ふたり14
「久しぶりだな、屋上…」
『晴れ晴れ。暑いくらいの日差しから避ける為、建物の影に身を置く。弁当箱は持って居るし、あとは君がくるのを待つだけだ。そう言えば、今日はお腹が空いてる』
『ふたり』にお腹の音に気づかれた。
対して恥ずかしくもないけど、自分の感覚を言葉にされたり、いちいち冷静にナレーションされると気に障る。
文句を言いたいけれど、この頭の中でしか生きられない『ふたり』が、この世界を楽しむ唯一の方法を邪魔する事もできないし、そんなことを望んでいるわけでも無い。
「あーー、お待たせえーっと。彼氏さん。あれ、屋上で1番良い場所知ってるからそっち行こっ」
「めちゃくちゃ買ってるし…」
『ドンっとドアを開けた君が疲れ気味に屋上へと出てきた。両手にパンを3個ずつ、器用にも、指の間で袋を挟み持っている。そして、僕がいた日陰よりも君は暑い日差しに当たりながら僕を扇動した』
「ここっ、ここっ」
「ここ?登ってくの?まじっ?」
「まじっ、」
『屋上に構えた凸の建物。登る為の梯子。僕の疑問に頷いて、6つのパンの袋の端を口で挟んだ』
「んふふ、ふーふる」
「いや、何言ってるかわかんない。パン僕が持っとくよ。それより袋貰えばよかったじゃんか」
「確かに、失敗した。私先に上るから、着いてきて」
「わかった」
『僕に三つのパンを渡した君。残り3つはやはり口に咥えて梯子を上がっていく。言われた通り、僕も後に続く様に…おい、待てっ」
「なんだよ、あっ」
俺と『ふたり』の不注意だった。梯子に手をかけ上を確認した。
「大丈夫ぅ?」
「あっ!いやっ!パン…が落ちちゃった…」
「いいよいいよ、それあげようと思ってた奴だし」
「えぇ?あは、あははは。そうだったんだ、ありがとう」
「早く上がってきてー」
「う、うん…今から上がるよ…」
『お前キモ。ナレーションもしたく無いくらいに気持ち悪い。まあ僕の不注意でもあるけど』
「ごめん、ナレーションはしないでくれ」
あぁ、ラッキーなのかもわからないままだ。
取り敢えず早く上がろう。




