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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第四章「英雄は世界に愛を乞う」

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71.一触即発


「お兄ちゃんをお父さん?巫山戯るのも大概にして欲しいんですけどー」

「貴方こそなんなの?ヴェルの妹だからって、好き勝手し過ぎじゃない?俺よりも年上なんだよね?それでも、そんなんでも」

「『そんなん』って言った?ボクに対して?………何様のつもりだお前は!」

「──待て!二人とも落ち着け!」


 一触即発の雰囲気を、慌てて割って入る。止めてくれ、とんでもない争いが起きる…!

 俺が間に入った途端、茶色と水色は止まる。それでも目線は睨み合ったままで、思わずため息を吐いた。

 スルアヴェラの執念も異常だが、グリュンの思いも中々だな。まぁグリュンはまだ子供だから良いとしても、問題はスルアヴェラだ。仮にも数万年生きてるよな?何でまだ、そんなに子供っぽいんだ……。


「……取り敢えず、変な観点で争うのは止めてくれ。あと、グリュンは俺が育てた。だから息子で間違ってないよ」

「…お兄ちゃんの、寵愛を受けたって事?」

「言い方。まぁ、確かに愛をもって育てたけどな」


 言葉の端々が刺々しいスルアヴェラを宥めつつ、グリュンの頭を撫でる。頼むから、こんな子に育たないで欲しいという願いを込めながら。

 そうしてお互いを落ち着かせていく。俺が始めた物語かもしれないので、その責任は取るつもりで二人の相手をした。


「ねぇお兄ちゃん、どこ行くの?もう何処かに行っちゃう?」

「いや、俺たちアクアリアに向かおうとしてたんだ。だからもう少しは居るよ」

「ほんと!?嬉しい!」


 紺色の衣装がひらりと舞う。白色のレースが、それに合わせて風に靡く。

 そんなスルアヴェラに威嚇をするグリュンを再び宥めながら、言い方は悪いが、何とかスルアヴェラの機嫌を取る。すると、アクアリアまではどうやらスルアヴェラが案内してくれるらしいので、俺たちはスルアヴェラに付いて行く事にした。


「……ヴェル、俺あの人と仲良くなれる気がしない」

「別に無理して仲良くしなくて良いぞ。合う合わないはあるんだから」

「うぅー……」

「……すぐ感情的にならないグリュンは大人だな、偉いぞ」

「そう……なの?俺、大人に近付けた?」


 あぁ、と俺が頷くと、グリュンは嬉しそうに笑う。険悪な雰囲気は何とか消すことが出来たらしい。

 それにしても……この状態でアクアリアまで向かうのか……。

 とてつもなく嫌な予感しかしない俺だった。


♢♢♢


「……ボク人参嫌いなんだけど」

「知らない。嫌なら食べなくて良いよ、スルアヴェラ」

「そうは言ってないけどさ。そもそもお兄ちゃんにこんな質素な食事させて、恥ずかしくないの?」

「無いよ。だって美味しいのが一番じゃない」

「………本当に、二人とも……」


 夜。今日の食事当番はグリュンだったので、水汲みは俺が行った。スルアヴェラは何もしなかったので、適当にあった素材で調理したら、シチューになったらしい。

 それで、そこに入っていた人参で論争が起こっている、という訳だ。何というしょうもなさ。


「ほら、嫌なら食べなくて良いから。無理して食べさせるつもりもないから」

「………なんか癪だなぁ」

「はぁ?そもそもその歳で人参嫌いってなんなの?」

「ボクは基本的に食べなくても生きていけるの」

「……じゃあ要らないね?」


 しゃっ、とグリュンがスルアヴェラの手からシチューを抜き取った。

 言葉も達者になったようで、喜ばしいような、少し悲しいような。あんな誘導尋問、教えてないんだが。

 まぁ今回はスルアヴェラが悪いか。働かざる者食うべからずと言うしな。


「〜〜〜っお兄ちゃん!あいつが虐めてくる!」

「今回はスルアヴェラが悪いから。反省しなさい」

「うぅ……はーい。お兄ちゃん、昔みたいに甘やかしてくれなくなっちゃった……」

「……本当に、ヴェルに対しては素直なんだよなぁ」


 若干拗ねたようなグリュンの呟きが漏れる。俺だって何でこんなにスルアヴェラに懐かれているのか知らないし。

 少しだけへそを曲げてしまったグリュンを俺の膝の上に乗せて、いつぶりかの体勢で食事をとる。昔は結構この格好で食べていたのだが、大きくなってする機会も無くなってしまった。

 まぁ、たまには良いだろう。それでなくとも、今日はスルアヴェラと関わって、疲れてるだろうしな。


「……ヴェル。今日は一緒に寝よ」

「あぁ、構わない」


 そんなささやかなグリュンのお願いに、思わず俺は笑みを溢す。

 その一言が、今日一日で一番のご褒美のような気がして──俺は、そっとグリュンの頭を撫でたのだった。


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