ふたり12
「おはよー、ございます…」
…。
『挨拶が返ってこないのは、いつもより早い登校時間。クラス内に居る人間はいつもよりも少なくて、その内の奴らはあまり仲のいい人でもなく。仲の悪い人でもないからだ。面食らった状況、教室の扉の前で立ち止まった。そして、後から追いついてきた君に気づく』
あっ、一ノ瀬さんおはようー!
おはよー。
怜奈おはー!
「みんなおはよー」
『一人の掛け声から始まる挨拶の連鎖に気まずさを感じた』
『ふたり』は相変わらず俺の心を読む様にナレーションする癖、大体は合ってない。
別に挨拶が返ってこなくたって気まずくなんてなくて、その状況が起こした現実なだけ。それと、君の方がちょっぴり、仲のいい人間が多いだけだ。
気にすることなんてない。
「別に、気まずくねーよ」
「そう言えば、私と涼が付き合ってること皆んなには行ってもいいでしょ?」
えぇー!!!!!!
『顔面蒼白。君が席に着くのを目で追っていた僕。君が僕の方へと振り向いたと思えば、何の躊躇もない君の声はクラス内に届いた。そして、そんな前触れもない言葉に、クラス内の人間が絶叫した』
君は、今のは?は?わざとだよな?
わざわざ、こんな面倒くさいこと。
てめぇ!この野郎!いつから付き合っとたんじゃい!
許さねーぞ!おまえ!ぶっ飛ばしてやる!
「あー、昨日だよ。ごめんて、でも仕方ないだろー」
仕方ないって何じゃワレェ!コラァ!
絶対幸せになれよ馬鹿野郎!
「うー、痛い痛い、、」
『クラスの男子生徒複数人に囲まれている僕は、罵詈雑言とネクタイを掴まれ首が締まる。息苦しくも、あまり仲の良くないこんな奴らの馴れ馴れしい言動に安堵してみる。一方で、君はと言うと。
複数人の女子生徒。廊下まで聞こえた声は別のクラスの奴らも群がり始めている。それは、甲高い声で、聞いていると頭が痛くなりそうな、そんな状況だ』
「どーしよう、めんどくせ…」
『だから言ったのに。くだらない恋愛という名目に釣られた馬鹿どもが寄ってたかっている。首謀者である僕も馬鹿で、情け無い奴だ』
「そんで?一ノ瀬はなんで涼にそんなくっついてんだ?大丈夫かよ、涼」
「まあ、付き合ってるし良いんじゃん?しかも怜奈から告ったんでしょ?てか、こいつのどこに惚れたっての?こんな男、あたしなら死んでも好きになれないかも」
『また僕の席に集まる四人。椅子に座り机に伏せた僕の背後から、君は僕を覆い被さる様にくっついている。そして伏せている僕の後頭部上にスマホを乗せて弄っている』
「こんなめんどくさいことになるとは思ってなかったあー」
「うぅ、クラスのみんなから詰められて辛い…」
酷い!もう少しドキドキした恋愛が始まると思っていたのに、進藤と吉田、それに君までも冷静だ。面倒ごとに発展した事だけを危惧してる。
「俺に任せとけ!口出しすんなって言ってきてやる!あいつらだろ?」
「優ぅ!やめときな!おい待てっ!」
『遠のいて行く進藤優と吉田綾音、残った背後の重さに苦しくなる。お構いなしにスマホを弄り続ける君に、なんて言うか迷っている僕。こんな感情や現実が本当にめんどくさい』




