表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第二章「世界を巡る旅へ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/82

42.守りたいもの


 突然だが、一応俺は竜である。子持ちと言われると語弊が出てきそうだが、曲がりなりにも強くはある、と思う。数えきれないほど生きてきて、知識もあるつもりだ。

 それなのに、何故俺は森に入った途端、動物たちに殺気を向けられているのだろう?

 怯えるぐらいなら慣れたものだが、こうも敵対心を剥き出しにされると、流石にちょっとだけ心が傷つく。

 そんな様子を見て、グリュンが困ったように口を開いた。


「ねぇヴェル、何かしたの?」

「した記憶がないから困ってるんだ」

「そうだよね……」


 本来なら、自分より上の相手には挑もうとはしないはずなのだが。あ、俺が格下説もあるのか?いや、でも……それよりは。

 動物たちが俺を見る目は怯えている。それなら尚更、何故挑もうとしてくるのか理由が気になる。

 そう思っていると、一匹のリーダー的なイノシシが何かを言っていた。一応俺は動物の言葉が分かる、というか俺も実質、動物みたいなものなので分かる。


『貴殿は、北の森で眠っていたのではないのか?』

「え?あぁ……正確には眠ってはなかったんだがな」

『……何だと?』


 そう正直に俺が伝えると、簡単にいうとざわついた。

 よく分からない状態が続いて、思わずグリュンと顔を見合わせる。その中で『あれは嘘だったのか』とか『再び悲劇が』とか散々な事を言われている気がしたが、一部は俺が悪かったのだから仕方ないと割り切る。

 すると、先程のイノシシがこちらを向いた。


『貴殿が何をしようとしているのかは分からない、だが先程の非礼は詫びよう』

「別に詫びなくても良い、俺が悪かったんだからな」

『………噂に聞いていたのとは違うな。もっと残酷で冷たいのかと思っていた』

「俺も歳取って丸くなったんだよ。な、グリュン」

『そこの小童か。成程、理解した』

「なんか今、俺に失礼なこと言った?このイノシシ」


 何となく分かったのか『小童』という言葉に反応してグリュンが不貞腐れる。それに苦笑いしつつも俺たちは森を抜けた。

 抜けて、ふと後ろを振り返る。森の動物たちはもう殺気を向けてこない。

 一種の防衛本能だったのだろうか。それならば納得できる。

 それに俺だってきっと、グリュンに何かあれば俺より強い相手でも守ろうとすると思う。

 ───良かった、俺が何かしてたんじゃなくて。

 そう心の中で思っていると、グリュンが突然口を開いた。


「俺もヴェルみたいに話してみたいなぁ」

「いきなりだな、どうしたんだ?」

「だって楽しそうだなって思って……」

「あー……良いことばかりではないが、楽しいな、確かに」

 

 直で化け物扱いされるのを聞いてしまう、という欠点を除けば確かに良い能力だ。小鳥が歌っている歌の歌詞も聞こえるし、弱っている動物からはその理由を聞けたりする。まぁ俺は、欠点の方が多かったが。


「いつか出来るようになる?」

「どうだろう、こればかりは才能の部分もあるからな」

「えぇー……」


 がっかりしたような声をされて、少し申し訳なくなる。

 本当は俺が何とか出来ないわけでもないのだが、それは即ち『人間を辞める』という事になってしまう。

 流石にそこまででは無いだろう、と思って再び不貞腐れたグリュンを追いかけるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ