!はいじゃあ頂戴な、あーー」
「え、それが狙いかっ!」
「違う、卵食べたい」
『君はいったい何をしてんだ。そして、動揺して居る僕も僕で何してんだ。そう自問自答を繰り返させる様な行動。面白いけど、やっぱり僕は好きじゃ無い』
うわー、「はい、あーん」とかって言った方がいいのかこれ?まあ、いいや、何も言わずに。
『箸で弁当の端にある卵焼きを取って、そのまま慎重に君が開けて居る君の口へと運ぶ。その際、初めての感情に手が震えていて…。そうか、僕の顔が熱くなっていたのは、そう言うことだったのか。気恥ずかしさからだ、ほんとに情け無い』
俺の心もうるさくて、『ふたり』の感の鋭さも相まって相乗以上に緊張してる。そして顔が熱い。
気恥ずかしい。でも手を緩めるな!そう言い聞かせる。
「はい、あーーん」
「あーーんっ、お!おいっしぃ!」
「よかった、これ母さんの手作りだし、母さんに言っとくよ。喜ぶと思うし」
俺は、何をやってんだ。
『僕は何をして、ここは…どこだ?』
『ふたり』も戸惑いを隠せていなくて、君の可愛さに嬉しくなってる。人って、こんなに面白かったっけ?なんだか妙に楽しい。
頭も中も静かな間、俺は白米をかき込む。




