ふたり10
『目が覚めるー』
「んー、起きてるー」
『めーがーさーめーるー』
「起きてるってば」
『あー、起きてんのかよ。先に言えよ』
昨日は歩かなかった。それに夜も結構寝た。何度か起きたけれど、気分は晴れてる。
これは、もしかすると、君と上手く行くんじゃないのか。
身体も軽い、朝なのにお腹も減っている。
昨日の晩御飯は確か食べずに寝た?
『僕は軽い身のこなしで制服に着替え洗面台へと向かう、そして顔を洗い目の下のクマを確認する。歯を磨き、うがいを済ませた後はリビングへ入って母さんに「おはよう」と声を掛けた。
毎回決まった行動をこうしてナレーションしているが、それは飽きることもなく。単なる使命感』
「母さん、おはよう」
「おはよー、今日は朝ごはん食べなさいよー」
「うん、頂きます。お!美味そう」
『目の前の白米と目玉焼きにウインナー。僕的な定番の朝食。軽く胡椒も掛けられているが、僕は目玉焼きに醤油をひと回しする。手を合わせた後、目玉焼きを半分に割って白米の頂上へと移す。箸は改めて、白米を下から掬い上げ口へと放り込ませる。すかさず口の中にウインナーを一本』
「うわっ」
『「うまっ」と声を上げようとしたけれど、熱いお米が口の中を美味しいで満たしていた』
朝食を毎日食べられたら最高なのに。いつもは瞼も重く、食べないか少し食べても、残してしまうかだ。
やっぱり、睡眠というものは大切に感じる。確かに夜は歩きたいとは思えるけれど、こんな朝を久々に味わってしまうと、とてもでは無いが戻れなくなる気がする。
だから今は、順調な今日だろう。
「ご馳走様でした…母さん弁当ありがとう。いってきます」
「はーーい、あれ、珍しいね。全部食べたの?」
「美味かった、行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
『直ぐに玄関。母さんの返答を確認した後、受け取った弁当箱を鞄に入れて、今日はいつもより早い時間。決まった白靴を履いて玄関を開けた』
「えー、な、なんで?」
『なんでいるんだよ!お前は!意味わからない!せっかく気持ちのいい朝を迎えたのに、この日の朝が一瞬で曇った。そして、傘をさして僕の家の前に居る一ノ瀬怜奈を見た僕は外へ出ず、一度玄関を閉める。そして黒い傘を持ち、また玄関を開けた』
「おはよー、今日は会ったねー」
「うん、おはよー。昨日の夜めちゃくちゃ寝れた」
俺が声を掛ける前に君からの挨拶を喰らう。
だけど、寝不足ではないからだろう。平然と日常的な会話へ乗り切れている。昨日のこともこの際に話して仕舞えば楽だけど、今日は珍しくも眠そうな君は欠伸を見せてくれた。
「ふあー、寝れたんだ。良かったねー」
「あのさ、昨日はごめん。ちょっと変だった」
「涼くんはいつも変だから、だいじょぶ」
何も考えつかない。どう切り出していいかわからないけれど、言って仕舞え。
「昨日、僕が言ったこと覚えてる?「もう一人の自分」って…。別に気にしなくていいから。ほんとごめん」
『「何言ってんだこいつ」きっと今、そう一ノ瀬怜奈に思われているだろう。昨日の会話を続けようと思いきや、湧き上がってきた恐怖に思ってもいない言葉を吐く。こんな僕はクソ野郎だ』
「それは気にするでしょー。なんなら私が涼くんに告白したことは覚えてるの?」
「えっ!あれは…!だって…。告白だったの?」
『この女、やっぱり弄んできている。何の得にもならない僕と一ノ瀬怜奈が付き合ったところで、意味もなく、どうせつまらない関係になるに違いない。それでも僕と付き合うことを選ぶなら、頭の悪い奴なのだろう。まあ、類は友を呼ぶか』
「告白だよ?私ね、結構前から好きだったよ?涼くんのこと」
「そうだったんだ。じゃあ昨日はあんなこと言っちゃったけど。僕ら、付き合わない?」
「なにそれー、曖昧で淫らな関係みたい」
俺が間違っているのか?この選択をした俺は頭が悪いのか?だけど今日は頭も冴えているし、『ふたり』が言う様に「類は友を呼ぶ」に従えば、君は俺と似ているはずで。いや、俺は何を考えてるんだ。
「す、好きだよ。怜奈、付き合ってください」
「おー!今のはキュンって感じした!よろしくお願いします」
『なんだこれ。僕の正解はまたひとつ遠くへ置かれる事になるのか。それとも一ノ瀬怜奈、君が僕を探してくれるだろうか。僕が選択しなかった選択は後悔になっていずれ返って来るだろう。そんな思いもあるが、僕の今の選択を噛み締めていたい』
俺は馬鹿なのか。何も今ここで付き合いを決めなくても良かったはずだ。でも、今湧いてる感情と興奮には困らないでいる。
『おーい、少し落ち着け。お前らしくないぞ』
「うん、行こうっ」




