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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第四章「英雄は世界に愛を乞う」

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72.英雄の軌跡


「……私に、魔物退治を?」

「ええ、最近アクアリア周辺では魔物が大量に発生していまして……」

「…分かった、引き受けよう」

「本当ですか!?ありがとうございます!ユグナ様なら安心ですね!」


 その言葉には何も返さず、私は依頼の紙を貰って冒険者組合から出た。

 世界全体に、毒の魔力を振り撒いていた魔物を倒したとはいえ、まだまだ平和な世の中にはならないらしい。

 そう言えば……王都に戻った時、ヴェルノアールらしき魔力反応を見つけたが、数日後に居なくなってしまっていた。

 あれは本当にヴェルノアールだったのか、それとも似た人物だっただけなのか。

 今となっては知る由もない。ただ、心の何処かで気に掛かっていた。


「…まぁ、運の悪さには自信があるが」


 はは、と渇いた笑みを溢す。もしかしたら、もう倒されてしまっているのでは──なんて。少しだけ考えて、その考えを振り払った。

 あの竜が、そう簡単に倒されるとは思えない。

 そう思いながら、簡単に準備を整える。薬瓶、包帯、それと僅かな調味料。食材自体は現地調達で構わないから、それぐらいしか揃えなかった。


「おや、ユグナ様。今度はどちらへ?」


 突然後ろからそう話しかけられて、思わず振り返る。

 そこには、良くも悪くも私の苦手な人種がいた。


「……アクアリア周辺で、魔物討伐だ」

「成程成程、しかし遠いでしょう。私どもの馬車に乗って行かれては?」

「…結構。貴殿らに世話になる程の遠さでもない」

「……そうですか」


 こいつは──否、こいつの属す集団は、人身売買を生業としている。

 ……私を売ろうとしている魂胆が丸わかりだ。元々私の種族は、嘘や真意を見抜くのに優れている。

 思わぬ妨害に、盛大に気分を害されたが──まぁ良い。

 

「さて、出発するとしよう」


♢♢♢

 

 風系統の魔法で身体能力を強化し、光系統の魔法で体力を回復させる。その為、長距離の移動も難なくこなす事が出来ている。

 魔力の消費が激しいので、常人には出来ないとされているが、生憎私には時間しかなかった。故に魔力量だけは、誇れるものの一つで。

 まぁ言わずもがな、もう一つはこの剣、『聖剣エルノヴァ』だが。


「……しかし、もうすぐアクアリア近辺に到着するが……。おかしいな、魔物の気配が全くない」


 嘘を吐かれた?いや、その空気は全く無かった。となると……

 ……あたりの魔物が逃げ出すほどの、上位存在がいる?

 一度私は立ち止まって、あたりの気配を探る。魔力濃度が濃すぎる存在が二体ほど付近にいるが、それはあまり関係なさそうだ。

 ただ……。変な魔力の構成をしている奴がいるな。無理やり二色を混ぜ合わせたような、しかしそれでも、しっかりと馴染んでいる。


「……あぁ、竜化を克服した者がいるのか」


 時折見かけるそういった人たちは、決まって不思議な魔力構成をしていた。今感知したような、魔力の混ざり方を。

 ふむ。ではこの近辺に元凶となる魔物はいないか。

 そう考えた私は、早々にその場を立ち去り、アクアリアの街へと向かったのだった。


♢♢♢


「えっ!?魔物がいなかった!?」

「あぁ…全くな」

「おかしいですね……つい先日も魔物に襲われた行商人がいたのですが……」

「……」

「あ!ユグナ様、よければ調査して下さいませんか?追加報酬もお支払い致しますので!」

「………了解した」


 手渡された依頼書を眺めながら、私は思わず溜息を吐いた。

 理解していたことではある、が。面倒だ。

 調査系の依頼は、私には向いていない。まず、見た目が目立つ。金髪碧眼なんて、目立つ以外の何者でも無い。


「……情報収集、しかないだろうな」


 また溜息が一つ、星が瞬くような夜空に消えていったのだった。

 

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