48.とある竜の街探訪
「じゃあ行ってきまーす!」
「あぁ、いってらっしゃい」
元気よく街へ遊びに行ったグリュンのその背を見ながら少し息をつく。
どうせならもう少しだけ休憩してから、俺も出かけよう。
そう思っていると、窓の外に怪しげな二人組が何やらこそこそと移動しているのが見えて。ほとんど反射で窓枠に足をかけて飛び降り、二人組の背後に音もなく着地した。
「何してるんだ?」
「な、こいついつの間に……って何だ弱そうじゃねぇか」
「焦って損したぜ」
「うわ……」
何でこう、見た目で判断されてしまうのだろう?俺ってそんなに弱そうか?
確かに強そうな見た目はしていない、けれどこうも面を向かって言われると、何とも言い難い気持ちになる。
取り敢えず衛兵に突き出しておけばいいか。
「おい、余所見してると痛い目見るぜ」
「すまないこちらも仕事なんだ」
「……そうか」
若干人の優しさが垣間見えたような気がして、少しだけ棘をおさめる。
仕方がないので致命傷は入れないであげよう。
振り上げられた拳を最小限の動きで躱して、その流れの動きを生かして回し蹴りをする。グリュンに反撃の仕方を教えていたせいか俺もこの流れが癖になってきた節がある。覚えられやすいやり方なので、そろそろ変えたほうがいいかもしれない。
「兄貴ー!?」
「余所見していると痛い目見る、だったか?」
「ま、待て!話を────」
「聞く義理もない」
軽く首の後ろを叩いて気絶させる。そして闇魔法で拘束して、何となく抱えたくはなかったので引きずるように衛兵の所まで運ぶ。
一応、一通り理由を述べると、衛兵から「こいつらは人攫いの犯人で、最近困っていた」と言われた。ちゃっかり報酬としてお金も貰えたので、俺としては見つかってくれてありがとうと言いたいかもしれない。
「さて、これからどうしようか……」
ここまで来るともう家に帰るのも億劫なので、このまま探索することに決めたが、とはいえ行く当てもなく。仕方なく適当に歩き回っていると、ある一つの掲示板に貼ってある一枚の紙に目を引かれた。
赤と緑をベースにしたそのチラシは、とあるイベントを知らせるもので。
「……へぇ、クリスマスか……」
確かにいつもグリュンは頑張っているし、プレゼントを贈るのも良いかもしれない。そうとなればプレゼント探しをする事にするか。
……でも、まずはどんな物にするかを決めないといけないな。
俺もグリュンも、恐らくネックレスや指輪などのアクセサリー類は必要ない。となると考えられるのは他の物。髪飾りは除外して、そうなると……。
結局何も思いつかないまま、適当に店の前を歩く。何度も同じ行動を繰り返しているので、そろそろ不審者とでも言われそうなその時、視界に光るものがあった。
「……すみません、これって」
「これですか?これは剣につける、言わばストラップですね!」
「──成程」
これなら、もしかしたら。そう思って並べられているものをざっと見る。
そのほとんどは花の形をしていて、俺も名前のわかる花が多い。それなら、と白い小さな花を象ったものを手に取る。
「すみません、これを」
「あ、ありがとうございます!アングレカムですか?良いですね、贈られた人が羨ましいです」
「まぁ……きっと今だけなので」
「?」
何で?と言いたげな女性店員だったが、そこは弁えているのかそれ以上は何も言わなかった。さして深い意味を持つわけでもないが、きっと今だけだから。許されるだろうと思い、贈り物用に包装してもらう。
「ありがとうございましたー!」
何を思ったのか黒い包装に紫のリボンをつけられてしまったそれを見つつ、帰路を歩く。
結局グリュンには会えなかったなと思っていると、宿の前でばったり出会う。
「ヴェル!」
「グリュン、その様子だと楽しかったようで何よりだ」
「結局会えなかったなぁ……」
「ここで会えてるんだから良いんじゃないのか?」
「まぁそれはそう、なんだけど」
でも街の中で会いたかったなぁと溢すグリュンに思わず苦笑いする。遊んでいる時ぐらい、俺の事を忘れても良いとは思うのだが。いやまぁそれもそれで悲しいかもしれないが。
そして、突然現れたグリュンに、ほぼ反射神経でさっと後ろに隠したプレゼントをグリュンが気付く様子はなく。
少し心の中で息をついて、グリュンの思い出話を聞くのだった。




