ふたり11
なんだかいつもよりもゆっくりと歩いている。
こんな時は女の子に合わせたほうが良いと聞くから、合ってるだろう。
それに、いつもつまらなそうにスマホをいじってる君がスマホもいじらずに前を向いて歩いている。
もしかすると、緊張しているのか。でも、そんな君を見たことがないな。
「涼、って呼んでいい?」
「うん、じゃあ怜奈って呼ぶよ」
『雨は弱く、重い足取り。今となってはこの状況を保つことで精一杯。もう少し順調な関係であれば、いつもの様にこの雨を楽しめたかも知れない。そう言えば、雨の匂いは前から好きだ。確か名前は。
いや、忘れてしまった。あとで調べて見ようか』
「ねーねー、もう一人の涼は今何処に居るの?」
「あはは、いいって無理して聞かなくても」
「無理なんかしてないよ、偶に一人で誰かと話してそうなこと言ってるの見てたし」
「うわ、恥ずかしすぎる」
「なんで?別に恥ずかしいことじゃなくない?それに特別な能力みたいな感じで面白そう」
呑気に語る君はいったい何を考えてるんだ。俺は今弄ばれている最中なのか?それとも本気で俺のことが好きなのか、気になっているのか。
どちらにせよ、こんな一隅は二度とないかも知れない。だから話しても良さそうだ。
『信用したっていいことひとつもない、僕はそうやって人を見てきた。今僕がどんな気紛れに身を委ねようとしているのか。冷静に考えろって言い聞かせたって多分もう遅い。そのくらいの加速度で僕も忘れられてゆくんだろう』
「僕の頭の中、ほぼ永遠にナレーションしてるよ。頭の中で声が聞こえるだけ。話したりもするけど、ほぼ喧嘩。生まれた時から一緒だよ。僕は頭の中のもう一人を『ふたり』って呼んでる」
「まって、え?全然わかんないかも。感覚的なの?それとも絶対にそれは他人の声なの?」
『説明のしようもなく、何となくとした『ふたり』と言う存在にまだ理解も出来ていない君はスマホを取り出している。
でもそれは、僕の話が詰まらないとか、どうでもいいとか、そんな反応ではない。
君が今僕に解いた質問の返答。そうだ、僕からの返答をメモしようとしている。これには僕も驚いた』
「他人の声、声の低い女性かな?そんな感じで綺麗な声で、まあ、仲は良くないかな。色々あるから。でも、言葉も悪いし嫉妬するタイプで、夜が好きだね。一人で居たいタイプなのかな?でも僕が気を遣って一人になろうとすると、お前はその為に生まれてきたんじゃないって怒られる、後は…」
「まっ、まって!ちょっと…もうね、うん、ぜんっぜん!わかんないかも」
「ご、ごめん。喋り過ぎた。また学校で聞いて欲しいかも」
「そうだね。もっと聞きたい」
『いつの間に、校門を通り過ぎてる僕ら。君は一生懸命メモを取っていた様だが素直にも理解出来ていないことを伝えてくれた。こんな時間が初めてだからか、他人のことも見れず自分良がりな説明をした僕はクソ野郎だ』
「僕の説明が下手だから、今『ふたり』からクソ野郎って言われた」
「えぇ!すごぉ!なにそれ!ゼンゼンワカンナイ…」
あははは。
『ふたり』がこんなにも積極的に人と関わろうとするなんて、思っても見なかった。逆に、「付き合うとか意味わかんねーよ!」とか、「浅い人間は嫌いだ!」とか、また悪い言葉ばかりだと思っていたのに。
それに、君もこんな可愛げな反応をするなんて、想像以上に可愛い。
もしかしたら、俺達は少しだけ、本当に少しだけ正解に近づいたのかも知れない。
そんなつもりだ。
あれ、、正解に辿り着いたらどうするの?
正解って?答えって?何を探してたんだっけ。
冷静で、傲慢で、醜くて、鮮明で、綺麗な…。
あれ、なんだっけ?




