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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第三章「継承」

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59.猶予


 辺り一面の銀世界を歩く。俺は、あの村からそう遠くない場所にある国、ネーヴェに向かっていた。ちなみに俺の使い魔は先程もう一回呼び出して、グリュンの近くにいてもらっている。けれど何故かさっき抗議の声が届いたような気がした。でもまぁ気のせいだろう。

 月が夜空に登って、鮮やかに輝いている。

 もうグリュンは眠っただろうか、ちゃんとご飯は食べたのだろうか。

 そんな考えがぐるぐると回る。


「……いや、考えすぎも良くないな」


 まずはグリュンを助ける。そこから適応する竜を見つければいい。そう自分に暗示をかけるように心の中でそう呟いて、はぁ、と一つ息を吐いた。冬の冷たい夜空に、透き通った白色の空気が舞う。

 そういえばグリュンと星を眺めたこともあったな。あの日は確か、雪だるまを作った夜だった。


「寒い、か……」


 暑さも寒さも、昔は全く気にならなかったのだが。本当に、俺はグリュンと生活しているうちに変わったなと思う。

 その時、ふと淡い光を感じて顔を上げる。すると遠く離れた場所に、街の明かりが僅かに灯っていた。だとすると、もう少し。もう少しでネーヴェの城が見えるはずだ。

 今日は……と言っても、もう日が変わっている可能性も否めないが。取り敢えずネーヴェまで行って、それからまた情報集めに入ろうと、そう決めたのだった。


♢♢♢


 あの後、無事にネーヴェに辿り着き、宿までしっかりと取れた俺は、俺の使い魔の愚痴をただひたすらに聞いていた。聞くと言っても、かぁかぁと言われ続けるだけではあるが。

 ちなみに、途中で抗議の声が聞こえたのは、グリュンにヴェルだと間違われたから不服だったのだとか。いや、それは俺の魔力でできているのだから仕方なくないか?

 ……それにしても、分かるのか。

 魔力感知が優れているとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

 そう考えつつ、未だ文句を言っている使い魔を肩に乗せて、俺は窓の外を見た。


「───それにしても大きいな、あの城」


 王都のものと大差ないぐらいに見えるのだが。あ、でも少し小さい、か?外観があまり凝った作りになっていないのか。だとすると侵入自体は楽そうだ。

 ……ん?待て、何であの城、離れ小島みたいな建物が一つあるんだ?

 そう思ったのが伝わったのか、隣の使い魔は、やれやれ仕方ないなと言ったふうに教えてくれた。本当にまだ不貞腐れてるんだな……。


「……成程。ご丁寧にもあそこにグリュンがいる、と」


 丁度今は眠っているから暗いらしい。良かった、寝れてはいるのか。

 それにしても、いつ行くべきか。下手に侵入して連れ去ったら、それこそ全世界に指名手配されそうだ。別に俺はそれでもいいけれど、間違いなく平穏な旅はできない。なので、慎重に見極める必要がある。


「ん、何だ……?」


 しばらく俺が作戦を考えていたとき、外が騒がしい事に気がつく。それも、何か喜ばしいことがあった時のような騒がしさ。

 少しだけ気になって外へ出てみると、何やら一枚の紙を配る人がいて。その紙に何かが書かれているのか、街の人たちはそれを熱心に見つめて、様々なことを言い合っている。

 

「すみません、それ頂けますか?」

「お、いいぜ。何だってこの国の一大事だからな!」

「……へぇ、そうなんですね」

「もしかして兄ちゃん、旅人かい?なら知らなくても仕方ないか」

「あれ、じゃあ教えてくれませんか?」


 駄目もとでそう言ってみる。するとこの人は意外とおしゃべりな人なのか、かなり詳しく教えてくれた。

 曰く、新たな王様が誕生するのだとか。ここ最近、王の器たる人物が生まれて来ず、唯一適応しそうだった子供は他の王家に邪魔をされて行方不明だったのだが、その子がつい先日見つかったらしい。

 それを聞いて、あれ?と思う。もしかして、グリュンのことでは?と。俺は慌てて、貰った紙を見た。

 戴冠式は───三日後。


「猶予が無さすぎるだろ……!?」

「ん?どうかしたのか?」

「あ、いえ……ありがとうございました、教えてくださって」

「良いってことよ、じゃあな」


 ひらひらと手を振りながら去っていったその背を見やりつつ、城の方も見た。三日間で俺は何ができる?情報収集は勿論、城の戦力も知りたい。いざとなったら滅ぼそう。最終手段ではあるけれど。

 

「全く、俺を祀る国と言いながら、俺に一番厳しいんじゃないか?」


 そう言って少しだけ笑う。言葉にしたら余計に実感して面白かった。

 ネーヴェの成り立ちも知りたいところではあるが。一番優先すべきことはグリュンの救出。ただそれだけが完遂できればいい。

 そう、心の中でそう思ったのだった。


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