45.海の街シャトレア
さくさくと砂浜が奏でる音を聴きながら『シャトレア』まで向かう。
その街は砂浜と海の上にあると言っても過言ではない程、海と一体化した街だった。
ウォルナットの木の板が、街に近づくにつれて砂浜に埋まっている。隣ではグリュンが木の板だけを踏みながら、跳ねるように歩いていった。
そうして、木材のみでできたシャトレアのゲートをくぐると。最初に俺たちの目に映ったのは爽快な青空と、空との境目がなくなってしまっている海。
パール色の砂浜が青色を引き立たせ、一種の幻想かと疑いたくなるような眩しさを湛えていた。
「凄く綺麗………」
「───気に入ったか?」
「うん、本当にあるんだって思った」
とん、とん、と俺たちが歩くたびに、木の板の軽快な音が鳴り響く。少しだけ冷たい潮風も相まって、王都と比べると清々しいような、そんな気がした。
その時ふと、何かの視線を感じて振り返る。
するとこちらを一心に見つめていたのは、赤くて小さなカニだった。しゃきん、と大きなはさみを見せてくるその姿は、怖いというより可愛い。
ちなみにグリュンは未知の生き物だったからか、若干警戒していた。まぁそれもすぐに無くなったようだが。
「可愛い……こんな生き物もいるんだ」
「世界は広いからな……グリュンが気に入る生き物も、何処かには居るんじゃないか?」
「ん?ヴェルには居るの?好きな生き物」
「俺か?俺は……」
俺はどちらかと言うとグリュンが分類されるのだが。ただ、それを素直に伝えると何を言われるかわからないので、言葉を濁す選択をした。
「……俺もまだいないな」
「本当かなぁ、それ?」
「何で疑ってるんだ」
「だってヴェル程の長寿でも居ないのってなんかなぁって思って」
じとーっと疑いの目を向けてくるグリュンに、少しだけ息が詰まる。
かなりの罪悪感に襲われつつも、本当のことは言いたくないという信念を掲げ、なんとかこの状況から脱出しようと試みた。
「まぁ俺は、大半の時間をあの森で過ごしてるからな」
「……確かにそうだけど」
それでも納得していなさそうなグリュンに、思わず苦笑いする。そんなに知りたかったのか?時々よく分からないこだわりを発揮するよな、と思いつつ、一旦カニに別れを告げ宿まで向かう。
そうして部屋の鍵を受け取り、あいも変わらずグリュンはベットへと倒れ込む。
すると突然驚きの声を上げたので、荷物を下ろしていた俺は思わず肩を揺らした。
「ヴェル!ここベットが柔らかい!」
「おお……良かったな?」
「めっちゃもふもふ」
そうグリュンが絶賛するので、試しに俺も座ってみると確かに柔らかかった。王都のベットが硬すぎたのかもしれないが。取り敢えず、未だに寝具と戯れているグリュンは置いといて、真っ白なカーテンを開けて光を取り込む。
ちなみに窓から見える海も、当たり前のようだが写真のように美しかった。
「ねぇヴェル、明日探検してくる!」
「また突然だな。良いぞ、気を付けてな」
「──じゃあヴェルは何するの?」
「俺は……そうだな、俺も街を回ってみるかな」
「……っ!会えたら良いね!」
顔を輝かせて言うグリュンに、会えるも何もここで会うのでは?と思った。けれど、確かに街中で会えた時は運が良かったと思って嬉しくなる気持ちも分かるので、何とも言えなかった。
じゃあ明日は二人して外出だな、と思っていると再びグリュンが声を上げた。
「あ、ヴェルー?」
「どうした?」
「カニさん着いてきてる」
「え」




