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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第二章「世界を巡る旅へ」

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35.功労賞は貴方に


「この世界では皆が加護を誰かしらから貰うの。ここで大切なのは、誰でも加護を与える事が出来るということね」

「つまり限られた人だけではないと」

「そういう事。ただ与える加護はその人だけのものだから、同じ名称の加護を持って与えれる人はいないの。似たような系統の加護は存在するんだけどね」


 アルトリウス様の部屋に招かれてはや1時間。最初から本題に入るのかと思えば他愛もない世間話から始まり、やっと加護についての話になった。

 俺はともかく、グリュンに疲れが見え始めたので早めに切り上げたい所だが、かなり知らないことを教えてくれるので会話を無理に切れない。

 とはいえグリュンが慣れない事をしすぎて精神が持ちそうにないのも事実。

 さてどうしようか、と思案し始めたその時。アルトリウス様は俺にこう言った。


「ヴェル様の加護もグリュンちゃんと同様に特殊でしたわよね?けれどその加護は……。

もし宜しければ、この後北の国『ネーヴェ』に行ってみては?」

「ネーヴェ、ですか?」

「その国は世界最強の竜と恐れられているヴェルノアールを祀る民が住む地。

 ───ヴェル様が行ったら喜ぶのではなくて?」

「アルトリウス様……」


 この人、感がいいにも程がありすぎる。もしかして俺の擬態術が未熟なのか?

 そう考えているとふふ、と小さく笑われた。


「いえ、先祖代々教えられていましたの。もしヴェル様が現れるようなことがあればできる限りの手助けは行うように、と」

「それは……何故か聞いても?」

「───もしかして覚えてらっしゃらない?」

「……申し訳ながら」


 そう正直に俺が伝えると、昔を懐かしむかのようにアルトリウス様は目を細めた。儚げなその横顔は姿とも相まって風に消えてしまいそうだった。

 そして語られたのは俺の記憶の中の思い出。良い事だけでないそれに反射的に恐怖を抱く。しかしそれに寄り添うようにグリュンが先ほどよりも近くに寄って座り、俺に少しだけもたれかかる。

 ……いや、ただ疲れたから背もたれが欲しかっただけか?

 

「簡潔に申し上げますと、ヴェル様は魔物に襲われていた私たちの村を救って下さりました。色々あって我らはこの国『アヴェリア』を興すに至ったのです」


 あ、この国ってそんな名前だったんだと今更ながらに少し思った。色々ってなんなんだ、一番気になるのだが。そしてその後も延々と話という名の苦労話をされ、正直俺も後半何を言っていたのかは覚えていない。

 ただ、感謝だけは伝わってきた。圧で。

 俺的には何故村を助けたぐらいでここまで、とも思ってしまったが何かあったのだろう。きっとそれ以外にも。そう思っておく事にした。

 そう思っていると、こそっとグリュンが何かを伝えてくる。それに少し苦笑いしながら改めてアルトリウス様に向き合う。

 すると先に、こんこん、と扉がノックされてしまった。


「お話中失礼します。アルトリウス様、使者の方が……」

「……あら、もうそんな時間なのね。分かった、今行こう」


 一瞬にして女王モードに入った目の前の人を驚きつつも尊敬して、俺たちは次の言葉を待った。


「申し訳ありません、時間が来てしまったようです。続きはまたいつか」

「いえとんでもない、楽しい時間を過ごさせていただきました」

「そう言ってくれると幸いですね、ヴェル様。グリュンちゃんも元気で」

「……お気遣いありがとうございます」


 かなり渋そうな顔でそうなんとか捻り出したグリュン。よく頑張ったな。ただもうちょっと顔なんとかならなかったのか。取り繕ってます感すごいぞ、今。

 そうしてアルトリウス様は優雅に去っていった。その後俺たちも城の外へと案内してもらい、脱力感からか記憶もなく宿について、グリュンがベットに倒れて一言。


「疲れた……」

「そうだな、よく頑張ったぞグリュン」

「ヴェルが褒めてくれるためだけに生きてるかも、俺」

「それは流石に言い過ぎだろ……」


 ぐでーっと寝転ぶグリュンを横目にこれからのことを考える。

 ここから出るならばまずは『ネーヴェ』に行くべきか。けれど最近街の周りが賑やかになって来ているのも気になる。もしかして祭りでもあるのだろうか。

 もしそうなら、見てから行きたい。ただ単純に興味本位ではあるが。


「結局俺の加護、よく分からなかったね」

「それは確かにそうだな」

「ただ長話に付き合わされただけ?」

「言うなグリュン、それは俺も少しだけ思った」


 なんとなく不敬罪に当たりそうだが、半日拘束してくれたのだから許してほしい。

 そして褒めるのも含めてグリュンの頭を撫でると嬉しそうに笑われた。きっと今日の一番の功労賞はグリュンだ。


「明日は何するの?」

「そうだな、明日は───」


 俺たちはこうして自由に、なんでもない計画を話し合うのが一番楽しい。

 今日王城に行って、そのことを身をもって実感したのだった。


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